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「大型IPコラボ」「無料プレイ」だけではヒットしない時代に ~データで読む2026年のゲーム市場 〈GAME FUTURE SUMMIT 2026〉
公開日: 2026/06/16

特集:GAME FUTURE SUMMIT 2026レポート 第1回

ゲームマーケティングとプロデュースに特化したカンファレンス「GAME FUTURE SUMMIT 2026」が6月3日、東京・渋谷で開催されました。「ゲームビジネスの成功と成長のノウハウが集まる1日」をスローガンに掲げた本イベントでは、IPコラボやグローバル展開、AI活用など多くの分野にわたる議論が交わされました。
近年ではコンテンツ産業の柱としても注目を集めるゲーム市場。特集の第1回は、ゲーム市場の現状をデータから読み解く2セッションとして、Sensor Towerによる市場データ概況に関する講演と、Sensor TowerとKADOKAWAによるモバイルゲーム市場でのIP活用の対談をレポートします。

※本記事で触れられている内容は2026年6月時点の情報です。

GAME FUTURE SUMMIT 2026
《目次》

 

 

モバイルは圧倒的リーチも収益横ばい PC(Steam)はインディーゲームが台頭

世界のゲーム市場は現在、どのような局面にあるのでしょうか。セッション「最新データが10分でわかる:モバイル・PC/コンソールデータ市場」では、Sensor Tower シニアストラテジックアカウントディレクターの加藤太助氏が登壇。2025年の世界全体のゲームダウンロード数が520億に達した、との報告から講演を始めました。

モバイル・PC/コンソール ゲーム市場の概況 モバイルとPC/コンソール ゲーム市場の概況

 

ダウンロード数の内訳や収益ではモバイルゲームの数字が目立ちます。2025年のダウンロード数ではモバイルが500億を占め、PC/コンソール(PCはSteam、コンソールはXboxとPlayStation)は20億にとどまります。収益面でも、モバイルゲームのアプリ内収益は1年で820億ドルに達したのに対し、Steamのプレミアム収益が117億ドルだったと紹介しました。

モバイルゲームでは、スマートフォンの普及や基本プレイ料金無料のF2P(Free to play)モデルにより圧倒的なリーチを支えています。しかし、加藤氏は近年のモバイルゲームはダウンロード数が減少傾向にあり、収益は横ばいとなっていることを指摘しました。

このギャップについて「ユーザーを大量獲得し、低歩留まりするモデルが通用しなくなっており、競争軸がインストール数からLTV(顧客生涯価値)へシフトした証拠」だと分析。今後のモバイルゲームは一人ひとりのユーザーの価値を高め、ゲームの機能追加やアップデートを継続的に実施していく「ライブオプス設計」が不可欠な時代に入っているとの見解を示しました。

対してPC(Steam)市場では、2025年の収益・ダウンロード・リリース本数がいずれも最高記録を更新しました。ソフト売上であるプレミアム収益でも伸び率は昨年度比13.0%増と、モバイルゲームのアプリ内収益の同比1.4%増を大きく上回る成長を見せています。

特に注目すべきは、個人や小規模チームで開発するインディーゲームの台頭です。「R.E.P.O.」「PEAK」など10〜20ドル帯の安価なタイトルが、F2Pのトップタイトルと同水準のダウンロード数を達成したと報告しました。

PC/コンソールゲームにおける主な2025年の価格別ダウンロード数 PC/コンソールゲームにおける主な2025年の価格別ダウンロード数

 

他方、開発費とマーケティング費用を大規模に投じて制作するAAAタイトルでは、『Battlefield 6』のダウンロード数が上記インディーゲームを上回ったと説明しました。日本円で1万円超(60~70ドル)の高価格帯でありながらも積極的に購入されている状況について、加藤氏は「ゲームが無料というだけで勝負できる時代ではなくなり、コンテンツの質と話題性が勝敗を分けるようになりつつある」と語りました。

 

IPモバイルゲームでユーザー獲得経路に変化 大型IP過信は「足をすくわれる」

では、IPコラボという切り口から見た時、ゲーム市場はどのような変化をたどっているのでしょうか。セッション「IP価値を解き放つ:ゲーム市場の変化を生き抜く戦略」では、Sensor Towerでシニアアカウントディレクターを務めるパク・ジン氏が登壇。KADOKAWAでゲームプロデューサーを務める倉林健治氏とともに、IPを活用したモバイルゲーム市場におけるマーケティング戦略について意見を交わしました。

左からSensor Towerシニアアカウントディレクターのパク・ジン氏、KADOKAWAゲームプロデューサーの倉林健治氏 左からSensor Towerシニアアカウントディレクターのパク・ジン氏、
KADOKAWAゲームプロデューサーの倉林健治氏

 

前述のセッションで紹介されたモバイルゲーム市場全体の動向は、IPモバイルゲームにおいても見られます。パク氏は自社データをもとに、IPモバイルゲームでダウンロード数の減少と収益の横ばいが続いていることを示した上で、ユーザー獲得経路にも変化が起きていると指摘しました。

大型IPのゲームを対象としたオーガニック(指名検索経由)でのダウンロード比率を比較すると、2021年の時点では全体の3~4割を占める一方、2025年ではその比率が大きく低下。代わりに有料広告やWebブラウザ経由の比率が増えたと話しました。

IPモバイルゲームのユーザー獲得経路(2021年・2025年比較)  IPモバイルゲームのユーザー獲得経路(2021年・2025年比較)

 

倉林氏はパク氏が提示したデータを「衝撃だった」と語ります。「これまでの体感として、有名なIPのゲームであれば、ユーザーは直接検索してくれる期待がありましたが、2025年ランキングに入っている『魔法少女まどか☆マギカ』や『ジョジョの奇妙な冒険』『ガンダム』などの大型IPでさえその前提が崩れています。直近の市場では100万ダウンロードを取れるつもりで計画を立てたのに、見込みの数分の一にとどまってしまった、というゲームも多いのではないでしょうか」と語りました。

一般的なアプリゲームの開発に2~3年かかるなか、企画立案時の市場感覚のままリリースすることで世間とのギャップが広がるリスクがあり、大型IPへの過信は事業計画そのものを危うくすると警鐘を鳴らしました。

 

ジャンルとIPの「必然性」がカギに コラボ事例から考える次の好機

厳しいデータが示された一方で、倉林氏はヒット作に向けた可能性も示しました。Sensor Towerのデータによると、主要ジャンル別に見たIPモバイルゲームにおけるトップタイトルは過去5年間で10本中6本が入れ替わっています。倉林氏は「ダウンロード数や収益面ではここ数年、トッププレイヤーが変わらない印象を持ちますが、ジャンル別のレベルでは競合に対して存在感を出せるチャンスがある」と語りました。

カギとなるのは、IPの特性とゲームジャンルの「必然性」です。直近のリリースランキングで上位に入った『七つの大罪:Origin』について、倉林氏は、原作の世界観を3DオープンワールドRPGというゲームジャンルで体現したタイトルだと言及しました。「IPのファンが頭の中でイメージするものを、ちゃんとゲームで体現できているかを情報として届けていくことが重要」だとし、「逆にここがズレてしまうと、サービス開始前からのファン離脱につながりかねない」と強調しました。

IPゲームタイトルの事例として、KADOKAWAがかかわる『陰の実力者になりたくて! マスターオブガーデン』挙がりました。IPを活用したゲームはアニメのヒット後に数年遅れでのサービス開始も多いなか、同タイトルはアニメとゲームがほぼ同時にリリースされるメディアミックスを展開。アニメ放送と連動したゲーム内イベントの開催が、収益化につながったと振り返りました。

『陰の実力者になりたくて! マスターオブガーデン』のメディアミックス事例 『陰の実力者になりたくて! マスターオブガーデン』のメディアミックス事例

 

倉林氏は「IPゲームにおいては、IPのファンをいかに楽しませるかが付加価値につながっていく」と述べ、セッションを締めくくりました。上述した加藤氏のセッションでも、LTVやコンテンツの質・話題性が求められているとしており、コンテンツの構造それ自体に加え、その構造に基づいて、どうユーザーと向き合っていくかの設計が重要となりつつあるようです。

ではヒットタイトルを作るため、ジャンルやIPはどのような基準で選定し、どのようにファンの反応を測り、どう熱量を高めていけばよいのでしょうか。次回以降の連載では、GAME FUTURE SUMMITの各セッション内容からそのヒントを探っていきます。

特集:GAME FUTURE SUMMIT 2026レポート
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