『国宝』と推し活:『歌舞伎』ファン若年化、『吉沢亮』を国民的推しに
公開日: 2025/09/02
映画『国宝』(6月6日公開)がロングランヒットを続けており、劇場公開13週目にして興行収入124億円を突破しました。既に邦画実写映画の歴代興行収入2位を記録していた『南極物語』(1983年)の110億円を超え、次は『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)が持つ歴代1位の173.5億円を更新するかが注目されています。
今回、映画『国宝』が長期にわたるヒットを続けていることから、作品そのものや映画の題材になった『歌舞伎/能楽』、そして主演の『吉沢亮』の推しファン層に変化があると考えました。そこで、劇場公開前から現在までの推しファン人数やデモグラの推移を見てみました。
『国宝』公開にあわせて、『吉沢亮』『歌舞伎』ともに「推しファン人数」増加
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上記は直近6カ月の『国宝』『吉沢亮』『歌舞伎/能楽』の「推しファン人数」推移です。映画『国宝』の6月6日の劇場公開のタイミングに合わせて、いずれも6月に「推しファン人数」が増加していることが分かります。『国宝』に絞って推移をみると、公開前の5月は吉田修一による原作小説の推しファンが0.4万人いましたが、公開後に映画ファンも取り込み6.6万人を記録。7月、8月も躍進を続け、直近8月の調査では18.8万人に達しました。
『吉沢亮』も公開前の5月時点で1.8万人だった「推しファン人数」が、7月には6.4万人に増加。『歌舞伎/能楽』も同様に、公開前の1.1万人から直近8月には3.8万人にまで増えています。いずれも映画『国宝』のヒットを受けて推しファンを増やしたと考えられますが、それぞれどういった層が推しファンとなったのか、個別に年代構成の変化をみていきます。
若年層の推しファンが『国宝』のヒットを後押し
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まず最初に、『国宝』の「推しファン年代構成比」の推移をみてみます。公開月となる6月は50代、60代で全体の8割弱を占めており、40代以下の構成比は23%でした。しかし、40代以下の構成比はその後増加し、7月には35%、直近8月は44%にまで伸長しました。特に、20代以下の若年層が大きく伸びていることが分かります。
『国宝』効果、『歌舞伎/能楽』若年層増加、『吉沢亮』40代以上増加
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続いて、映画の題材となった『歌舞伎/能楽』の「推しファン年代構成比」の推移を確認します。映画公開前の3月から5月は変動はあるものの、50代、60代が大半を占める構成比となっていました。それが公開後の構成比をみると、『国宝』の若年層増加に沿うように20代以下が、6月に6%、7月に9%、8月に17%と次第に高まっていることが分かります。依然、50代以上が半数以上を占めていますが、映画『国宝』を通じて若年層の『歌舞伎/能楽』への関心が高まり、推しファンが増えていると推察されます。
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最後に、主演を務めた『吉沢亮』の「推しファン年代構成比」の推移をみてみます。映画公開前の3月から5月の推しファンの多くは、30代以下の若年層が中心となり、40代以上は少なめ。5月時点の40代以上の構成比は21%となりました。しかし、公開月の6月になると、30代以下が35%、40代以上が65%と構成比が大きく変化しました。その後、『国宝』の推しファンが公開直後の年配層寄りから若年に広がった動きに呼応して、7~8月は30代以下の推しファン構成比が増加。40代以上の構成比は8月にやや減少して43%になりましたが、それでも公開前に比べて明らかに増え、推しファン層の拡大が見て取れます。
前述の「推しファン人数」の伸びと「推しファン年代構成比」の変化を見るに、映画『国宝』大ヒットの影響を受け、映画の題材となった『歌舞伎/能楽』と主演の『吉沢亮』それぞれに今までにいなかった新しいファン層が定着しつつあると言えそうです。
『国宝』のヒットは、単に歴史的な興行収入を叩き出したというだけでなく、映画が新しいファンを生み出す力を改めて示したと考えられます。『吉沢亮』ファンが映画をきっかけに歌舞伎に興味を持ち、逆に歌舞伎を入口に『国宝』を観た層が、映画を通じて吉沢亮の魅力に気づく。この相乗効果こそが、ロングランヒットの鍵だったのかもしれません。この成功事例は、俳優と文化、それぞれのファン層を繋ぐ架け橋として、今後のエンタメ業界に新たなヒントを与えてくれるのではないでしょうか。
毎月約3万人、全国に住む15~69歳の男女に対して、メディアを横断し「いま、推しているエンタメブランド」に関する大規模調査を実施。エンタメブランドの価値をメディア横断でとらえ、<推しファン人数><支出金額><接触日数>を集計しているほか、これらの値から総合指標<推しエンタメブランド価値(単位:GEM)>を算出しています
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