AdVOD(広告運営動画配信)の可能性
公開日: 2017/03/16
2016年のAFM(American Film Market)において開催されたカンファレンスでは、”Future of Video On Demand”というテーマのもと、映像コンテンツのプロデューサーや配給会社、配信プラットフォームのキープレイヤーたちが、どこで利益が出ているのか、どのように稼いでいるのか。それぞれの立場と現状をもとに議論したものまとめた第六回目。
モデレーター:
ブルース・アイゼン( Digital Advisors 代表 )
パネリスト:
スティーブ・ニッカーソン( Broad Green Pictures /ホーム・エンタテインメント部門代表 )
エリック・オペカ( Cinedigm /デジタル・ネットワーク部門EVP )
へニー・パテル( AT&T Entertainment Group /ビデオ・マーケティング部門VP )
メイヤー・シュワルシュタイン( Brainstorm Media代表 )
AdVOD(広告運営動画配信)の可能性について
ブルース( モデレーター ):
AdVODについては、いかがですか? 成長分野なのか? 儲けは出るのか? 何が起きているのか?
スティーブ( Broad Green Pictures /ホーム・エンタテインメント部門代表 ):
私が関わっているすべてのOTTチャンネルは今、ハイブリッド・モデルの下で動いており、約4分の1はAdVOD(広告運営動画配信)パターンでコンテンツ展開をしています。私の見解では、AdVODでコンテンツをマネタイズするのは、とても大変です。その他のパターンで得られる収入と同じ額を稼ぐためには、膨大な視聴数が必要となるからです。
AdVODにも、大きなビジネス・チャンスはあると思います。ただ、AdVODの数はそれほど多くなく、(アメリカではAdVODモデルも採用する)Huluもそのモデルを脱出しつつあります。Walmartが展開するTVOD(レンタル型動画配信)-EST(動画配信販売)プラットフォームの「Vudu」は、最近広告を追加しましたが、iTunesのようなもので、新しいタイトルではなく、昔の有名な映画において広告を流しているのです。
エリック( Cinedigm /デジタル・ネットワーク部門EVP ):
そうですね、AdVODサービスを成功させるには、毎月数億単位の動画再生数が必要で、そのレベルに達するためには、広告なしで見られる数多くの動画と一線を画す、とてつもなく特別なコンテンツでなければならないのです。ライバルは、YouTubeやFacebookです。
個人的には、ユーザー獲得のツールとしてAdVODを活用することには大賛成です。「Spotify(音楽ストリーミングサービス)」がいい例です。AdVODサービスを成功させるには、長い年月が必要なので、今後、そのパターンがどんどん増えていくとは思いません。そして、権利元も、多くの収入が見込めない限り、AdVODにコンテンツを提供し続けることはしないでしょう。
AdVODよりもSVOD(定額制動画配信)のほうが、大分多くの収入を見込めるのです。ただAdVODは、人々にコンテンツを紹介するのにはいいツールです。ただ、マス・ユーザーを広告に慣れさせることも必要だと思いますが、ニッチ・ユーザーには押し付けない方がいいと思います。
メイヤー( Brainstorm Media代表 ):
AdVODの定義もあいまいだと思います。Lifetime(※)やAMC(※)をAdVODと言うこともできますよね? テレビの在り方が多様化しているということでしょう。
(※アメリカのケーブル放送のチャンネル)
エリック:
イエスであり、ノーでもあります。イエスは言葉どおり。ノーの理由は、「(LifetimeやAMCでコンテンツを見るには)まず、最初に有料会員にならなければならない」からです。
メイヤー:
今後、Lifetimeなどの放送局が衰退し、先述のVuduなどが取って代わるかもしれません。ただ、それらのサービスは、新しい市場を作り上げているわけではないのです。「有料でコンテンツを見る」市場はすでに過去25年間、米国の95%の家庭に存在しているのです。
では、数十万世帯がケーブル契約を解約したとして、オンライン上のAdVODが活性化することになるのでしょうか?いろいろな疑問があると思いますが、私たちはまだ事業展開の初期段階で、どの商品もAdVODに乗せるところまでは行っていませんし、AdVODを始めたとしても利益を出すには1年以上かかるでしょう。
<(7)動画配信ビジネスによってコンテンツの価値は下がっているのか? に続く>
VOD(動画配信ビジネス)の未来~アメリカの現状~ レポート
- (1) どのVOD提供形態が儲かるのか?
- (2) 「独占配信」戦略の効果
- (3) VODビジネスで勝つ方法 - 「衝動買い」を促す「発見」
- (4) VODビジネスにおける著作権侵害・海賊版の問題点は
- (5) EST(動画配信販売)の可能性
- (6) AdVOD(広告運営動画配信)の可能性
- (7) 動画配信ビジネスによってコンテンツの価値は下がっているのか?
- (8) 新たなウィンドウ戦略と劇場公開戦略
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