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2024年「日本アニメ産業市場規模」が史上最高値を更新、海外市場が前年比126%で市場成長をけん引~TIFFCOM2025
公開日: 2025/11/07

特集:東京国際映画祭2025レポート_第2回

「第38回東京国際映画祭」が10月27日から11月5日にかけて開催されました。本特集では、併設マーケット「TIFFCOM(会期:10月29日~31日)」で行われた、コンテンツビジネスの最新動向を伝えるセミナーをレポート。第2回では、日本動画協会が発表した「アニメ産業レポート2025」の初公開統計数値を紹介し、日本コンテンツ産業におけるアニメの立ち位置を考えます。
※本記事で触れられている内容は2025年10月時点の情報です。

《目次》

 

 

2024年「アニメ産業市場」は3兆8407億円:海外市場が成長を大きく牽引

2024年のアニメ産業市場規模

セミナー冒頭、「アニメ産業レポート2025」の編集統括を務めた長谷川雅弘氏から、2024年のアニメ産業市場規模(※)が3兆8407億円を記録し、史上最高値を更新したとの発表がありました。この数値は前年比114.8%の増加で、2019年(前年比115.3%)に次ぐ史上第2位の増加率であるといいます。
※グッズの売り上げなどを含むユーザーが支払った総消費額を推計する広義のアニメ市場規模

また、国内・海外の内訳を比較し、国内市場(1兆6705億円/前年比102.8%)の成長を認めつつ、海外市場(2兆1702億円/前年比126%)の成長率が圧倒的に高いことを強調しました。

 

制作会社の売上「アニメ業界市場」は4662億円:グローバルでの成長を予測

2024年のアニメ業界市場規模

商業アニメ制作企業の売上を推定したアニメ業界市場規模(※)についても、24年は4662億円を記録し、最高値を更新していることを発表。その内訳は国内市場が3474億円、海外市場が1188億円となりました。アニメ産業市場規模と比較すると海外市場の伸びは小さいものの、前年比116.6%と堅実に海外の割合が増加し続けているとしました。さらに、海外プラットフォーマーとの契約成立と、支払いのタイミングに時間差があることに言及し、現在の海外市場規模から今後増加傾向にあると予測しました。
※すべての商業アニメ制作企業の売上を推計した狭義のアニメ市場規模

長谷川氏は、世界的なアニメ人気の広がりを示す裏付けとして、「国際オタクイベント協会(International Otaku Expo Association[IOEA])」に51の国と地域、136のイベントが加盟しており、年々増加していることを挙げました。そしてこの増加は、アニメが映像ビジネスだけではなく、「生態系」として海外に広がりつつある状況を表しているのではないかとの見解を述べました。

 

ゲームと肩を並べて日本コンテンツ産業をけん引するアニメ

日本コンテンツ産業の海外売上の推移

最後に、アニメ産業をよりマクロな視点で捉え、日本全体のコンテンツ産業における重要性を説きました。長谷川氏によると、2024年の日本コンテンツの海外売上は6兆円を超えており、アニメ(劇場・放送・配信・商品化等)が占める割合は、全コンテンツの海外売上の約3割を占めています。これは、家庭用ゲーム(オンライン)に次いだ割合であり、日本が海外で市場を広げる重要なコンテンツであることを意味します。

また、政府が掲げる「新たなクールジャパン戦略」において、2033年までにコンテンツ産業の海外市場を20兆円規模にするという目標が設定されていることに言及。現状の約6兆円から10年弱で3倍以上に成長させるという高い目標であり、これを達成するためには、「家庭用ゲーム」と、それに次ぐ「アニメ」のさらなる成長が不可欠です。

取材・文 李錦香

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