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日本アーティストのグローバル展開を加速させるWeverse:「スーパーファン」を育成するプラットフォーム戦略
公開日: 2026/04/07

特集:ライブ・エンターテイメントEXPO2026_第2回

「第13回ライブ・エンターテイメントEXPO」にてセッション「グローバルファンと共に進化するファンエンゲージメント強化戦略 〜Superfan-driven Growthの実践と可能性〜」が開催されました。Weverse Companyのチェ・ジュンウォン代表取締役が登壇し、音楽業界の未来を握る「スーパーファン」と、その育成を目的としたエコシステムについて語りました。
※本記事で触れられている内容は2026年1月時点の情報です。

《目次》
 

分断されたファン体験を一つに:月に1200万人が集うWeverse誕生の背景

Weverse Companyのチェ・ジュンウォン代表取締役

アーティストとファンをつなぐグローバルスーパーファンプラットフォームとして存在感を高めている「Weverse」。その運営会社であるWeverse Companyのチェ・ジュンウォン代表取締役は、「アーティストについての情報収集やグッズ購入、コミュニティサイトへの参加など、これまで断片的だったファン体験をすべて一つにまとめようと考えたのが始まりです」と、プラットフォーム誕生の背景を共有することからセッションを始めました。

チェ氏の発表によると、現在世界245の国と地域にユーザーを持ち、月間アクティブユーザー数は1200万人に達しています。また、全体のトラフィックのうち、韓国からのアクセスはわずか10%にとどまり、90%が海外からというグローバルな広がりを見せていることをアピールしました。

 

「スーパーファン」の可能性と育成を支える仕組み

全体の割合は小さいが熱量の高い「スーパーファン」

チェ氏は、本セッションで一貫して「スーパーファン」が音楽業界にもたらす影響力の大きさについて強調しました。そして、「スーパーファン」をアーティストに対して非常に高い情熱を持ち、全体のトラフィックや収益で大きな割合を占める存在であると定義しました。

「Spotifyによると、リスナーのわずか2%がアーティストの月間ストリームの18%以上を占めています」とチェ氏は説明。続いて、「アメリカの音楽リスナー上位15%は、平均リスナーの2倍以上のお金を使っています」と音楽データ分析プラットフォームLUMINATEのデータを引用し、全体の割合としては小さくても、熱量の高い「スーパーファン」が音楽ビジネスにおいて極めて重要な層であると位置づけました。さらに、現在フィジカルアルバムの売上が減少傾向にあることを指摘し、「スーパーファン」を軸とした新たなビジネスモデルの構築が急務となっていると警鐘を鳴らしました。

「スーパーファン」へと成長する過程「ファンダムジャーニー」

ファンの熱量が高まっていく上での心理・行動の過程を、チェ氏は「ファンダムジャーニー」と名付けました。この概念は音楽に限らず、アニメなど様々なエンタメ分野にも共通するものであり、段階を経て深まっていくと分析しています。

「まず、友人からのおすすめやSNS、テレビ番組などでアーティストを“発見”し、コンテンツや関連情報を“探索”します。関心・エンゲージメントが高まり、購入行動、そしてコミュニティ構築へと進むことで、『スーパーファン』になっていきます」と過程を説明しました。また、「『スーパーファン』は、アルバムを購入するより前にコンサート体験を求め、限定コンテンツや会員特典、コミュニティとのつながりを重視しています」とその特徴を解説。Weverseは、こうした熱狂的なファンをしっかりと受け止めるプラットフォームの役割を果たしていると訴えました。

 

ファン育成に寄与するWeverseの仕組み

Weverseはアーティストやレーベルのニーズに合わせて30以上のサービスを提供しています。その中でも特徴的なのが「リスニングパーティー」です。同サービスは、Weverseのユーザーであれば、誰でも音楽配信サービスの有料アカウントを接続してリアルタイムに同じ音楽を聴きながらチャットで会話を楽しめるというものです。「ストリーミング再生回数を押し上げながらファン同士の交流を深めることができます」とチェ氏はサービスのメリットを説明しました。

最大の収益源であるeコマース領域でも、革新的な機能が導入されています。その一つが「Weverse Pick-up(会場受取)」機能です。チェ氏は「アプリ上で商品を購入し、会場の指定した場所・時間で受け取れるようにすることで、物販の行列による混乱を解消し、より多くの商品を販売できるようになりました」とし、ファンのストレスを軽減し、運営にも大きな利益をもたらしていると述べました。

優れたプラットフォームがあっても、それだけではファンは育成されません。チェ氏は「スーパーファン」育成において最も重要なテーマは、「アーティストの“本物らしさ(オーセンティシティ)”を届けること」としました。「昨今のファンはとても賢く、投稿に商業的なPRが含まれているのか、アーティスト自身の意見なのかをすぐに見抜きます」と指摘しました。

Weverseがアーティストの“本物らしさ”を引き出せる理由について、『BTS』のメンバーがプラットフォーム上で自然体な姿をファンに届けている例を挙げ、「一般的なSNSにはアーティストに対してネガティブな感情を抱くユーザーも存在しますが、Weverseは好意的なファンで構成されたコミュニティです。アーティストにとって非常に安全で快適な場所であるからこそ、本来の姿を届けることができるのです」と、ファンとの信頼関係が築かれていることを示しました。

 

日本アーティストと海外ファンを繋いでいく

現在Weverseは日本の音楽市場での展開を本格化させており、約20組の日本人アーティストが参加しているとチェ氏は明かし、「驚くべきことに、これらのアーティストを訪れるユーザーの約70%が日本国外からなのです」と付け加えました。

チェ氏は「私たちは日本のアーティストが世界中に届くよう支援したい」と力説。例えば、KAWAII LAB.所属の『FRUITS ZIPPER』は10時間連続のリスニングパーティーを開催した上、韓国でのコンサートに向けてグローバルメンバーシップを通じたチケット先行販売を実施しました。また、『幾田りら』も日本を含む全世界のファンを対象としたファンクラブを立ち上げ、韓国公演のチケット先行販売に活用しています。

最後にチェ氏は、「スーパーファンが市場を牽引し、Weverseがファンを成長させ、アーティストの誠実さがそれを支えます」と総括し、この三位一体の戦略がこれからの音楽エンタテイメント業界をリードしていく可能性を示唆してセミナーを締めくくりました。

※本展は業界関係者のための商談展です。一般の方はご入場できません。

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