ゲーム市場への他業種参入:花王、松井証券によるゲームを活用したマーケティング戦略~TGS2025
公開日: 2025/10/02
「東京ゲームショウ2025(会場:幕張メッセ)」が2025年9月25日~28日にかけて開催されました。本特集では、同展示会で開催されたイベントのなかから、基調講演のほかB to Bセミナー「TGSフォーラム」の様子をレポートします。第2回は、TGSフォーラム「“他業種”からの参入――ゲームで拓くマーケティング戦略の可能性」で語られたゲーム市場に進出する業界外企業、花王と松井証券のマーケティング事例について紹介します。
※本記事で触れられている内容は2025年9月時点の情報です。

- 拡大を続けるゲーム市場、新規顧客獲得を目指し “業界外”企業が多数参入
- 新規顧客獲得に向けた花王・松井証券のゲーム市場参入と、具体的な取り組み
- ゲーム・eスポーツファンのコミュニケーションの「速さ」が企業のPDCAを手助けする
拡大を続けるゲーム市場、新規顧客獲得を目指し “業界外”企業が多数参入
はじめに、モデレーターを務めるビジネス視点のゲームメディア「日経Gaming」の平野亜矢編集長が、近年、食品、日用品、アパレル、家具メーカーなど、“非ゲーム業界”から、ゲームユーザーに向けた商品の開発、販売、およびゲームを活用したマーケティング施策に取り組む企業が多数登場していることを共有しました。
「他業種からゲーム市場への参入が加速する背景には、市場自体の持続的な拡大があります」と同氏は説明。続けて、ボストン コンサルティング グループのデータによると、世界のゲーム市場は2028年には2660億ドルに達すると見込まれているほか、『ファミ通ゲーム白書2024』によると、日本のゲーム人口は5553万人(2023年時点)と非常に多いことを明かしました。そして、「生活のなかでゲームの優先度が高まっており、ライフスタイル化が進んでいると多くの企業がみています」としたうえで、企業が巨大なユーザー層との接点を創出し、商品認知の拡大を目指し、「ゲームIPとのコラボ商品」「ゲームユーザー向け商品開発・販売」「大会・イベント・選手への協賛」といった多様なアプローチでゲーム市場に関わっているとトレンドを紹介しました。
新規顧客獲得に向けた花王・松井証券のゲーム市場参入と、具体的な取り組み
花王株式会社パーソナルヘルス事業部の佐々木将氏は、めぐりズム「貼る炭酸ジェルパック」シリーズのマーケティングを担当。同氏は「本商品が持つ長時間のPC、スマホ使用からくる疲労感をリフレッシュさせるという特性に、ゲームユーザーとの親和性を見出しました」とし、新しい顧客層としてeスポーツプレイヤーや長時間配信を視聴する層に注目していることを示しました。
一方、松井証券株式会社のマーケティング部推進役の緒方ひかり氏は、投資を難しいと感じている若年層に向けたコンテンツ提供に注力。ネット専業証券会社として、デジタルネイティブ世代のゲームファンであれば、オンライン上の証券取引にも抵抗が少ないのではと考え、若年層が注目するeスポーツ分野をブランディング戦略に活用していると述べました。また、同社が2022年から『VALORANT』の国内大会スポンサーを開始し、その後も国際大会への協賛や、『フォートナイト』のメタバース空間での金融ゲームコンテンツ展開など、多角的な取り組みを行っていることを紹介。直近の取り組みとして「eスポーツチーム『FENNEL』のスポンサー契約を通じて、より深いファン層へのリーチを図っています」と述べました。
ゲーム・eスポーツファンのコミュニケーションの「速さ」が企業のPDCAを手助けする
ゲーム業界参入のメリットとして、花王の佐々木氏はゲーム・eスポーツファンの反応の速さを挙げました。ゲームイベントでサンプリングを行うと、他業界のイベントと比較してもSNSでの反応が非常に多く、商品開発のPDCAをより早く回せると指摘。松井証券の緒方氏は、eスポーツチームへの協賛を通してファンの熱意を実感。応援しているチームのスポンサー企業に対して、ファンがSNS上で感謝の気持ちを示す傾向があるとし、成長途中コミュニティだからこそ見られる特徴であると述べました。「自身の推し選手のスポンサー案件獲得を喜び、スポンサー企業自体を応援し消費を活発に行うファンも見られます」。
一方、ゲームコミュニティでのリアクションの速さゆえに、企業としての「姿勢」が極めて重要視されます。緒方氏は「ゲームやeスポーツのファンコミュニティは、熱量が高く、企業への貢献意識が強いという特性がありますが、その分、企業が『ファンや選手を利用しようとしている』と見なされることに対して非常に敏感です」と指摘し、「ファンと同じ目線に立ち、大会やチームを一緒に応援している姿勢」を常に示すことが重要であると強調しました。佐々木氏も同様に、コラボを実施する際には、ファンが心から喜び、納得できる「何か」を必ず提供することを意識し、その結果生まれるポジティブなフィードバックやファンからの感謝の言葉が、社内での企画承認を後押しする強力な根拠となっていると述べました。
終盤、佐々木氏はゲーム分野参入時のKPI設定における大きな課題として、購入者のデータを十分に取得できていないという点を指摘しました。「企業が獲得したいファン層、例えば『どんなゲームをプレイしているのか』といったより詳細な情報と、実際の購入データを紐付ける仕組みが不足しているのです」。今後、購入者のデモグラだけではなく、ゲーム領域での消費者の活動を補完する詳細なデータが整備されれば、より意義のあるマーケティングに繋がるだろうとの期待を示しました。
- 第1回:プレイステーションストア売上2兆円突破:ユーザー体験とマーケティング機会の最大化を目指す
- 第2回:他業種参入が加速するゲーム市場:花王、松井証券が打ち出すゲームを活用したマーケティング戦略
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