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Anime NYC昨年比146%の14.8万人を動員~米国で確立した日本アニメのファンコミュニティ
公開日: 2025/10/10

特集:Anime NYC 2025レポート 第1回

北米東海岸最大級のアニメコンべンションとうたう「Anime NYC 2025」が、2025年8月21日(木)~24日(日)の4日間にわたり、米・ニューヨーク市のジェイコブ・ジャヴィッツ・コンベンション・センターで開催されました。本特集では、会場全体の様子をレポートするとともに、ロサンゼルス市で行われるアニメの祭典「Anime Expo」との比較を通じて、北米におけるアニメコンベンションの在り方について考えます。第1回は、会場で行われた各種イベント、パネル、展示ブース、来場したファンの熱気をレポートします。
※本記事で触れられている内容は2025年8月時点の情報です。

《目次》

 

 

目覚ましい成長を見せるAnime NYC14.8万人の動員、前年比146%に

「Anime NYC 2025」の動員者数は14.8万人と発表され、昨年の動員数10.1万人から46%増加しました。初開催2017年の動員数約2万人から、8年間で7倍以上と規模が大幅に拡大したことが分かります。昨年、開催日が11月から8月に変更され、今年も8月の開催となりましたが、さらに開催期間が3日から4日間に伸ばされたことが動員増加の促進につながったとみられます。本コンベンションが米国のファンコミュニティに深く浸透し、東海岸を代表するアニメのイベントとして地位を確立したと言えるでしょう。

「Anime EXPO」同様に、多くの企業がブースを出展し、展示や物販を展開。ほかにも、個人クリエイターが展示・販売するArtists Alleyエリアや、ライブやコスプレイベント、ゲームの試遊、業界トークセッションなど多彩なプログラムが提供されました。また、日本食を体験できるJapanese Food Courtでは、たこ焼きやラーメンなどが提供されていました。

 

Crunchyrollの存在感

主要な支援者・協力企業であるCrunchyrollは、ブース、イベント、販売など多方面でその存在感を出していました。そのほかアニプレックスや北米で日本のマンガ・アニメの販売を行うViz Media、紀伊國屋書店もブースを出展。紀伊國屋書店は、講談社とコラボした北米向け増刊号『ヤングマガジンUSA』を無料配布し、読者投票企画を実施しました。

 

「アニメ」の広がりとアニメそのものにとどまらない多彩な体験

「hololive STAGE World Tour ’25 -Synchronize!-」の会場前で並ぶファン

ライブイベントとしては、『エヴァンゲリオン』30周年を記念して高橋洋子が主題歌「残酷な天使のテーゼ」を披露したほか、JAM Projectが『ワンパンマン』主題歌ライブを実施。カバーは『ホロライブ』の展示エリアでイベントを行うとともに、別途チケット購入が必要な「hololive STAGE World Tour ’25 -Synchronize!-」を開催。全席完売の人気ぶりで、開場前から多くの人が自作の法被など「推し活グッズ」を携え、大きな盛り上がりを見せていました。

「hololive STAGE World Tour ’25 -Synchronize!-」の会場

声優がゲスト登壇するラインナップ発表や、プレミア上映も多数開催。また、Crunchyroll、HIDIVEなどアニメ専門配信サービスのほか、英語吹替声優が登壇した『ダンダダン』や『SPY×FAMILY』、アニプレックスのパネルが実施されました。

Netflixは初日の夜に特別イベントを実施。吹替キャスト、監督、製作者らが登壇し、今後のラインナップについて熱く語りました。特徴的だったのは、『SAKAMOTO DAYS』といった日本製作アニメも押し出しつつ、ゲーム『スプリンターセル』のアニメ化や、エミー賞受賞歴のある『BLUE EYE SAMURAI/ブルーアイ・サムライ』など、Netflix製作アニメーションにも重点を置いていたことです。イベントのMCは『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』のキャラクター「ルミ」のコスプレで登壇。Anime NYCでは、Kカルチャーを扱ったイベントもあり、「アニメ」「アニメーション」「日本発ポップカルチャー」の裾野の広がりと隣接ジャンルとの親和性を感じます。

ライブやイベントのほかにも多彩な内容のパネルが開催されました。その内の一つ、“Black Rep in Anime: Hip hop heard around the world panel“は、ヒップホップというポップカルチャージャンルがよりメインストリームになり、広がっていく可能性を感じさせる内容でした。登壇者たちは、自身のアニメとの出会いやファン活動の道のりを共有し、アニメファンコミュニティが持つ創造性と包括性を示しました。

“Black Representation in Anime: Hip hop heard around the world panel“の登壇者

さらに、キャラクターとクリエイターの両面において、アニメにおける黒人の描写のさらなる向上(より良い表現)が必要であると強調。黒人ポップカルチャーの代表ともいえるヒップホップが、アニメに与える影響について議論し、業界におけるより本質的な文化交流と、表現の可能性が語られました。

そのほか、ファンによるパネルも実施されました。『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』『ハローキティ』の北米における歴史やビジネス分析をファンが発表したパネルは、入場制限を行うほどの盛況を博しました。

会場では、来場者による多彩なコスプレを見ることができますが、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の北米公開が3週間後に迫っていたためか、同作に関連したコスプレが多かったように思います。また、会期中の週末に劇場でイベント上映が行われた『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』のコスプレイヤーが非常に多く、会場ではK-popをテーマにしたイベントも複数見かけました。

第2回へ続く

取材・文 梅津文

特集:Anime NYC2025レポート
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