キャストとドラマの関係を可視化、『本田響矢』放送後に推しファン増加~4月ドラマのヒット分析【後編】
公開日: 2025/06/06
NHK、及び民放各局の2025年4月期のテレビドラマが放送を開始して1カ月以上経過し、各作品の評価が定まってきました。テレビドラマのヒット分析では、いわゆる視聴率やテレビ・配信などメディア横断でリーチを測る接触量や、どの程度のファンが作品についているかの熱量で測る方法などが考えられます。今回の記事では、作品への熱量に着目。作品を推しているファンの人数=「推しファン人数」をヒット指標として2回に分けて分析します。後編はキャストパワーはどの程度ドラマ自体に対する熱量=推しファン人数に影響を与えているのか可視化しました。
キャストパワーが活きた『キャスター』、作品力が強い『続・続・最後から二番目の恋』
【前編】での分析結果をみると、キャスト上位3人の合計「推しファン人数」よりもドラマの「推しファン人数」のほうが多いことが全体的にみてとれました。そのため、ドラマの推しファンは必ずしもキャストの推しファンだけで構成されているわけではないことが分かります。とはいえ、キャストの推しファンがドラマを鑑賞するという行動により、ドラマの推しファン全体を押し上げるドライバーとして大きな影響があると考えられます。
では、キャストパワーはどの程度ドラマ自体に対する熱量=推しファン人数に影響を与えているのでしょうか。そこでキャストの合計「推しファン人数」とドラマの「推しファン人数」がどのような関係になっているかを比較分析してみたいと思います。以下は、主要キャストの合計「推しファン人数」を横軸に、各ドラマの5月の「推しファン人数」を縦軸に置いた散布図です。散布図内の点線は縦・横軸それぞれの平均値になります。主要キャストの合計「推しファン人数」が多ければ散布図の右寄りに、ドラマ作品そのものの「推しファン人数」が多ければ上側に位置します。
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全体傾向として、主要キャストの合計「推しファン人数」が多いからといって、テレビドラマの「推しファン人数」は多くなっていません。すなわちキャストパワーは必ずしもドラマ自体の人気には影響を及ぼさないことが分かります。また、横の点線よりも上に位置する、つまりテレビドラマ自体の「推しファン人数」を平均以上に獲得した作品が2極化していることもみえます。
青地で囲った『続・続・最後から二番目の恋』『波うららかに、めおと日和』『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』『しあわせは食べて寝て待て』の4作品は、キャストパワーは平均、または低い水準にあるものの、作品自体の推しファンを多く獲得できた作品です。ある意味キャストの影響力は小さいながらも、人気を集めることができた作品だと捉えられます。一方、黄色地で囲った『キャスター』は、他作品よりもキャストパワーによる影響を大きく受けながら作品の推しファンを平均以上に獲得できている作品と言えそうです。
放送後に推しファンが最も増加したキャストは『本田響矢』
前述の散布図では、キャストパワーが作品人気に与える影響について分析しました。一方で、ドラマ出演を契機としてキャスト自身の人気が高まり、「推しファン」が増加するケースも想定されます。そこで、ドラマ出演がキャスト人気に与える影響を把握するため、ドラマ放送前後における「推しファン人数」の変化を集計しました。なお、推しファン数の増加については、ドラマ出演以外の要因が影響している可能性も考慮する必要があります。以下は、キャストごとの推しファン数の増減を比較し、増加人数が多かった上位5名を抽出したものです。
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放送後に推しファン人数が最も増加したキャストは『本田響矢』(『波うららかに、めおと日和』)でした。放送前の平均値が0.2万人だったところ、放送開始後に7.5万人を記録。7.3万人の大幅な増加となりました。
以上の分析から、2025年4月期ドラマにおいては、キャストパワーと作品自体への熱量(推しファン人数)の関係が必ずしも一致しないこと、そして一部の作品はキャストパワーに依存せずとも高い熱量を獲得していることが明らかとなりました。また、ドラマ出演がキャスト個人の人気拡大につながるケースも確認でき、作品とキャストの双方向の影響関係が浮かび上がりました。今後もこうした「熱量」を可視化する指標である「推しファン人数」を通じて、テレビドラマのヒット要因をより多角的に捉えていくことが求められるでしょう。
ファンの熱量が最も高い『続・続・最後から二番目の恋』、キャストパワーで頭一つ抜ける『キャスター』2025年4月ドラマのヒット傾向分析【前編】
毎月約3万人、全国に住む15~69歳の男女に対して、メディアを横断し「いま、推しているエンタメブランド」に関する大規模調査を実施。エンタメブランドの価値をメディア横断でとらえ、<推しファン人数><支出金額><接触日数>を集計しているほか、これらの値から総合指標<推しエンタメブランド価値(単位:GEM)>を算出しています
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