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メディアが持つデータを活用した精緻なターゲティング~Pandoraの手法
公開日: 2018/04/19

デジタルマーケティングによる映画鑑賞者ターゲティング最前線(3)
massive2018

 

これまで以上に精緻なターゲティングが求められているデジタルマーケティング業界。成功へと導くターゲティングのカスタマイズとそのリーチ規模のバランスとは? そして求められる対応速度とは? 2018年春、米ロサンゼルスで開催された映像業界関係者向けのカンファレンス”MASSIVE The Entertainment Marketing Summit”で行われたパネルディスカッション“Masters of Targeting and Holding the Audience”にて答えを探ります。

 

※スピーカーやセッションの概要は、連載第1回「映画ヒット×デジタルマーケティング成功事例~『ジュマンジ』」をご覧ください。

 

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自社プラットフォームユーザーを2,000個ものセグメントに分けて精緻なターゲティングを実現したパンドラ・メディア。背景にはコネクテッドホーム分野の急激な成長があった。いつ、どのような状況で、誰が、何を……。連載第3回はデジタルマーケティングに求められているデバイスやプラットフォームをまたぐデータの重要性について迫ります。
※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2018年3月)時点の情報です

パンドラ・メディア(Pandora Media)
音楽ストリーミングサービス「Pandora」で知られる企業。「Pandora」は、一般的な音楽ストリーミングサービスとは異なり、リスナーの趣向に合わせて選曲してくれるレコメンデーションサービスが特徴。

必要とされる媒体を超えたデータの結合

 

スザンヌ・クンケル(モデレーター)
マーケターはどのようにターゲティングを行うものなのでしょうか? SNS上で使用される複雑なツールやグーグル、動画配信向けコンテンツなどが台頭してきたことで、適切なターゲットにリーチしやすくなったのでしょうか? データ分析や解析、ターゲティングというものに特化した独自のプラットフォームを持つ、ティーボのウォルトに伺いたいと思います。

ウォルト・ホーストマン(ティーボ)
視聴者がデバイスやプラットフォームごとに分散している今日では、ブランドに携わる者、特にコンテンツマーケターはこの件を避けては通れません。営業チームに同行してマーケターやTVのコンテンツプロバイダーと話をする際、宣伝に関連するすべての媒体をまたぐ視聴者の動向をいかにして把握するかが主要な話題となります。

自社のオーディエンスの全体像はどのようなもので、従来のTVやOTT、モバイルアプリなどで何を視聴しているのか? 広告主は、オーディションの属性を必要としているのはもちろん、すべての媒体を横断して展開するプランやオーディエンスへのリーチ方法も切望しているのです。

従来は配信プラットフォームごとに予算が振り分けられていたため、媒体を超えた連携や調整が難しい状態にありました。しかし、幸いにもこのような状況は改善しつつあります。TVを始めとする様々な媒体が一元化し始めているのです。この状況を引き起こした根底にあるのは、媒体を超えたデータ、つまりTVデータ、OTTデータ、モバイルデータの結合が必要とされていたからです。

これに関しては耳寄りな情報があります。2週間ほど前にイベントがあったのですが、そこでは媒体を超えた様々なデータの結合を目指して協力しあっていたのです。これこそ我々がまさに必要としている情報の土台となり、分散した視聴者をまとめあげることになるでしょう。

OTT(Over The Top)
ISPや通信事業者以外が提供するインターネット回線を使った動画配信やメッセージ交換、音声通話、SNSなどのサービス、もしくはそれらを行う事業者。YouTubeやLINE、Twitter、Facebookなどがこれに当てはまる。

 

マルチメディア

 

2,000個もの顧客セグメントが可能にした精緻なターゲティング

 

スザンヌ・クンケル(モデレーター)
一元化と言えば、パンドラが“コネクテッドホーム”に関してどのように対応されているかも知りたいところです。

コネクテッドホーム(Connected Home)
家庭内の様々な機器を一括して制御するホームオートメーションに、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)技術を取り入れた住宅、もしくはそのシステム。テレビやゲーム機をはじめ、洗濯機、冷蔵庫といった白物家電、防犯設備など、あらゆる機器がインターネットに接続されており、スマートフォンなどの制御端末からの操作を可能にする。近年、制御端末として音声認識を利用したスマートスピーカー「Google Home」や「Amazon Echo」などが台頭してきている。

エイミー・ラピック(パンドラ・メディア)
多くの方がご存知のように、コネクテッドホーム分野はここ2年ほどで急激な成長を遂げています。そして、音楽ストリーミングサービスである「Pandora」はこの分野への参入に成功しているといえるでしょう。過去10年以上にわたって聴取データを収集するなかで、今日までに2,000を超えるコネクテッドホーム端末に搭載されており、休日には1,400万人の方にご利用いただいています。

コネクテッドホームの恩恵により、パンドラが収集している聴取内容だけでなく、いつ、どのような状況で聴いていたのかに関するデータも活用できるようになりました。その結果、オーディエンスを2,000ものセグメントに分けることが可能となり、より精緻にターゲティングできるようになったのです。これにより、コネクテッドホーム端末に対しては、今までになかったレベルのパーソナライズ化が可能となりました。

ブランドにとって、これはどのような意味を持つのでしょうか。これは、ブランドのアイデンティティをビジュアル面だけでなく、サウンド面からも考えることが極めて重要になってくるということを意味しています。パンドラはこの分野の第一人者です。広告主向けに最適化したクリエイティブを提供するとともに、サウンド・アイデンティティを初めて打ち出すブランドのサポートを行うことで、リスナーから大きな反響を引き出すことに成功しています。

 

<「(4)映画館来場促進のための精緻なターゲティング~ハリウッドの手法」に続く>