記事

『ベイブレード』『たまごっち』――“懐かしい”だけでない、大人ファンの心を掴む方法とは~東京おもちゃショー2026 主催者企画 ビジネスセミナーレポート
公開日: 2026/10/27

日本玩具協会が主催する「TOKYOおもちゃショー2026」が8月27日〜8月30日の4日間、東京ビッグサイトにて開催されました。同協会は、最新のおもちゃトレンドとして、サステナビリティや投資といった「社会トレンドを反映したおもちゃ」、昭和キッズや平成キッズの懐かしさと令和キッズの新鮮味を刺激する「ノスタルジアトイ」、令和の大人たちを夢中にする「キダルトトイ」など、年齢にかかわらず誰もが楽しめるおもちゃが挙がりました。
本稿では「ノスタルジアトイ」のような、大人ファンの心を掴むおもちゃが、どのような要素から人気を集めているのかを掘り下げます。同イベントやセミナー内容のレポートとともに、さまざまな「エンタメブランド※1」ごとに「推しファン(=推しているファン)」の分析ができる、「推しエンタメブランドスコープ」のデータからも、商品ごとのポイントを整理していきます。

※1:作品やコンテンツを、映像、マンガ・書籍、映画、ゲーム、音楽、ラジオなど各メディアを横断してひとつの「ブランド」として捉えたもの。対象範囲は作品だけでなく、キャラクター、タレント、サービスなども含む
※2:本記事で触れられている内容は2026年10月時点の情報です

《目次》

 

日本玩具協会が東京おもちゃショーに先駆けて発表している「⽇本おもちゃ⼤賞2026」。前年の国内玩具市場をけん引し、売り場に大きく貢献した玩具を賞する「ヒット・セールス賞」を、2025年7月発売の「Tamagotchi Paradise(たまごっちパラダイス)」が受賞しました。

©BANDAI

1996年の発売から今年で30周年を迎え、今なお国内外で愛されつづける『たまごっち』。初日8月27日の「商談見本市(ビジネスデー)」に開催されたセミナー「なぜ今、IPが注目されているのか」では、『たまごっち』の発売元であるバンダイ・BANDAI SPIRITS執行役員 メディア部ゼネラルマネージャーの佐野純子氏が登壇し、そのヒットの裏側を語りました。

 

たまごっち:レトロブームに対応しながら、遊び方を更新し続ける

バンダイ・BANDAI SPIRITS執行役員の佐野氏は、『たまごっち』がヒットした起点を「平成女児ブーム・懐かし需要」だと述べました。「大人のファンがまず本体を手に取って周辺商品を買い、自ら発信したことがブームの背景にあると思っています」。同日に発表された新モデル「Tamagotchi ring (たまごっちリング)」は、Y2Kリバイバルを意識した光沢色のデバイスで、こうした大人ファン需要への意識がうかがえます。

バンダイ・BANDAI SPIRITS執行役員 佐野純子氏(左)、「Tamagotchi ring」の着用イメージ(右)©BANDAI
※3:2027年2月・4月発送分の予約受付は終了(26年10月時点)

こうしたファンの動きはデータ上でどのように表れているのでしょうか。「推しエンタメブランドスコープ」で『たまごっち』の推しファン人数を見ると、2025年3月ごろを境に、「平成キッズ」世代の女性20代・30代を中心に増加しています。実際に、同月ごろから「Tamagotchi Paradise」や新作ゲームの発表・発売をはじめ、30周年を記念した「大たまごっち展」の開催など、ファンとの接触機会が継続していました。

また、推しファンによる『たまごっち』へのイメージを2024年から2025年以降で比較すると、「懐かしい」の増加幅が最も多くなりました。上記で挙げたさまざまな取り組みを、ファンは「懐かしい」という気持ちとともに需要しているようです。

佐野氏はファンとのコミュニケーションにおいて、「話題にならない冬の時代もありました。それでも常に『たまごっち』がある状態を作り続けたことで、世代が積み上がりました」と振り返りました。発売当初のボールチェーン型デバイスから始まった「たまごっち」は赤外線通信やカラー液晶、Wi-Fi搭載など、時代に合わせて更新を続けています。

加えて、IPやブランドを運営していく上で重要となるポイントとして、佐野氏は「ゲームセンターやアミューズメント施設など、売り場での出会いがファン化の入口です。販売店はタッチポイントであり宣伝ツールでもあります」と語りました。「飲食チェーンやカフェなど、日常接点でのライセンス展開がファンダム形成につながっています」とも続けました。

『たまごっち』の国内外ユーザーに向けたリアルイベント開催についても触れ、国内では原宿の常設店舗開設や、全国を巡回する30周年記念イベント、海外では、米国で各都市のモールを回るポップアップやアジア圏、欧米圏でのイベントなどで接点を広げていることが紹介されました。

「30周年記念 大たまごっち展」では「自分が『たまごっち』になる」というインパクトある体験から展示が始まる(左)。
米国では、各都市のモールを回るポップアップイベントを開催(右)/©BANDAI
 

ベイブレード:ブランドを再定義し、大人ファンを体験で巻き込む

同セミナーには、タカラトミー ベイブレード事業室 室長の山﨑正彦氏も登壇しました。同社が展開する対戦型ホビー『ベイブレード』は1999年に誕生し、27年の歴史あるシリーズです。

山﨑氏は同ブランドのユーザー構成を「子どもが約7割、大人が約3割」と話します。大人ファンの多くは子どもの頃に遊んだ人たちですが、山﨑氏は、そこのみに頼る難しさを語りました。「昔のイメージのまま出せば、思い出は呼び起こせると思います。しかし、時間とお金を費やして、ブランドを体験する、買う行動に移すのは難しいと思っています」。大きなヒットに結びつけるには「未来視点のアップデートが必要になる」と続けました。

タカラトミー ベイブレード事業室 室長 山﨑 正彦氏

そのアップデートの1つが、2023年7月に行われた「BEYBLADE X(ベイブレード エックス)」へのリブランディングです。従来の「おもちゃ」ではなく、「GEAR SPORTS(ギアスポーツ)」として新たに打ち出しました。セミナーでは、「スポーツとして世界を目指す」という文脈から、『FCバルセロナ』や『サッカー日本代表』ともコラボするなど、既存の枠組みを超えた取り組みが紹介されました。

実際に「推しエンタメブランドスコープ」で見ても、2023年6月以前は推しファンの出現が少なかったものの※4、リブランディング以降は推しファンが継続して確認できるようになっていました。直近1年間の年代構成比では30代の割合が最も高く、当時『ベイブレード』に熱中していた世代にも届いていることがうかがえます。
※4:アンケート対象が15-69歳対象のため、14歳未満の子どもの推しファンは調査範囲外

「BEYBLADE X」では、FCバルセロナ(左上)やサッカー日本代表Ver.(右上)、
今年で放送開始から30周年となる「ウルトラマンティガ」(下)をモチーフにしたベイブレードなど、企業・ジャンルの枠組みを超えたコラボに意欲的に取り組んでいる。
/© FC BARCELONA/©Japan Football Association/©TSUBURAYA PRODUCTIONS/©Homura Kawamoto, Hikaru Muno, Posuka Demizu, BBXProject © TOMY

2026年8月には、『ベイブレード』初の企業対抗戦を開いており、20~30代を中心に64組織が集まったと紹介。山﨑氏は、「『ベイブレード』をきっかけに、人脈形成やチームビルディングに役立ててほしい」と語りました。こうしたイベントは体験会から大規模大会まで幅広く盛んであり、「国内だけでも年1万回以上開かれている」と話しました。

加えてIPの育成にあたって、山﨑氏はフィジカルな体験を重要視しました。「デジタルプロモーションが発達している今、逆に手触りや対面でのコミュニケーションといったフィジカルな部分が際立っていると思っています」。ファン層拡大について「1人では遊べないという『ベイブレード』の特徴が、ファンダムやコミュニティ形成に役立っているのではないか」とも続けました。

2026年8月に開催された企業対抗戦(左)。
2025年10月に東京タワーで開かれた世界大会「BEYBLADE X WORLD CHAMPIONSHIP 2025」(右)

*

『たまごっち』『ベイブレード』のどちらも、発売から20年以上の歴史を持ち、当時の昭和キッズ・平成キッズといった大人ファンを抱えています。その上で両社は「懐かしい」だけに頼らない取り組みを行っていました。

バンダイ・BANDAI SPIRITSの佐野氏は、話題にならない時期も「常に『たまごっち』がある状態を作り続けた」ことで、世代が積み上がったと振り返りました。タカラトミーの山﨑氏も、昔のイメージのままでは購買につながりにくく、「未来視点のアップデートが必要になる」と語っています。2社からは、日常接点やフィジカルでの体験を組み込むことで、ファンにより深くアプローチする方法も紹介されました。

以上の事例から、大人世代を懐かしさで呼び戻した次のファンに対して、各ブランドはそれぞれのファン層に合わせてアプローチしていることがうかがえます。

出典:「推しエンタメブランドスコープ」
毎月約3万人、全国に住む15~69歳の男女に対して、メディアを横断し「いま、推しているエンタメブランド」に関する大規模調査を実施。エンタメブランドの価値をメディア横断でとらえ、<推しファン人数><支出金額><接触日数>を集計しているほか、これらの値から総合指標<推しエンタメブランド価値(単位:GEM)>を算出しています