データ・アナリストの教育と広告手法の変化
公開日: 2017/02/03
Variety主催のBig Data Summitにおける”The Transformation of Content Through Data”というテーマのもとのパネルディスカッションにおいて、ハリウッドメジャー幹部やプラットフォーム企業の技術リーダーらによる現状報告と、彼らが実体験から得たより良いデジタル・ストーリーテリング体験を観客に提供するための方法論が展開された。
今回は、本シリーズ最終回となる第三回目。
第一回目「米ワーナー・ブラザースおよびインデペンデント配給会社の事例」
第二回目「消費者にコンテンツを発見してもらう施策の具体事例」
モデレーター:
ジェイ・タッカー ( USC Marshall School of Business/コミュニケーション・テクノロジー・マネジメント部門 最高マーケティング責任者)
パネリスト:
スーザン・チェン ( ワーナー・ブラザース/コンテンツ管理&配給部門 SVP )
ポール・デイヴィッドソン ( The Orchard/映画&テレビ部門 SVP )
マイク・フリン ( コレクティブ・デジタル・スタジオ/最高技術責任者 )
マット・カウツ ( Machinima/分析・リサーチ部門 ビジネス・インテリジェンス代表 )
カリエル・ロバーツ ( ディスカバリー・デジタル・メディア/商品&技術部門 SVP )
アーロン・スローマン ( OWNZONES/最高技術責任者 )
いま観客にはなっていない人々を取り込むには
どのぐらいデータからのインサイトを活用すれば、いま観客にはなっていない人々を取り込むことができるのか。ディスカバリー・デジタル・メディアのカリエルは、「とにかく、たくさんの実験をすることだと思う」という。
「例えば今は、誰もがFacebookでビデオを見て、エンゲージしています。私は以前、Facebookとともに、YouTubeにもビデオをアップしていましたが、短いビデオや、字幕付きのビデオなど違うタイプのビデオを作る必要がありました。プログラミング・チームが、違うプラットフォームごとに、違う戦略を用いてコンテンツを作るというのは、ひとつの例だと思います。こうした戦略は、急速に増えています。このような実験をすることは興奮します。他にも、プロデューサーたちにできることはたくさんあると思います。
Facebookが新しいフィーチャーを発表しましたが、我々もそうした動きを常に注視し、より多くのデータをもらえるように依頼しています。我々は彼らのデータにアクセスすることができます。ビデオのマッチングもしたいのですが、YouTubeのフィーチャーだけでは、各ビデオの関連性を把握することが難しいのです」。
Machinimaのマットは、「各プラットフォームは、それぞれにユニークな雪の結晶のようなものだ」という。「すべてのプラットフォームにおいて、まったく違う最適化の方法が必要であり、それらは信じられないほど資源集約的なものなのです。優先順位を付け、それぞれの機能を最大限に活かすことは、我々の大きな課題のひとつです」。
データ・アナリストはどう教育するか?
データ分析には多くの人材とリソースが必要だ。各社にどのくらいデータ分析に従事する人材がおり、企業は彼らをどのように管理するのか?
Machinimaのマットは、「すべては、目標をどこに設定するか」だという。「私はMachinimaの前に、ウォルト・ディズニー・スタジオで働いていました。私の管轄は、ソーシャルメディア分析で、最初は同僚が1人いるのみでしたが、すぐに10人に増えました。データ分析ビジネスにおける需要が、急激に高まったからです。10人の増員は、会社にとって費用的に何の問題もないことでした。なぜなら、それまですべての調査はソーシャルメディア分析エージェンシーにアウトソーシングされていたからです。これらのエージェンシーでは、多くの人材が動きます。そのエージェンシーの費用で社内にアナリストを雇うことにより、3倍もの結果が得られたのです。この原理は、各社が関わるすべてのプラットフォームの分析にもあてはまることだと思います」。
アナリストを組織内に取り込む一番のメリットは、彼らの知識を蓄えられるということ。その社内のアナリストは、どのように学ぶのか?
コレクティブ・デジタル・スタジオのマイクは、「分析訓練において、最も重要なことは、データを取り巻く“ビジネスの要素”です。各ソーシャル・プラットフォームにおける特殊なテクニックを学ぶというより、ビジネスに重要なことは何かを知り、各ソースから学んだことを業務目標にどう活かしていくかが大事なのです」。
The Orchardのポールは、「私がエンジニア・チームから、ダッシュボード用により多くのリソースを求めるときには、常によりよいデータやバックエンド・ツールがあるかを考えます。コンテンツをより効果的にマネタイズするための知識に裏付けられた商品と、そうでない商品から生まれたビジネスには、収入差があるはずです」。
ワーナー・ブラザースのスーザンは、「私は、バランスが大切だと思います。何をしようとしているかによりますが、テクノロジーはとても速い速度で動き、人々はより変化のあるステッピング・モデルを欲しています。そのために、ビジネスを理解し、最新のテクノロジーを見つけ、それを適切な方法で取り入れ、活用できるコア・チームが必要なのです」。
必要とするアナリストをそう説明しつつ、ここでもスーザンはコンテンツ企業の考え方が逆転の発想へとシフトしていることを明らかにした。
「これまで私たちは、消費者とつながることや、彼らが何を楽しみ、何とつながっているかをセグメント・把握する方法についてたくさん議論してきました。しかし、それはコンテンツがどのように分類・セグメントされるかということとは、まったく違うモデルだと思っています。
従来、テレビのコンテンツ制作のためのリサーチでは、“このコンテンツに合うシーズンとエピソードはこれ”“視聴者が好きな俳優はこの顔ぶれ”といった次元のことが話されてきました。我々はそれを、“この映画はフィールグッドなので、観客に愛されている”といったグラフ・モデルに移行しようとしています。消費者アピールだけでなく、“成功の理由は、フィールグッドなスポーツ映画だったから”といった、ある種、意味論的なデータベースのスキーマこそを必要としています。自分たちが提供しているコンテンツは何なのか? 自分たちのコンテンツをどのように定義するのか? どのような感情を刺激しているのか? 『ハリー・ポッター』をファンではなく、マジカルなことが好きだという新しい顧客にいかに広げるか? ということに注力しています」。
加速していくソーシャルメディアと押さえておくべき既存メディアのバランス
最後にデジタル化したコンテンツ・トランスフォーメーションのなかで、既存の広告的伝達方法はどうなっていくのかということについての意見を聞く。分析論とデジタル・メディアにおいて、関心はソーシャルメディアに向いているのか? との問いに、「そのとおりです」と答えるのはディスカバリー・デジタル・メディアのカリエル。
「これまでは、データといえばSEOの数値を聞かれていました。どのようにして自発的に集客数を増やすことができるのか? と、関心の矛先がソーシャル・トラフィックにシフトしました。人々がソーシャルメディアを使用して、どれだけの時間を使って、どれだけの情報とエンタテインメントを見ているかということは、とても重要だと思います。ソーシャルメディアはまた、人々が映画館に足を運んだり、作品をレンタルしたり、サービスに会員登録するモチベーションともなるのです」。
ではデジタル・コンテンツ関連の業界にとって、従来型の広告手法や広告とのつきあいかたはどう変化していくのか。The Orchardのポールは、常にターゲットなるソーシャル・プラットフォームはシフトし続けるが、広告という形は残るだろうという。
「映画業界では、いまだに新聞に広告を入れる必要はあるのか? ということが議論されています。テレビ・コマーシャルに、新聞に、あなたがリーチしたい観客はいるでしょうか? 我々は5年前、ウェブサイトやFacebook、そしてコアな広告を重要視していましたが、今はそのターゲットはSnapchatやInstagramのユーザーにシフトしています。今後も5年ごとに、何かしらの新しいソーシャル・プラットフォームが登場するでしょう。とはいえ一般的に、広告が消えるということはないでしょう」。
データによるコンテンツ・トランスフォーメーション レポート
- (1) 米ワーナー・ブラザースおよびインデペンデント配給会社の事例
- (2) 消費者にコンテンツを発見してもらう施策の具体事例
- (3) データ・アナリストの教育と広告手法の変化
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