記事

目指すは「オールインワンエンタテイメント」U-NEXT本多COOが語るシェア拡大を後押しする独自戦略~コンテンツ東京 2025
公開日: 2025/07/24

「第17回コンテンツ東京」が7月2日(水)~4日(金)、東京ビッグサイトにて開催されました。特集では会期中に行われたコンテンツ活用の最新事例が学べる多彩なカンファレンスに注目。第1回は、株式会社U-NEXTの本多利彦COOが登壇した特別講演「Tier1であり続けるためのU-NEXTの独自戦略」をレポートします。約1時間にわたる講演では、U-NEXTが躍進を続けている秘訣として、独自のマーケティングミックス、コンテンツ戦略、IP展開などが明かされました。

《目次》
     

加入者数「466万人」に到達、リーディングポジションにありながら継続的にシェア拡大

冒頭、本多氏は2025年5月時点でU-NEXTの加入者が466万人に到達したことを報告。続けて、GEM Partnersの調査による「動画配信(VOD)市場5年間予測(2025-2029年)レポート」を引用し、2024年時点で同サービスが国内の定額制動画配信マーケットにおいてシェア2位であったと共有しました。

※クリックして拡大

その背景には、コロナ禍による家庭内エンタメ需要の増加に乗じた成長のほかに、多様なシーンで活用できる「ポイント」の存在が大きかったと語る本多氏。「ポイントを利用した新作映画のレンタルはもちろん、NHKオンデマンドや、サッカーパックなど様々なサービスを取り揃えたからこそ、ほかサービスが直近停滞するなか、リーディングポジションを維持しながらシェアを拡大できたのだと思います」と明かしました。

また、「我々は戦略を持って、コンテンツのピークとピークを点から線に繋げて太く進んでいます」と述べ、単発的なヒットではなく持続可能な成長を目指している姿勢を強調しました。

 

テレビ局、映画館とのパートナーシップによるブランド強化

本多氏は、U-NEXTがシェアを伸ばし続ける要因が、「地上波での告知活動、デジタル広告、流通・小売・映画館と提携したプロモーション」を組み合わせた"三位一体"のマーケティングミックス戦略にあるとしました。同サービスは、2023年のParaviとの統合により、TBSやテレビ東京が保有する1万作以上のコンテンツを放送直後から配信できるようになり、継続的な作品投入が可能となりました。また、TBS、テレビ東京といった地上波番組内のサービス告知については、「サービス未加入者に向けて信頼感をもって露出できるのがテレビだと考えています」と明かしました。

U-NEXTのマーケティング戦略で特筆すべきは、映画館との連携です。U-NEXT会員がポイントを用いて映画鑑賞チケットと交換できる仕組みについて、本多氏は「映画館でのヒットがなければ、U-NEXTの成功もありません」と強調。ポイントにより劇場鑑賞のハードルを下げ、劇場でのヒットをサポートし、ヒットした作品が配信でも好成績を収めるという"エコシステム"を創出しているとし、今後も映画館への送客を重視する姿勢を明らかにしました。

 

エンタメ・ライブのハイブリッド戦略と、独占配信による差別化

続けて本多氏は、同サービスがエンタメとライブのハイブリッドサービスとして、独自のポジションを築いていると説明。エンタメにおいて同サービスは、多様な映画・アニメを多数揃えており、2025年5月時点では、見放題作品数が定額制動画配信サービス横断でNo.1であることをアピールしました。また、「2021年にはHBO、HBO Maxオリジナル作品の独占配信を開始しており、ほかにも韓国ドラマなど、ほぼ毎月継続的に独占コンテンツを配信しています」と述べました。

また、ライブ配信においては、コロナ禍を契機に急拡大し、スポーツから音楽まで領域を広げていると紹介。現在では「欧州サッカー、ゴルフ、格闘技、テニス」を四大柱として強化しているとしました。そして、同サービスでは、年間2,800以上のスポーツライブが配信されており、それを可能としているのが、インハウスでの制作・編集によるスピーディーな対応であると語りました。

音楽ライブは年間400以上配信を行っており、アーティストのライブはもちろんのこと、ユーザーが上質なコンテンツに気軽に触れることができるように、オーケストラや舞台のライブ配信も行っていることを強調しました。また、8月には6日間にわたって、U-NEXT初となるリアル音楽フェスを開催することを告知。大阪万博にてLDH、布袋寅泰、いきものがかりといったアーティストを招くことを共有しました。

 

動画・書籍・音楽を一つのアプリに、U-NEXTが目指すオールインワンエンタテイメント

U-NEXTの今後の展望として、本田氏は「動画、書籍、音楽を単一アプリで提供する"オールインワンエンタテイメント"」を志向していることを明かしました。現在、同サービスは動画のほかに、200誌以上の雑誌をはじめ、マンガ、小説、学研との協業によるキッズ書籍など、多様な書籍を提供していることを説明。さらには、2026年頭に向けて、定額制音楽配信機能の実装の準備を進めていると明かしました。

本多氏は、U-NEXT社が配信事業のみならず、IP創出のための投資にも注力していることを訴えました。社内に小説、マンガ、縦スクロールコミックの編集部を立ち上げ、オリジナル作品の創出、さらにはテレビドラマへの展開までメディアミックスを推進していると説明。実際に『団地のふたり』『五十嵐夫妻は偽装他人』などの自社IPが、NHKやテレビ東京で映像化されている事例を挙げました。最後に、講演の締めくくりとして、「日本国内で、エンタメ離れや活字離れが課題とされるなか、これからも良質なコンテンツを提供し続けたいです。エンタテイメントやスポーツを通じて、ユーザーの探求心に応えるサービスを目指していきます」と会場に向けて決意を語りました。

※本展は業界関係者のための商談展です。一般の方のご入場はできません。