記事

WBC効果で利用者30%増、継続意向は高くはないが、「能動的に利用」の割合が高い~Netflixの利用者構造をデータで読み解く
公開日: 2026/04/10

Netflixによる150億円規模とも報じられる「ワールドベースボールクラシック(WBC)」の独占放映権獲得は、日本の動画配信市場におけるプラットフォーム成長戦略と映像産業の在り方に一石を投じる事例となりました。この巨額投資はNetflixの利用者基盤にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。GEM Partnersではこの動向を掴むため、WBC終了後の3月27日に国内の男女15~69歳の約8,000人を対象にインターネットアンケートを実施。その定量的なインパクトを分析します。

《目次》
 

WBCきっかけで30%増の新規利用者を獲得、終了後の利用者は約1.3倍に増加

NetflixはWBC開催に合わせ、初月料金を最大50%割り引く「ワールドベースボールクラシック応援キャンペーン」(2月19日~3月18日)を実施しました。この施策前後の利用者数※1の変化に着目し、WBC効果を評価していきます。増減が分かりやすいようにキャンペーン開始前となる2月18日時点の利用者数を100として指数化しています。
※1:利用者:自分が契約者であるかを問わずNetflixを利用した人の数

調査の結果、キャンペーン開始後にWBCきっかけで利用を開始した人は指数換算で30に達しました。これは文字通り、2月18日時点から新規利用者を30%増やしたことになります。その後、利用停止で4ポイントの減少が見られましたが、3月27日時点では26を維持しています。利用者全体をみると、調査日時点で132を記録しており、キャンペーン開始前の約1.3倍と大きく伸長していることが分かります。

 

WBCきっかけ利用開始者の継続利用意向は34%

次に、今後の利用意向について見てみます。上記は3月27日時点における、Netflixの「利用者全体」と「WBCきっかけ利用開始者」の継続意向の構成比です。「継続利用したい」と回答した割合に着目すると、利用者全体の73%に対して、WBCきっかけ利用開始者は34%にとどまりました。「どちらともいえない」を含めた数値でも57%であり、利用者全体と大きな乖離が見られます。WBCという期間が限定されたイベントを契機とした流入であるため、リテンションの難しさが浮かび上がりました。

 

WBCキャンペーン開始前比で約1.2倍が継続利用の見込み

続いて継続意向者数を確認します。利用者全体をみると、3月27日時点の132から「利用をやめたい」「どちらかといえば利用をやめたい」と答えた層を除くと、119になります。これは「どちらともいえない」層を含んでいますが、キャンペーン開始前の約1.2倍にあたります。一方、WBCきっかけ利用開始者に目を向けると、キャンペーン前比17%増が残ると試算されます。前段にてWBCきっかけで利用を開始した人の継続意向が低いことに触れましたが、短期間での大幅利用者増を鑑みると有効な施策であったと考えられます。

 

WBCきっかけ利用者は能動的(自らお金を払って契約している)利用者の割合が全体よりも高い

次に利用者に占める「自分で契約している利用者」の割合を検証します。以下のチャートでは同セグメント以外を「その他(利用のみ)」としました。これは家族アカウントの相乗りなどで、自分では月額料金を支払っていない層に該当します。

まず、Netflix利用者全体における「自分で契約している利用者」の割合を確認しました。キャンペーン開始前の2月18日時点では55%でしたが、WBC終了後の3月27日時点では59%と4ポイントの改善が見えました。ここで特筆すべきは「WBCきっかけ利用開始者」の構成比です。3月27日時点の同セグメントにおける「自分で契約している利用者」の割合は72%に達しており、Netflix全体の水準(約6割)を上回りました。

この結果は、WBCが「自ら費用を負担しても契約したい」という強い加入動機を生んだことを示唆しています。同時に、家族アカウントなどへの相乗りを主とする「その他(利用のみ)」層が、利用者全体と比較して少ないことも分かります。つまり、WBCきっかけ利用開始者は、Netflix全体の利用者よりもアカウント共有に頼らず、自分で契約している傾向が見られました。

NetflixはWBCキャンペーンを通じて、新規利用者を30%増加させ、利用者数を1.32倍に拡大しました。注目は、WBCきっかけ層の自己契約率が72%に達し、Netflix全体の59%を上回った点です。これは今回の訴求力のあるイベントの独占配信が「アカウント共有ではなく、自ら課金してでも観る」行動につながっていることを示しています。今後の継続利用意向者数もキャンペーン前比約1.2倍と堅調で、利用者基盤を質・量ともに底上げできたと考えられます。