ソニー、東宝、バンダイナムコ、そしてNetflixはアニメ業界をどう変えたのか。「アニメ産業レポート」が示す業界の現在地 ~AnimeJapan 2026セミナーレポート~
公開日: 2026/05/15
世界最大級のアニメの祭典「AnimeJapan 2026」のビジネスデイに開催されたセミナーから、エンタメ企業のグローバル戦略に役立つ情報をお届けする特集記事。第3回はセミナー「まるわかり解説!アニメ産業動向とアニメビジネスの最新トレンド」をレポートします。「アニメ産業レポート」の編集統括である長谷川 雅弘氏とアニメーションジャーナリストの数土直志氏が、ファンの裾野を広げ、世界的に躍進を続けるアニメ市場の最前線について語り合いました。
※ 本記事で触れられている内容は2026年3月時点の情報です。
左から「アニメ産業レポート」編集統括の長谷川 雅弘氏、アニメーションジャーナリストの数土直志氏
- アニメ産業市場2024年は過去最高の3.8兆円、海外市場は全体の56.5%へ
- 大手企業は世界的プレイヤーに成長、放送局でもアニメを強化
- ファン・クリエイター・出資者のグローバル化、Netflix参入が契機に
アニメ産業市場2024年は過去最高の3.8兆円、海外市場は全体の56.5%へ
「2024年、国内アニメ産業の市場規模は史上最高値を更新しました。増加率も史上2番目で、この原動力となっているのが海外市場での躍進です」――。講演の始めに長谷川氏は、アニメ産業の概況をこう語りました。2025年12月に刊行された、同氏が統括を務める「アニメ産業レポート」(発行:日本動画協会)によると、ユーザーの支払い金額から推定する「2024年のアニメ産業市場」は前年比114.8%と大きく成長し、過去最高の3兆8407億円を記録しました。成長した最大の要因は、全体の56.5%を占める海外市場です。
2024年の「アニメ産業市場」内訳
長谷川氏は、配信サイトのランキング上位を常にアニメ作品が占有している現状を挙げ、国内の映像産業市場でもアニメのシェアが大きいことにも触れました。実写や洋画を含む2024年の映画市場全体(2070億円)のうち33.3%を、配信市場全体(6499億円)では実に40.9%をアニメが占めていると解説しました。
また、長谷川氏はアニメビジネスの強みの1つに、映像だけではない「生態系(エコシステム)」が形成されていることを指摘しました。一般的なアニメの製作時には、グッズなどの商品化や遊興(パチンコなど)への展開に加え、音楽やライブといった映像以外の二次利用から権利収入を得ています。さらに海外展開においては、「映像自体の権利」と「商品化など二次利用の権利」をセットで販売して収益を生み出していると説明しました。
このほか、アニメーションジャーナリストの数土氏は、昨今のIP創出を目指して参入する企業は、原作のない「完全オリジナル作品」にこだわる傾向があると指摘しました。しかし、同氏は「原作の有り無しというのは、実は大きな問題ではない」とし、「自社で権利を持ちビジネスの取り回しがつくものであれば、原作ありの作品でも十分に有力な選択肢になる」との見解を示しました。
大手企業は世界的プレイヤーに成長、放送局はアニメを強化
続いて数土氏は、現在のアニメビジネスを取り巻く環境について「大手企業の動向」「放送局の参入」「グローバル化」の切り口から概況を語りました。
まず、アニプレックスを抱えるソニーグループ、東宝、バンダイナムコグループといった大手企業が、アニメ市場全体をけん引する存在になってきているとの考えを示しました。「かつて日本のアニメが世界で勝てないのは、ディズニーやワーナーのようなハリウッドの大規模な会社でないからだ、などと言われてきました。しかし、アニメで1000億円規模の売上を出す大手企業が複数出てきており、世界に対抗できるプレイヤーが育ってきたというのは、ここ何年かの特徴だといえます」。
その一方で、こうした大手企業同士はライバルではありつつ、必ずしも競合関係にあるわけではないことを指摘しました。ソニーグループは傘下のクランチロールによる海外配信、東宝は国内での映画配給、バンダイナムコグループは玩具など、それぞれ強みとなる分野があり、利益の最大化に向けて相互に協力することもあると解説しました。
上記に続いて数土氏は、近年の「放送局のアニメビジネス強化」にも言及しました。テレビ局では、広告収入が減少する中でもアニメは利益率が高く、「番組の海外販売ノウハウ」という放送局の強みを生かしやすい点を指摘しました。長谷川氏も「深夜アニメの枠に一般企業のCMが入るようになるなど、メディアの中心にアニメがシフトしつつある」と述べました。
ファン・クリエイター・出資者のグローバル化、Netflix参入が契機に
さらに、数土氏は「アニメのグローバル化」が、現在3つの方向から進行していると語りました。海外ファンが増加し、作品によっては海外でのシェアが大半を占める状況にもなりつつある「マーケットのグローバル化」、海外のクリエイターが下請けではなく主力スタッフとして参加する「制作現場のグローバル化」。そして海外資本が製作委員会や配信権獲得に関わる「ファイナンスのグローバル化」を挙げました。
数土氏が指摘する、アニメの「3つのグローバル化」
この「ファイナンスのグローバル化」を象徴するのが、Netflixの参入です。数土氏は、Netflixが国内に参入した際、アニメ制作会社に高い買付金額を提示したことが、結果として業界全体の制作費を引き上げる役割を果たしたと解説しました。「かつて日本の1億3000万人市場に合わせて安く抑えられていた制作費が、世界数十億人を相手にする規模に変わりました。他社も追従せざるを得なくなり、業界の制作費を大幅に引き上げたのです」。
長谷川氏はアニメの制作現場について、上記のような好調な受注と制作単価向上でクリエイターの待遇はかつてよりも向上していると語りました。一方、制作現場では深刻な人手不足が起きており、作り手の奪い合いでさらなる制作費の高騰を招いています。こうした現状を受け、長谷川氏は「作り手の育成が今後の大きな課題になる」と指摘しました。
最後に、今後の展望として、数土氏は「海外プラットフォームも全作品を買うわけではなくなり、クオリティによるシビアな選別が始まっている」と競争の激化を指摘しました。長谷川氏は、アニメ市場は大手と中小規模作品の「二極化」ではなく、多様なモデルが共存する「多極化」に向かうと分析します。潤沢な予算を割り当てる大作アニメだけでなく、キッズ向けアニメの海外展開など、あらゆる規模の作品が「豊かに作られる環境」をどう構築するかが今後の課題だと語り、セミナーを結びました。
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- 第3回:ソニー、東宝、バンダイナムコ、そしてNetflixはアニメ業界をどう変えたのか。「アニメ産業レポート」が示す業界の現在地
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