記事

TBS・日テレほか放送局のグローバルビジネス最前線(後編)—ドラマ・バラエティの国際共同製作事例
公開日: 2025/12/05

特集:東京国際映画祭2025レポート_第5回

「第38回東京国際映画祭」が10月27日から11月5日にかけて開催されました。本特集では、併設マーケット「TIFFCOM(会期:10月29日~31日)」で行われた、コンテンツビジネスの最新動向を伝えるセミナーをレポート。第5回は、TBS、WOWOW、朝日放送テレビ、NHKエンタープライズなどの放送・制作各社と海外パートナー企業による国際共同製作の事例について紹介します。
※本記事で触れられている内容は2025年10月時点の情報です。

《目次》

 

 

TBS:ベトナム国営放送「VTV」との戦略的アライアンス

TIFFCOMでは放送局主体のセミナーが複数開かれ、グローバル市場に向けたコンテンツ戦略のみならず、海外パートナーとの共同企画・製作がもたらす利点と、成功に向けた取り組みについて多く共有されました。

左から、TBSホールディングスの太田裕之氏、ベトナムテレビジョンのド・タイン・ハイ副社長

株式会社TBSホールディングス グローバルビジネス局ゼネラルマネージャーで、東南アジア・グローバルサウス担当の太田裕之氏は、セミナー「Inspiring Global Love for Japan ~TBSグローバルビジネスの挑戦と未来~」にて、ベトナムの国営放送局「ベトナムテレビジョン(VTV)」との戦略的アライアンスについて説明しました。両社は2012年から包括提携を結んでいましたが、太田氏の発表によると、今回の戦略的アライアンスでは、「SASUKE Vietnam」の7年ぶりの復活、ベトナムの国際チャンネル「Vietnam Today」の日本での配信協力、TBSコンテンツのベトナム放送・配信協力、共同制作・TBSドラマのリメイク、人材交流の5つがポイントとなっています。

VTVのド・タイン・ハイ副社長は、太田氏との対談で、「新しい『SASUKE Vietnam』は単なる続編ではなく、より壮大なゲームショーとして進化させ、ライブイベントやSASUKEパークの展開、バーチャルマーケットなど多角的なビジネス展開を目指しています」と明かしました。

VTVは、今回のアライアンスを通じて、コンテンツ制作技術の向上だけでなく、ビジネス面での知見獲得も期待しており、ハイ氏は、「TBSの経営力、販売力、そしてビジネスモデルについても是非取り入れたいです」と述べ、TBSを重要な海外パートナーと位置づけていることを強調しました。

 

WOWOW:フィンランドとの共同製作『連続ドラマW BLOOD & SWEAT』

株式会社WOWOWは、スペシャルセッション「放送コンテンツの海外展開最前線 ~国際共同製作からローカルコンテンツの可能性まで注目の最新事例を一挙紹介~」で、自社と株式会社日テレ アックスオン、フィンランドの制作会社ICSで共同製作中の北欧ミステリードラマ『BLOOD& SWEAT』について紹介しました。

WOWOWの高嶋ともみ氏

同ドラマは2026年春にWOWOWで放送・配信を予定しており、現在ポストプロダクションの段階にあります。登壇したWOWOWコンテンツプロデュース局ドラマ制作部 チーフプロデューサーの高嶋ともみ氏と、日テレ アックスオン企画戦略センター企画戦略部チーフクリエイターのダニエル・トイヴォネン氏は、言語・文化の違いから生じた問題と解決に向けたアプローチに焦点を当てて製作を振り返りました。

高嶋氏は、「英語で脚本を開発したため、日本語に翻訳した際に違和感がないか検証し、何度もブラッシュアップする必要がありました」とし、脚本段階に長い時間を要したことを明かしました。他にも、フィンランドチームが思い描く日本のイメージが、実際の日本文化と整合しなかった場合のコミュニケーションや、ロケーション調整に困難を感じたと語りました。

日テレ アックスオンのダニエル・トイヴォネン氏

日テレ アックスオンのトイヴォネン氏は、日本とフィンランドの働き方の違いにも言及。フィンランドでの撮影では、労働組合の規則により、1日の実働時間や週の稼働日数が定められており、遵守するために撮影時間を厳しく管理する必要があったと述べました。また、国際共同製作を円滑に進めるためには、“最終決裁者”を明確にし、指揮系統をはっきりさせることが重要だと提言しました。

 

ABCテレビ:「大阪DNA」を受け継ぐバラエティと韓国スタジオとのドラマ「共創」

朝日放送テレビ株式会社コンテンツプロデュース局の辻史彦局長は、スペシャルセッション「放送コンテンツの海外展開最前線」にて、大阪独自の「笑い泣き」を重視したコンテンツを活かしながら、海外パートナーとの「共創」を推進していることを共有しました。

朝日放送テレビの辻史彦氏

辻氏は、NBCユニバーサルフォーマットと共同開発した『シークレットゲームショー』が、International Format Awardsの国際コメディ部門で最優秀賞を受賞したことを紹介。さらに、韓国制作会社のDI TURNが企画した番組をもとに、シンガポールのEmpire of Arkadiaと組んで国際展開した音楽番組『Miracle100(ミラクルワンハンドレッド)』が、ContentAsia Awards 2025で史上初の2冠を達成したこと明かしました。そして現在、韓国のコンテンツスタジオであるIMAGINUSとドラマの共同開発を進めており、日韓の才能を集結させ、グローバルに展開できるドラマを目指しているとアピールしました。

 

NHKエンタープライズ:海外パートナーの強みを活かすディレクション

株式会社NHKエンタープライズの第2制作センター国際部でエグゼクティブ・プロデューサーを務める小谷亮太氏は、「放送コンテンツの海外展開最前線」にて、中国との国際共同製作の経験から、パートナーの強みを活かす重要性について強調しました。

NHKエンタープライズの小谷亮太氏

中国との共同製作では、パンダ「シャンシャン」を題材にしたドキュメンタリー番組を例に挙げ、中国中央電視台(CCTV)との協力関係について説明。パンダ撮影の許可取得と優れた技術チームという中国側の強み、日本側のディレクターによる物語構成力という強みを活かした「ハーフ&ハーフ」の制作方法が効果的だったとしました。また、「世界遺産をいただきます」というグルメ番組の中国ロケでは、料理店の厨房を撮影することに対する日中の文化的な考え方の違いがあったものの、日本の視聴者のニーズを粘り強く説明することで、バックヤードの撮影を可能にしたというエピソードを紹介しました。小谷氏は、国際共同製作の成功には、相手の強みと視聴者のニーズを理解し、根気強くコミュニケーションが取れるかが重要だと締めくくりました。

スペシャルセッション「放送コンテンツの海外展開最前線」に登壇した各社の代表

TIFFCOM2025のセミナーには多数の放送局やコンテンツ制作会社が登壇し、各社のグローバル戦略を共有しました。そして、代表らは会場に向けて日本のエンタメが注目される今をチャンスと捉え、リスクを恐れず挑戦していくという力強いメッセージ発信しました。セミナーで紹介された、既存コンテンツのローカライズ、グローバル市場で戦える企画製作、各国の強みを活かした共同製作などのグローバル戦略を今まで以上に推進するためにも、今後新たな海外パートナーとの“共創”が求められるのではないでしょうか。

取材・文 李錦香

特集:東京国際映画祭2025レポート