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20周年のNYCC 2026、25万人が来場――米国の総合ポップカルチャーにおける日本IPのプレゼンス
公開日: 2026/10/23

特集:New York Comic Con 2026 第1回

世界最大級のポップカルチャーのコンベンション「ニューヨーク・コミコン2026(New York Comic Con 2026、以下NYCC)」が、10月8日から11日にかけて米ジェイコブ・ジャビッツ・コンベンションセンターで開催されました。20周年の節目となった今年は、主催者発表によると来場者は25万人超(チケット販売数ベース)、出展した出版社・ブランド・小売は650社超。前日のRetailer Dayを含む公式スケジュールの掲載枠は1515件にのぼりました。現地の様子や注目のイベントについてレポートする本特集。第1回は、同イベントの全体像と、米国のポップカルチャー全体における日本IPの立ち位置について紹介します。
※本記事で触れられている内容は2026年10月時点の情報です

 

《目次》

 

 

25万人、650社、1515プログラム――20周年となるNYCCの規模

NYCCはイベント会社ReedPop(RXグループ)が2006年に始めたポップカルチャーのコンベンションで、初回はジャビッツ・センターの1ホールで3.3万人を集める規模から始まりました。主催者の会期終了後のプレスリリースによると、20周年を迎えた今年は4日間で25万人超が来場※し、ニューヨーク市観光局(NYC Tourism + Conventions)の試算による経済効果は約9100万ドル。来場者数は昨年と同じく25万人超で、ジャビッツ・センターの収容能力の上限に達する規模となっています。※ReedPopは来場者数を「チケット販売数ベース」(1枚のチケットにつき1人)で換算。4日通し券の購入者は1人として数えられる一方、1日券を複数日分購入した人は複数人として算出している。

木曜から日曜の4日間の会期に加え、開催前日には業界向けのRetailer Dayが行われました。会場は、出版社・メーカー・ディーラーのブースが並ぶ展示ホール、500人超の作家・イラストレーターがイラストやグッズを販売するアーティストアレイ、大小のパネル会場、そしてホール1EのTCG(トレーディングカードゲーム)エリアなどで構成されています。

公式スケジュールをもとに当社で集計したところ、前日のRetailer Dayを含むプログラムは1515件でした(10月7日:20件、8日:369件、9日:407件、10日:421件、11日:298件)。このうちサイン会・フォトセッションが約半分の762件を占め、企業や作品のパネルは319件、TCGやゲームの対戦・体験枠が274件でした。プログラムの構成で見ると、NYCCは「見る」だけでなく「買う・会う・遊ぶ」といったアクティビティの比重が高いイベントです。

 

Anime Expo・Anime NYCとの違い――「アニメファンの中」ではなく「ポップカルチャー全体の中」での人気

日本から見て比較対象になるのが、7月にロサンゼルスで開催されるAnime Expo(AX)と、NYCCと同じジャビッツ・センターで8月に開催されるAnime NYCです。いずれも日本のアニメ・マンガを中心に、ゲームや音楽などの関連文化も扱うコンベンションです。

NYCCとAX、Anime NYCの来場者数は数え方が異なりますが、性格の違いは明確です。AXとAnime NYCでは日本アニメ・IPは「主役」ですが、NYCCでは数あるジャンルの内の一つです。NYCC公式出展者リストの約600社のうち、カテゴリに「Anime/Manga」を掲げる出展者は1割強程度とみられます。

NYCCがAnime NYCの約2カ月後に同じ会場で開かれることを考えると、NYCCは「アニメ目的の来場者を再度集める場所」ではなく、「ポップカルチャー全体のファンの前に、日本IPを改めて披露する場所」だといえます。したがって、NYCCにおける日本IPの存在感は、「アニメファンの中の人気」ではなく、「米国のポップカルチャー全体の中での人気」を測る目安になります。

 

マーベル・DCが主役の会場で、3000席の最大会場を占めた日本IP

今年のNYCC全体の目玉は、米国メディアの報道を見るかぎりアメコミの2大出版社でした。『マーベル』はDisney+の新作『Zodiac』を初発表し、『X-Men '97』シーズン3の映像を披露したほか、『マーベル・ゾンビーズ』について2027~29年に特別編を展開する計画を発表しました。コミック部門では新編集長のスティーブン・ワッカー氏が、作品のストーリーを全5話完結に縛らず、物語に必要な形で連載を行う旨を発言。同社は今年26年7月、編集部門を27年7月までにニューヨークから西海岸(カリフォルニア州バーバンク)へ移すと発表しているなかで、ワッカー氏は「ニューヨークは今後もマーベル・コミックスの中心だ」と述べました。

加えてマーベルの発表では、KADOKAWAとの共同プロジェクト「MARVEL|KADOKAWA」の5作品の(tokitokoro氏による『スパイダーマン:シブヤ・クロス・ライン』ほか、『スパイダーグウェン』『ヴェノム』『デッドプール』『アイアンマン』)がKADOKAWAの「カドコミ」で連載開始すると伝えられました。マーベルキャラクターのコミカライズ出版は、26年9月末に集英社とウォルト・ディズニー・ジャパンによる契約が終了しており、「MARVEL|KADOKAWA」は国内での新たな形でのコミカライズ展開となります。

マーベルのパネルセッション(左)とブース(右)。パネルでは10月14日Disney+で配信開始の『ヴィジョンクエスト』に先駆け、キャスト陣とともに第1話のサプライズ上映を行った。

『DC』では、ヒーローの設定を一新した「アブソリュート・ユニバース」の新シリーズ「Absolute Justice」を27年4月から開始すると発表。同社パネルで「最大の発表」と報じられました。

DCブース内の物販コーナー「DC Shop」

 

その一方で、最大の会場であるEmpire Stage(約3000席)のプログラムを見ると、木曜に『ドラゴンボール超 ビルス』、金曜に『ONE PIECE』、土曜に『ブラッククローバー』『NARUTO』、日曜に『BLACK TORCH』『東京リベンジャーズ』と、日本IPが連日、看板枠に入っていました。『ゴジラ-0.0』は約800席の会場Room 405でしたが、開始前にはキャパシティをはるかに超える列ができ、入場できないファンも出るほどでした。

Room 405の『ゴジラ-0.0』パネルに並ぶファンの列

 

実際に、GEM Partnersの「グローバルエンタメファンダム調査」で、米国でファンが多いIPやスタジオをみると、『ゴジラ』(25位)は『アイアンマン』(23位)や『X-MEN』(26位)とも並ぶ順位で、100位以内には『ドラゴンボール』(56位)、『NARUTO/BORUTO』(92位)、『ONE PIECE』(96位)も入りました。『ゴジラ』や『ドラゴンボール』をはじめとする日本のIPが、米国で人気のIPと同じ土俵で支持を集めていることが見て取れます。

 

 

4日間で30超の日本IP・日本企業パネル――日本に先駆けた発表も相次ぐ

公式スケジュールから、日本IPまたは日本企業が主催・登壇したパネル・上映を抜き出すと、サイン会やTCG対戦、コスプレ集会を除いても4日間で30件以上ありました。

このうち、日本での発表や放送に先駆けてニューヨークで初公開されたものが複数あります。『ドラゴンボール超 ビルス』は、日本での放送開始3日前に、第1話の「世界最速上映」を行い、ドラゴンボール公式サイトの発表によると3,000人が来場しました。『NARUTO』では原作者・岸本斉史氏の新作マンガ『NARUTO-ナルト- SHADOW RISING』のティザーが告知され、詳細は12月のジャンプフェスタ2027で発表予定です。バンダイナムコフィルムワークスは『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM ZERO』の最新予告とティザービジュアルを公開し、2027年2月の北米劇場公開を発表しました。

これらは米国のファン向けに用意された発表であり、NYCCが日本IPのグローバル発表の場として定着していることを示しています。日本IPのパネルについては第2回でも紹介します。

 

集英社、講談社、スクウェア・エニックスが同じ壇上に――自社配信サービスで、海外読者に作品を直接届ける

出版社のパネルで目を引いたのが、10月8日の「Taking Manga Global」です。集英社の籾山悠太氏(少年ジャンプ+編集長、MANGA Plus by SHUEISHA担当)、講談社の平岡雄大氏(週刊少年マガジン副編集長、K MANGA担当)、スクウェア・エニックスのグローバル出版ディビジョン ディレクターでManga UP!担当者である村中宣彦氏が同じ壇上に並び、各社が自前で運営する海外向けマンガ配信サービスを説明しました。

3社とも、従来から行っている海外出版社へのライセンス提供という従来型の輸出に加え、自社運営の海外向けサービスで日本公開との時間差を縮め、海外の読者に直接作品を届ける体制を持つ、という方針では共通しています。

またパネルの外でも、出版社は読者との接点を広げていました。集英社は、8月のAnime NYCに続いてNYCCにも「MANGA MILLION」の大型ブースを出展しました。MANGA MILLIONは集英社が創業100周年事業として8月6日に開始した期間限定の配信サイトです。約400作品・100万ページのマンガを100以上の言語に翻訳し、登録不要・無料で公開、うち約300作品は初めて英語版に翻訳されました。『ONE PIECE』は序盤エピソードである「東の海(イーストブルー)編」を107言語に翻訳し公開しました。

連載中の約30作品は、最新話を日本での公開から約2~3週間後に届ける「ニアサイマル配信」を行っており、『ONE PIECE』は96言語で展開。同社にとっても前例のない翻訳プロジェクトとされています。

MANGA MILLIONの大規模展示「MILLION COLLECTION」。作品の一部は、日替わりで展示された。

ブースでは、QRコードからMANGA MILLIONにアクセスした来場者へ特典を配り、サイトへの誘導を図っていました。海外読者に向けて幅広くマンガとの接点をつくり、アプリのMANGA Plusでの連載作品や単行本へと動線をつなげている様子がうかがえます。

講談社は単独でも『薫る花は凛と咲く』の作者・三香見サカ氏を招いたパネルを開催。集英社や小学館が共同出資する北米企業のVIZ Mediaは、現地クリエイターによるオリジナルマンガのレーベル「VIZ Originals」のパネルを行いました。

さらに講談社は、会場近くで体験型ポップアップショップ「KODANSHA HOUSE」を期間限定で開催。Anime Expo 2026開催時にも行われた取り組みです。豪華な展示やグッズ販売に人が集まりました。マンガの海外展開が「人気作の輸出」から「連載段階から世界にファンダムをつくる」方向に移っていることを、各社がそろって示しています。

 

展示ホールとTCGエリアに見る日本企業・日本IP――物販・TCGで示された存在感

展示ホールでは、Crunchyroll(3ブース)、バンダイナムコグループ(本体、魂ネイションズ、ドラゴンボール、カード事業部などで計6ブース)、東映アニメーション、KADOKAWA World Entertainment、ポニーキャニオン、VIZ Media、紀伊國屋書店、TOKYOPOP、ブシロードなどが出展しました。IP単独では『ダンダダン』のブースがみられました。エンタテイメント企業以外ではANAとヤクルトも出展しています。

各ブースでは物販も盛んで、バンダイナムコグループのコレクターズトイブランドである魂ネイションズは、数量限定のフィギュアを販売。コラボ出展となるFoot Locker×Crocs×『チェンソーマン』のブースでは、商品の先行販売もありました。

上記に加えて目を引いたのがTCGです。ホール1Eの対戦卓では、『マジック:ザ・ギャザリング』などのカードゲームと並んで、『ポケモン』『ONE PIECE』『ガンダム』『遊戯王』『ドラゴンボール』『デジモン』や、欧米を中心に展開されている「NARUTO Mythos」(Zvezdar Toysが販売)など、多くが日本IPのものでした。『NARUTO』のパネルでは、バンダイの新作「NARUTOカードゲーム」が27年6月に全世界で同時発売されることが主要発表の1つとされ、発売前に100万個のデモデッキを世界で配布するとも伝えられました。

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これまでに触れた通り、日本のIPは最大規模であるEmpire Stageパネルでの看板枠を連日担い、物販やTCGの会場でも存在感を示しています。米国のポップカルチャー全体のコンベンションであるNYCCにおいても、日本IPが確かな構成要素となっていることが確認できました。

取材・文:梅津 文

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