海外アニメファン動向を2000万人のデータで解析、国産アニメをグローバル展開する「次の一手」とは ~AnimeJapan 「MyAnimeList」セミナーレポート~
公開日: 2026/04/10
日本国内にとどまらず、いまや巨大なグローバルビジネスへと急成長を遂げている世界のアニメ市場。各国のファンが熱狂する中、次なる覇権を握るIPを生み出すには何が必要なのでしょうか。2026年3月、世界最大級のアニメの祭典である「AnimeJapan(アニメジャパン)」が開催されました。28、29日のパブリックデイに続く30、31日のビジネスデイでは、アニメ関連ビジネスの基礎講座をはじめ、近年のトレンドやグローバルでのマーケット展開などを主題としたセミナーが開かれました。
本記事では、世界最大級のアニメ・マンガコミュニティ「MyAnimeList(MAL)」を運営する株式会社MyAnimeListの溝口 敦代表取締役のセミナー内容をレポートします。海外アニメファンは何を求めているのか、制作現場はどのようなデータを参考にすればよいのか。グローバル展開の成功に向けたヒントを探ります。
※ 本記事で触れられている内容、溝口氏の役職は2026年3月時点の情報です。
株式会社MyAnimeList 溝口 敦代表取締役
2000万の海外アニメファンのデータが集まるMAL
講演の冒頭、溝口氏は自社サービスである「MyAnimeList(以下、MAL)」の概要から解説を始めました。MALは、ユーザーが「どのアニメやマンガを、どこまで観たか(読んだか)」をリストで管理し、ファン同士で語り合うコミュニティ機能を持つデータベースサイトです。
溝口氏が「世界最大級と自負しています」と語るように、注目すべきはその規模感です。英語のみで展開され、海外ユーザー率が99%を占めるMALでは、会員登録数は2000万、公式アプリは600万ダウンロードを突破。ユーザーが登録した評価や視聴ステータスのデータ数は13億件、アニメ・マンガ作品の登録数は41万件以上にのぼると明かしました。加えて、これらの膨大なデータを生み出しているユーザー属性について、「34歳以下でほとんどを占めている」と、若い世代から支持を集めていることを強調しました。
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続いて溝口氏は、MALのユーザーデータを元に、2025年の世界アニメ市場を振り返りました。同年はテレビシリーズ約300作品、ONA(Original Net Anime※Webアニメ)は約250作品、映画は約100作品と、合わせて約650本ものアニメが世界に向けて発信されたと述べました。媒体別のアニメ原作傾向も紹介し、漫画やライトノベルが原作のアニメがシェアを伸ばす一方、オリジナル作品のシェアはやや減少していると解説しました。
また、溝口氏は様々な分析を交えながら、中国・韓国発のアニメ・原作マンガがグローバルにおいて、MALユーザーからの評価である「Score」を高めていることを指摘しました。2025年放送・公開作品におけるMALユーザーのScore TOP20では、中国原作アニメが6作品、韓国原作アニメが1作品ランクインしていると紹介しました。
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この傾向は、「Members数」と呼ばれる、作品リストにアクションを行ったユーザー動向にも見られました。2025年アニメで放送開始から終了までに増加したMembers数のTOP10(TVとONAのみ)では、上記にもランクインした韓国原作アニメの『俺だけレベルアップな件 Season2』が首位となったと紹介。2位以下には『ダンダダン 第2期』『薬屋のひとりごと 第2期』といった国内メガヒット作も入っており、日本のトップタイトルと肩を並べる、あるいはそれ以上の熱量で、中国・韓国発のコンテンツが世界中のアニメファンから支持されている現状が伺えます。
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中国・韓国作品の台頭について、溝口氏は「この状況だけ見ると、日本は『置いていかれてしまうかもしれない』と感じた方々もいるかもしれません。しかし、私自身はそのようには捉えていません。むしろ現状は、アニメ業界全体にとって非常にポジティブな状態になりつつあるのではないでしょうか」との見解を示しました。
「これらの海外作品は、かつて日本のアニメを観て育ち、その世界観に憧れた世界のトップクリエイターたちが『いつかあんなアニメを作りたい』という情熱のもとに生み出したものです。各国のクリエイターと切磋琢磨していくことは、日本のIPにとってさらに素晴らしい未来を生み出す原動力になります」。溝口氏は、日本が「アニメのメジャーリーグ」であり続けるため、各国のクリエイターと積極的にコラボレーションする重要性を訴えました。
ユーザーの熱狂をリアルタイムで把握、将来的にはAIで予想も
日本のアニメをグローバルで展開するに当たって、MALのデータはどのように活用できるのでしょうか。溝口氏は講演後半、その具体的な取り組みを複数紹介しました。
まず、同セミナーのために実施したアンケート調査として、MALユーザーが「2026年に最も期待しているアニメ作品」を発表。1857ユーザーの回答から、新規作品では『とんがり帽子のアトリエ』、続編作品では『Re:ゼロから始める異世界生活』が最も期待される作品だとされました。
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溝口氏は「アンケートだけでなく、直接ユーザーへのインタビューも可能です。我々の強みは、世界中の熱狂的なアニメファンにアプローチできることです」とその魅力をアピールしました。
続いて、GEM Partnersと連携した「アニメグローバルトラッカー:MAL Weekly Report」「同MAL Dashboard」を紹介しました。
「アニメグローバルトラッカー:MAL Weekly Report」では、作品リストにアクションを行った「Member数」の増減や、ユーザースコアの推移を週替わりで確認が可能だと紹介。加えて、「その作品を見ているユーザーは他にどんな作品を見ているのか」といった相関関係まで可視化できると、具体的なアニメの事例を交えて話しました。
「例えば、2026年冬アニメの『呪術廻戦「死滅回游 前編」』では、放送3週目のスコアが上がっており、海外ユーザーの間で特徴的な出来事が起こったことなどが分かります。レポート右下のリストでは、他のユーザーがリストに登録しているアニメ・マンガの重複率などが見られ、自社の気になる作品がどのようなポジショニングにあるのかを手元で確認できます」
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さらに「アニメグローバルトラッカー:MAL Dashboard」では、各作品での比較や、男女比率や国別の分布などの軸からも詳しく掘り下げられることを紹介しました。
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今後の取り組みとして溝口氏は、ユーザーデータなどのAI学習への活用を、親会社のGaudiyとともに進めていく意欲を示しました。MALが持つ一次データやSNS情報に加え、エンタメ企業各社が保有する正規の配信データ、グッズ販売データ、書籍の流通データなどとの掛け合わせで、様々な予測精度の向上が期待されます。具体的には、アニメ放送前の原作選定、海外ファンに刺さるPV制作時のシーンの切り出し、放送後では次期作に向けた効果測定など、各フェーズでより確かな指針を得られるようになると語りました。
「私たちはデータでクリエイティブを縛ろうとしているのではありません。クリエイターの方々の悩みや迷いを解消し、企業内での作品の価値や存在感を最大化できるよう、データ活用で支援していきたいと考えています」。ビジネスデイ最終日の午後にもかかわらず、満席に近い盛況を見せた客席を前に、溝口氏は日本のアニメ業界の発展に向けて熱く語りかけました。
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