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『ドラゴンボール超 ビルス』『ONE PIECE』『ゴジラ-0.0』、日本ビッグIPのパネル詳報~世界最速上映、新章の英語吹替、制作陣が語る舞台裏
公開日: 2026/11/06

特集:New York Comic Con 2026 第2回

世界最大級のポップカルチャーのコンベンション「ニューヨーク・コミコン2026(New York Comic Con 2026、以下NYCC)」が10月8日〜11日、米ジェイコブ・ジャビッツ・コンベンションセンターで開催されました。特集第2回は、筆者が実際に参加した日本IPのパネルのうち、『ドラゴンボール超 ビルス』『ONE PIECE』『ゴジラ-0.0』の3つを詳しく紹介します。日本を代表する各IPが北米のファンに何を届け、どう受け止められたのかを見ていきます。
※本記事で触れられている内容は2026年10月時点の情報です

《目次》

 

 

『ドラゴンボール超 ビルス』:3000人が詰めかけたEmpire Stageで、日本放送3日前に第1話を「世界最速上映」

現地時間で初日木曜日の10月8日正午、Empire Stageで「ドラゴンボール超(スーパー) ビルス SPECIAL PANEL」が開かれました。プレスリリースによると、会場には3,000人のファンが詰めかけました。司会は英語版で声優を務めたブルマ役のモニカ・リアル氏が務め、同じくビルス役のジェイソン・ダグラス氏とウイス役のイアン・シンクレア氏が登壇。パネルのメインは、アニメ『ドラゴンボール超 ビルス』第1話を日本での放送開始(10月11日)の3日前に上映する「世界最速上映」でした。

左からブルマ役のモニカ・リアル氏、ビルス役のジェイソン・ダグラス氏、ウイス役のイアン・シンクレア氏

 

『ドラゴンボール超 ビルス』については、『ドラゴンボール超』を鳥山明氏の原作に基づいて新規・描き直しカットを大量に追加し、物語を再構成した「エンハンスド(強化)版」だと説明されました。

一方で、すでに新作エピソード『ドラゴンボール超 銀河パトロール』の制作も発表されています。2017〜2018年放送の『ドラゴンボール超』宇宙サバイバル編の続きを描く作品で、漫画では「銀河パトロール囚人編」にあたり、悟空とベジータが「星喰いのモロ」と戦う物語です。このエピソードは、2026年1月に幕張メッセで開かれた「ドラゴンボール ゲンキダマツリ」で発表されました。

会場では、孫悟空の声を務める野沢雅子氏と、ビルス役の山寺宏一氏のビデオメッセージが流れ、野沢氏は「悟空たちはどんどん強くなっていくし、鳥山先生が作ったストーリーは本当に魅力的」と作品の魅力を訴えました。山寺氏はタイトルにもなっているビルスの「活躍やかっこよさ、怖さ、強さ」をぜひ見てほしいと呼びかけました。

第1話の上映前には、野沢氏のビデオメッセージの音頭で、会場全体が「かめはめ波」を放ちました。

展示ホールのドラゴンボールブースには、ビルスとウイスの立像、『ドラゴンボールゼノバース3』の試遊台、『ドラゴンボールスーパーカードゲーム フュージョンワールド』の体験コーナーが並び、会場限定フィギュア「S.H.Figuarts 超サイヤ人4孫悟空 -Exclusive Edition-」も販売されました。

会場外でも、ニューヨークとロサンゼルスでラッピングバスが走り、地下鉄・バス停でキービジュアルを掲出。全米30カ所のショッピングモールでは『ドラゴンボール超 ビルス』開幕のビジュアルやトレーラーを掲出し、都市規模のキャンペーンが組まれていました。

 

『ONE PIECE』:東映アニメーション×Crunchyroll、エルバフ編の英語吹替開始と米国初の公式ストアを改めて紹介

翌日金曜日の10月9日12時45分、同じEmpire Stageで東映アニメーションとCrunchyrollが共催する『ONE PIECE』のパネルが行われました。パネルの前にコスプレイベントがあり、同作のキャラクターに扮したたくさんのコスプレーヤーを見かけました。そのままパネルに来た人も多かった様子です。

司会は英語吹替版で声優を務めたブルック役のイアン・シンクレア氏が務め、同じくルフィ役のコリーン・クリンケンビアード氏と、エルバフ編の新キャラクターであるロキ役のマシュー・デイヴィッド・ラッド氏が登壇しました。パネルは、10月20日に迫ったTVアニメ『ONE PIECE』エルバフ編の英語吹替版のCrunchyroll配信開始に先駆けたもので、8月に公表された配信スケジュールが改めて紹介されました。

スピンオフ小説をアニメ化した『ONE PIECE HEROINES』の英語吹替は10月13日の配信開始と紹介。エルバフ編の英語吹替は10月20日に配信を開始し、その後は毎週新たなエピソードを追加予定です。あわせて、7月に東映アニメーションが発表していた米国初の公式ストア「ONE PIECE MUGIWARA STORE Los Angeles」について、2026年秋にロサンゼルスのWestfield Century Cityで開店する予定だと紹介されました(取材後の10月20日、開店日は現地時間11月6日と正式に発表)。

パネルでは英語吹替版キャストが日本の原作と声優への敬意を繰り返し述べました。

上述したコスプレイベントに加え、展示ホールでも『ONE PIECE』は大きな存在感を示していました。特に、パネルでも紹介されたエルバフ編のロキの巨大展示では、多くの人が写真を撮っていました。また、2027年2月にNetflixで配信される新作アニメ『THE ONE PIECE』のブース展開や、カードゲーム、フィギュアの販売もありました。

 

『ゴジラ-0.0』:アカデミー賞視覚効果賞を受賞した野島達司氏と音響チームが制作手法を公開

翌日土曜日の10月10日12時30分、Room 405(約800席)で『ゴジラ-0.0』のパネルが開かれました。前回紹介した通り、GEM Partnersの「グローバルエンタメファンダム調査」によると、『ゴジラ』は米国におけるファン率の順位で『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』を上回っています。同パネル開始前にはRoom 405の収容人数を大きく超える列ができ、入場できないファンも出るほどでした。

パネルに登壇したのはプロデューサーの岸田一晃氏、『ゴジラ-1.0』でアカデミー賞視覚効果賞を受賞したVFXアーティストの野島達司氏、音響効果の井上奈津子氏、サウンドミキサーの竹内久史氏で、司会は俳優のセス・グリーン氏が務めました。また、山崎貴監督からはビデオメッセージが寄せられ、翌日のオンライン公開に先立って最終予告編が会場で初めて上映されました。

野島氏は前作との制作条件の違いを具体的な数字で説明しました。前作『ゴジラ-1.0』では海や飛行機のシーンに実写素材があり、そこにCGを合成できましたが、『ゴジラ-0.0』の水上機のシーンは実写素材がなく、全編をフルCGで制作する必要があったといいます。このシーンでは20億粒のパーティクルで海の水しぶきを表現しており、前作の白波のシーンの2億粒から10倍に増えていることも語られました。更に、IMAX 1.43:1への対応で画面は縦に1.67倍に広がりました。

制作チームでは22〜23歳の若手にカットやシーン全体を任せることもあり、山崎監督が年齢によるヒエラルキーを設けずに協業している、という制作体制も紹介されました。

音響チームの2人は、デジタルで音を作れる時代にあえて実空間で録音する、という方針を説明しました。ゴジラの咆哮の残響音を、『ゴジラ-1.0』では野球場で収録しましたが、怪獣が2体になる今作ではより広い空間が必要になるため、ダムを選んだといいます。各チームが異なるマイクを持ってダムの各所に配置され、巨大スピーカーで咆哮を実空間に放ち、その反響を収録しました。キングギドラの翼の音は、さまざまな素材を試した結果、ゴム製の漁師用スーツとエアダクトが最適だったとのことです。パネル中、繰り返し強調されたのは「静寂と大音量のコントラスト」で、常に大音量にするのではなく静かな場面を設けることで、咆哮の印象を強めていると明かしました。

こうした映画制作に携わった、技術者による生の制作秘話に聴衆は聞き入り、何度も拍手や歓声が上がりました。会場内でイベント開始を待つファンの中には、『シン・ゴジラ』続編制作のうわさを熱心に語り合うファンや、一番好きなゴジラ映画に『シン・ゴジラ』を挙げるアメリカ人ファンの姿もありました。多くの人が会場に入れなかったほどの人気ぶりは、アメリカのポップカルチャーシーンにおける深いゴジラ愛を感じさせる情景でした。

NYCC会場入り口前の、エナジードリンクとのコラボオブジェ。カフェイン300mgの表示もみられる

 

 

3つのパネルに見る、北米ファンへの3つの届け方

3つのパネルでは、それぞれ異なる形で北米ファンに作品が届けられていました。『ドラゴンボール超 ビルス』では日本放送前の第1話上映という「先行」、『ONE PIECE』では英語吹替版の配信開始と店舗展開という「北米向けの入口」の紹介、『ゴジラ-0.0』では制作陣による舞台裏の解説という「ここでしか聞けない話」です。

それを受け止めたのが、総合ポップカルチャーイベントであるNYCCに集まった観客です。『ドラゴンボール』『ONE PIECE』にそれぞれ約3,000人のファンが詰めかけ、『ゴジラ』には800席の会場に入りきらない列ができるという状況でした。米国のポップカルチャーにおける日本IPの存在感の大きさを示す光景だったといえます。

最終回となる第3回では、日本IPの北米展開の中心となっているCrunchyrollについて、NYCCでの発表内容をもとに、同社のコンテンツ戦略を紹介します。

取材・文:梅津 文

特集:New York Comic Con 2026