『8番出口』『国宝』はじめ、カンヌ国際映画祭上映作品の話題度・浸透度
公開日: 2025/06/13
「第78回カンヌ国際映画祭」が、2025年5月13日から24日にかけて仏カンヌで開催されました。本特集では、映画祭全体の様子と併設マーケット「マルシェ・ドゥ・フィルム」(開催期間:5月13日~21日)で行われたセミナーをレポート。第2回は、映画祭で上映された日本作品にフォーカスし、話題性を示す数値「バズ度」や浸透度の推移を用いて映画祭が作品に与える影響について考えます。

今年は多くの日本映画が上映されたカンヌ国際映画祭
今年のカンヌ国際映画祭では、コンペティション部門出品作品をはじめ、日本映画の新作・旧作のリマスター合わせて10作品が上映されました。
- ▼日本出品作品リスト
- 『8番出口』(ミッドナイト・スクリーニング部門、監督:川村元気、日本公開:8月29日)
- 『国宝』(監督週間部門、監督:李相日、日本公開:6月6日)
- 『遠い山なみの光』(ある視点部門:石川慶、日本公開:9月5日)
- 『恋愛裁判』カンヌ・プレミア部門、監督:深田晃司、日本公開:2025年冬)
- 『ルノワール』(コンペティション部門、 監督:早川千絵、日本公開:6月20日)
- 『見はらし世代』(監督週間、監督:団塚唯我、日本公開:2025年秋)
- 『天使のたまご(4Kリマスター版)』(クラシック部門、押井守監督、日本公開:未定)
- 『ジンジャー・ボーイ』(ラ・シネフ部門、監督:田中未来、日本公開:5月31日)
- 『Dandelion’s Odyssey』(批評家週間、監督:瀬戸桃子、日本公開:未定)
- 『浮雲』(クラシック部門、監督:成瀬巳喜男監督、日本公開:1955年)

上記から、瀬戸桃子監督の『Dandelion’s Odyssey』が国際映画批評家連盟賞を、田中未来監督の『ジンジャー・ボーイ』が共同3等賞を受賞。作品の受賞自体も快挙ではありますが、それに加えて、上映前のレッドカーペットでの監督・キャスト集結や、上映後の鑑賞者の反応と評価の高さがニュースとなり、話題を喚起しました。

そこで、今回は第78回カンヌ国際映画祭で上映された日本作品のニュース話題度を、GEM Partnersにて開発中の「バズ指数」で検証していきます。バズ指数とは、期間中に発表されたニュースの話題度を示しており、各作品に紐づく関連ニュースの「関連性の高さ」をGEM Partnersが開発したアルゴリズムにより評価を行い、そのニュースのX(旧Twitter)でのエンゲージメント数(いいね数、リポスト数、引用数の合計)を重みづけして合計した値です。関連ニュースは、300以上のエンタメ関連ニュースサイトから収集しています。
『8番出口』『国宝』などカンヌ国際映画祭関連ニュースが大きなバズを喚起

まず、カンヌ国際映画祭開催前後(4月1日~6月11日)の作品ごとのバズ度は、以下の通りです。図の左は、カンヌ関連ニュースに絞った「バズ度」、右はカンヌ以外のニュースを含めた合計バズ度の内、カンヌ関連ニュースのバズ度の割合を示しています。参考として、今年のカンヌでプレミア上映が行われた「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」、昨年「国際映画批評家連盟賞」を獲得した『ナミビアの砂漠』及び「ある視点部門」に出品された『ぼくのお日さま』のバズ度も含めています。

『8番出口』『国宝』は、昨年と比べて圧倒的な話題度を喚起したことが分かります。『遠い山なみの光』『恋愛裁判』も、昨年の『ナミビアの砂漠』と比較すると4~5倍にあたります。今年は出品本数が多かっただけではなく、その作品が喚起した話題度も大きかったと言えます。
続いて、これらの作品の内、全国公開が予定されている新作につき、4月1日~6月11日までのバズ度の積み上げと、カンヌ関連ニュースの割合を示しました。ほとんどの作品において、映画祭前後の期間中に発表されたニュースが、カンヌ関連であったことが分かります。

話題を彩る監督・キャスト
映画祭の華は監督・キャストのレッドカーペットやインタビューとも言えます。では、監督・キャストについてのニュースはどの程度話題を喚起したのでしょうか。以下の図は、映画祭前後のカンヌ関連ニュースの「バズ度」合計に対して、監督・キャストを含むニュースのバズ度の割合を示しています。
多くの作品で主演が占める割合は100%となっており、ほぼすべてのニュースに必ずと言っていいほど主演の名前が含まれているということが分かります。また、監督も高い割合でニュースに含まれています。

作品浸透度の動き
こうしたニュースパブを含めた各種露出によって、各作品の認知度や意欲度は4月から現在に至るまでどのように推移したのでしょうか。GEM Partnersにて実施しているCATS調査データ※をもとに、日本公開が近い作品を中心に検証してみます。
※認知度、興味度、意欲度の取得は基本的に公開12週前から開始しており、それ以前のデータは自主調査で実施したものを掲載。そのほかの指標は定点観測データもとにしています。
まず、カンヌ国際映画祭から約3カ月後の8月29日に公開が控える『8番出口』は、映画祭開始時点で高い認知度があったなか、期間中に意欲度を伸ばし、その後も認知度、興味度を高めています。

さらに、9月5日公開『遠い山なみの光』も、映画祭での上映決定発表後、テレビパブやYouTube再生数、劇場予告編到達度を積み上げています。

来週6月20日公開『ルノワール』は、カンヌ上映決定発表から各種露出が始まり、映画祭期間中から現在に至るまで浸透度を徐々に上昇させています。

最後に、先週6月6日に公開した『国宝』については、浸透度や露出量に加えて、「興収シミュレーション値」と併せて推移を検証します。
公開8週前(~2025/4/12)時点で、初週3日間の興収シミュレーション値は2.3億円となっていましたが、カンヌ上映発表を経て意欲度が伸び、その結果次週実査分(~2025/4/19)の興収シミュレーション値も伸びて3億円に到達しました。そこから認知度、意欲度を着実に上げ、高い興行収入シミュレーション値を維持しながら公開を迎えています。カンヌ関連のパブと公開に向けた通常宣伝が相まって、公開まで市場の期待度、話題度を高めていったことが伺えます。カンヌ国際映画祭が『国宝』の晴れ舞台に大きな華を添えたと言えます。

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