第2回:日米の反応の違いを理解し、北米アニメファンとのつながりを強固に(現地レポート:イベント・コスプレ編)
公開日: 2023/08/17

米ロサンゼルスで日本のアニメやマンガなどのポップ・カルチャーに特化したコンベンション「Anime Expo」が7月1日から4日にかけて開催されました。本コンベンションは、1991年にAnime Conとしてスタートして以来、30年以上の歴史があり、今年は世界各国から累計35万人超が来場。出展企業も400を超え、全米最大規模のコンベンションとして北米のアニメファンに知られています。
今年、弊社から梅津文(代表取締役/CEO)と小野幹(リサーチ・アナリティクス部シニア・リサーチャー)の2人がAnime Expoに参加。本特集では2人から熱気あふれる現地の様子をお伝えするとともに、注目のセッション/セミナーの内容をレポートします。
※本記事で触れられている内容は2023年7月時点の情報です
第2回も引き続き現地レポートをお届け。イベント・コスプレ編と題し、梅津、小野へのインタビューを通じて、日米間で異なるファンとのコミュニケーション方法や、現地のコスプレ事情・楽しみ方をお伝えします。
Anime Expoの場としての重要性を格上げする取り組みが重要
―― 企業・個人作家ブースのほか、新作発表や声優・クリエイターらが登壇する多様なパネルディスカッションが開催されるのもAnime Expoの特徴です。お二人とも多くの会場に足を運んだと聞きましたが、何か発見や気づきなどはありましたか。
小野 幹:『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』など、コンテンツ系のパネルを主に拝見しました。そのなかでの印象にはなりますが、「北米のアニメファン」に対しては、現地特有の適切なコミュニケーションの取り方があると感じました。『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』は前年にもパネルを開催していたこともあり、アニメ映像、特にアクションシーンを通じた盛り上げや、「五条先生のコスプレしている人いる?」など突発的にファンとの交流イベントを起こしたり、コール&レスポンスをしたりと、こなれている様子でした。また、日本で有名な声優やクリエイターは北米のファンの間でも認知されており、彼らの登壇や映像メッセージで会場が盛り上がっていました。
一方で、日本では興味を持つ人が多い制作の手法や裏話に対するファンの食いつきは薄く、北米ファンはあくまで作品そのものを重視する傾向にあるようです。北米のアニメファンにとって盛り上がる情報とそうでない情報を精査することで、ファンとの関係性をより強固にしていけるのではないかと感じました。
梅津 文:コンテンツ系に加えて、Webtoon含めた出版系メディアや情報インフラ系のパネルなど、幅広く足を運びました。このイベントは“Anime” Expoですが、アニメの盛り上がりだけでなく、関連するマンガはもちろんのこと、「MyAnimeList」「Anime News Network」「Anime Trending」などのファンの交流や情報サイト・サービスなど盛り上がりのすそ野の広がり、盛り上がりを支えるサービスの充実も実感できました。
コンテンツ系のパネルにおいて感じたのは、参加事業者がAnime Expoという場としての重要性を格上げする取り組みにもっと注力してもいいのではないかということ。例えば、その場で初出し映像や情報解禁を積極的に行うなど、その場にいたことによって得られる喜びの仕掛け、参加者が発信側に大事な存在として扱われているという特別感をもっと打ち出す余地もあるのかなと。その中では、ワーナー ブラザース ジャパンとWIT STUDIOがDCコミックス原作のアニメ『異世界スーサイド・スクワッド』の製作を発表したのは大変盛り上がっていました。
CinemaConの場合、プレゼンテーションの主な観客は世界各国の興行会社になるんですが、大ヒットした『トップガン マーヴェリック』を公開前に世界で最初に観客として観たのは、実はCinemaConの参加者でした。そういった特別感を醸成することで、公開に向けて「この作品を応援しよう」という機運を高めていくわけです。Anime Expoでも、熱意を持って集まってくれた北米のファンに向けて、彼らだけが得られる特別な要素がもっとあってもいいのではないでしょうか。『鬼滅の刃』のパネルでは、描き下ろしの色紙配布がありましたが、あれも盛り上がっていましたね。
街中でもコスプレを楽しみ、お祭り感に満ちたイベント
―― 小野さんは自身も『呪術廻戦』の狗巻棘のコスプレをして、Anime Expoに参加したと聞きました。普段、日本のイベントでもコスプレ経験のある小野さんの目から見て、何か特徴的なことはありましたか。
小野:最も強く感じたのは、とても“自由”ということです。通常、日本のイベントの場合、会場内でメイクや着替えをして、決められたエリアでコスプレを楽しむのがルールとなっています。ところがAnime Expoでは、ロサンゼルの街中にコスプレをしている人があふれていました。イベントとは関係のない周辺のレストランやホテルでも普通に食事をしているほど。コスプレOKというより、ルールがないのでしょう。そのためか、街全体がお祭り感で満ちていました。
また、コスプレイヤーとカメラマンの関係にも違いがありました。日本のイベントでは人気のコスプレイヤーに多くのカメラマンが集まる光景がよくみられますが、Anime Expoではあまりそういった光景はみかけませんでした。一方で、Anime Expoには……(以下、会員限定記事にて掲載)
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