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ゲーム業界に参入相次ぐエンタメ企業、講談社・集英社ゲームズ・パルコ・東映・サンリオ各社の経緯と強みを探る
公開日: 2026/10/09

2026年9月に開催された「東京ゲームショウ2026」。ドイツのgamescomに並び、世界最大級のゲーム展示会である同イベントは今年で30周年を迎えました。出展者数は過去最大の1,138社、なかでも国内からの出展が増加しており、企業からはライセンサーではなくパブリッシャーとして異業種からゲーム業界に参入する動きにも注目が集まりました。
こうした企業はそれぞれどのような経緯で参入し、何を強みにしているのでしょうか。主催者セッション「異業種からの挑戦~サンリオ、PARCO、東映が語るゲームパブリッシング事業の狙い」など、各セッションや出展ブースの内容を元に、講談社、集英社ゲームズ、パルコ、東映、サンリオの5社の取り組みを3つの切り口から紹介していきます。

※本記事で触れられている内容は2026年9月時点の情報です

《目次》

 

 

「編集者」の発想で個人クリエイターに伴走する講談社・集英社ゲームズ

本記事で取り上げる5社の中で、他企業に先駆けて参入したのが講談社です。2020年9月にゲーム事業「講談社ゲームラボ」を立ち上げたその背景には、個人制作ゲーム(インディーゲーム)の盛り上がりがありました。

講談社 第四事業本部 クリエイターズラボ ゲームラボ総合チーフの片山裕貴氏は、9月17日のビジネスデイのセッション「世界へ羽ばたく日本インディーゲーム最前線」において、参入当初の状況を語りました。「2017年ごろから個人でもSteamでゲームを出せるようになり、個人クリエイターの活躍する場を大きく広げたと思っています。『UNDERTALE』など海外の個人開発作品に加え、日本でもさまざまなヒット作が出てくるようになりました」。

同社は、ゲーム業界に編集者という職能を持ち込みました。「これまで作家・漫画家・小説家の方々と関わってきましたが、ゲーム分野でも編集者が必要ではないかという考えから、講談社ゲームラボは始まりました」。当日の同社ブースでは、24作品もの個人・少人数チーム制作ゲームが出展されており、クリエイターとの伴走を積み重ねてきた姿勢が展示内容にも表れていました。

講談社 第四事業本部 クリエイターズラボ ゲームラボ総合チーフ 片山裕貴氏(登壇者右)

同じく出版事業を主力とする集英社は、2021年に同社がマンガ業界で長年培ってきた、新人クリエイターの才能を発掘・支援するノウハウを用いて個人や少人数チームのクリエイターを支援するプロジェクト「集英社ゲームクリエイターズ CAMP」を開始。その後、2022年2月に集英社ゲームズを設立しました。近年ではインディーゲーム開発チームの墓場文庫と共同で手掛けた『都市伝説解体センター』が、昨年の日本ゲーム大賞2025で優秀賞を受賞しています。

一方で、「原石の輝きを世界へ」をミッションとして掲げる同社は、国内クリエイター支援にとどまらず海外や大手の開発元とも連携する動きを見せています。今年の同社ブースの展示は、イギリスを拠点とするインディーゲームスタジオ「poncle」が開発する『呪術廻戦 RUMBLE: SURVIVATON』、国内でコンシューマーゲームやアーケードゲームを手掛ける「ヒストリア」とともに制作している『UN:Me』の2作品でした。

こうした同社の取り組みについて、PlayStationブースでの配信セッション「『ゲームビジネス、実際どうですか?』集英社ゲームズ・サンリオ・PARCO・東映が語る、ゲームづくりのリアル」に登壇した、集英社ゲームズ執行役員 事業推進本部 本部長の森 通治氏は以下のように発言しています。「『インディーを扱う会社』という印象を持たれる方も多いのですが、目指してきたのは規模にかかわらず面白い作品を届けるゲームパブリッシャーのブランドです」。

PlayStationブースでの配信セッション
「『ゲームビジネス、実際どうですか?』集英社ゲームズ・サンリオ・PARCO・東映が語る、ゲームづくりのリアル」
 

既存IPに頼らず、自社の選定力を強みとする東映・パルコ

集英社ゲームズがマンガ起点のIP『呪術廻戦』のゲームを出展する一方で、ゲームを起点としたIPの力に注目し、取り組みを進めているのが東映です。同社は、今年4月にゲーム事業ブランド「東映ゲームズ」を立ち上げました。同社はすでに多くのIPを保有していますが、東映ゲームズは、「ゲームを起点とした、世界を熱狂させる新しいIPの創出」を強くうたっています。

この理由について、セッション「異業種からの挑戦」に登壇した東映 上席執行役員 事業推進本部長 新規事業開発部長の吉元 央氏は、『仮面ライダー』『プリキュア』といった「自社グループブランドはターゲット層を限定してしまうため」と説明。「ゲーム事業では、東映の社名・ブランドを広く知ってもらう入口として使っていきたい」と語りました。

当日のブースでは、韓国のインディーゲーム開発チーム・ケンキツ団(Black Tangerine)による『KILLA』など、国内外クリエイター開発の3作品を展示。作品は国内外の見本市に直接出向いて選定しており、吉元氏は「映画の作品を決めるのに似ている」と述べています。現在は小規模開発のパブリッシャーから始めていますが、「第2段階、第3段階」の取り組みとして、ゲーム発の映像化や、東映の既存IPのゲーム化などの可能性にも触れました。

東映 上席執行役員 事業推進本部長 新規事業開発部長の吉元 央氏

一方、ゲームIPが持つパワーそのものに注目したのがパルコです。同社は2023年に中期経営計画の新規事業として、ゲーム事業の可能性を検証するR&Dチームを発足。以来、翌年にゲーム事業開発部として単独組織化、さらに翌25年8月にゲームレーベル「PARCO GAMES」を発足しました。

セッション「異業種からの挑戦」に登壇したパルコ ゲーム事業開発部 部長の西澤優一氏は、事業参入のきっかけの1つとして、2019年の渋谷PARCOのリニューアルを挙げました。同館には任天堂やカプコンの店舗が入っており、「ゲームやお客様、作品の持っているコンテンツのパワーを実感した」ことで、新規事業の検討の加速につながったと明かします。

西澤氏はゲーム市場の成長性に加え、ゲームがライフスタイルや社会に溶け込んでいるという実感があったと続けます。「ジャンルを飛び越え、クロスオーバーするような面白さを感じました。ここに、自分たちの商業施設・劇場・出版などの事業と掛け合わせられるのではないかと考えました」。PARCO GAMESは、ゲーム開発支援に広く携わる「パブリッシング」に加え、展覧会やポップアップ、謎解きゲームなどオフライン企画を担う「コンテンツプロデュース」の2事業で構成されています。

また、同氏によると、作品を探す手法は商業施設のテナント誘致(リーシング)と「結構似ている」といいます。同社にはもともと、これから流行しそうなブランドや担当者が好きなブランドに出店を打診する営業活動がありました。そこにエンタテインメント事業で培った目利き力を組み合わせ、ゲーム好きのスタッフや業界経験者を加えながら、トライアンドエラーで体制を磨いてきたと話しました。

同社ブースでは、26年8月のgamescom awardや東京ゲームショウの「SELECTED INDIE 80 Excellence Awards」でPlatinumを受賞した『Finding Polka』や、PARCO実店舗でのイマーシブイベント『盗薬次楽』など計4作品が展示されました。

パルコ ゲーム事業開発部 部長 西澤優一氏  

世界的キャラクターの力で、ミドルタイトルの採算を狙うサンリオ

ゲーム事業での新規IP創出を目的として参入する企業が多いなか、自社IPのグローバル展開を推し進めるにあたり、その手段としてゲームを選択したのが、サンリオです。同社は今年4月21日に自社ゲームブランド「Sanrio Games」を立ち上げました。

参入理由について、セッション「異業種からの挑戦」に登壇したサンリオの常務執行役員 デジタル事業本部 本部長の濵﨑皓介氏は、同社が「グローバルIPプラットフォーマー」を目指しているという長期ビジョンに基づいて紹介しました。グッズやテーマパークなど従来のリアル接点に加え、ゲームや映像などのデジタル領域でキャラクター接点を増やし、ファンを広げる取り組みの一環としてゲームブランドを始動したと語っています。

また、自社でパブリッシングを行う意義として「大規模な開発費を投じるAAAタイトルとインディーの間のミドルタイトルは、国内市場だけではペイしなくなっている」と指摘。その上で、「『サンリオ』のキャラクターは世界で認知もファンも多く、グローバルでまだ手を付けていないジャンルや新しいファン層に遊んでもらえれば、ミドルタイトルでも採算が成り立つのではないか」とその狙いを語りました。

サンリオ 常務執行役員 デジタル事業本部 本部長 濵﨑皓介氏

今後の展開として、サンリオショップでのグッズや、会員アプリのポイントをゲームと結びつけるなど既存事業と連携する可能性にも触れました。今後3年間で約10作品の発売を予定しており、ブースでは今秋以降に発売する2作品が展示されました。

 

自社の強みが生きる場所を見極め、ゲーム事業を育てる

東映、パルコ、サンリオの事業責任者が登壇したセッション「異業種からの挑戦」において、モデレーターを務めた日経Gaming編集長の平野亜矢氏は、参入各社の取り組みを「自分たちの仕事との共通点を見つけている」と評しています。同セッションの締めくくりには「異なる分野に参入していくことへのリスペクトと、自分たちがやってきたこととのバランスが、新しい事業を始めるときに大事」だとまとめました。

日経Gaming編集長 平野亜矢氏

参入企業がゲーム業界に期待するものはそれぞれ異なりますが、各社とも、これまで培ってきた自社の強みが生かせる場所に参入している点では共通しています。業界と自社でマッチする部分を見極めた上で参入することの重要性が、各社の発言からも見て取れました。