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35周年のAnime Expo 2026、過去最多42万人が来場――Crypto.com Arenaまで飲み込む“都市型イベント”へ~特集:Anime Expo 2026
公開日: 2026/08/06

特集:Anime Expo 2026 第1回

米ロサンゼルスで日本のアニメやマンガなどのポップ・カルチャーに特化した北米最大級のコンベンション「Anime Expo」が7月2日から5日にかけて開催されました。35回目の節目となった今年は、運営団体SPJA(The Society for the Promotion of Japanese Animation)によると、世界65カ国以上から延べ42.2万人以上が来場し、過去最多を更新。本特集では、現地の様子や注目のイベントについてレポートします。第1回は、前年よりさらに拡大した会場全体の様子を紹介します。
※本記事で触れられている内容は2026年7月時点の情報です

《目次》

 

 

過去最多42.2万人、経済効果1.15億ドル超――数字が示す拡大の勢い

1992年に始まったAnime Expoは、今年で35回目を迎えました。SPJAが会期終了後に発表したプレスリリースを昨年のものと比較すると、拡大の勢いが具体的な数字で確認できます。

延べ来場者数は、昨年の41万人超から42.2万人超へと約1.2万人(約3%)増加し、過去最多を更新。来場者の出身国は両年とも「65カ国以上」で、グローバルなイベントとしての性格は維持されています。プログラム総時間は1,300時間超から1,400時間超へと約100時間増加し、地元のホテル・レストラン等への経済効果も1.1億ドル超から1.15億ドル超へ拡大しました。チケットは昨年も今年も完売で、来場者数の伸びが「人気の伸び」というより「キャパシティ拡張の上限」を反映しています。つまり、Crypto.com Arenaへの拡張分(後述)が、来場者増に転化した可能性が高いという構図です。

項目 2025年(第34回) 2026年(第35回)
延べ来場者数 41万人超 42.2万人超(過去最多)
来場者出身国 65カ国以上 65カ国以上
プログラム総時間 1,300時間超 1,400時間超
経済効果 1.1億ドル超 1.15億ドル超
チケット 完売 完売
主な会場 ロサンゼルス・コンベンションセンター+Peacockシアター、Peacock Placeほか ロサンゼルス・コンベンションセンター+Peacockシアター、Peacock Place、Crypto.com Arena、The Novo、フィゲロア通り封鎖ほか

もう一つ、両年のリリースを並べると見えてくる重要な変化があります。昨年のリリースでSPJAは、労務費・会場費の上昇や、2028年五輪までに完了予定だったロサンゼルス・コンベンションセンター拡張計画の不透明さを背景に、「長年の開催地であるロサンゼルス市(での開催継続)を再評価している」と異例の言及をしていました。それから1年、今年のリリースでは一転して「Anime Expoは2027年7月2日~5日にロサンゼルス・コンベンションセンターに戻ってくる」と明言(チケットは2027年初頭販売開始予定)。過去最高の数字を並べた上でのLA開催継続宣言は、周辺会場を面的に取り込む拡張モデルに、運営が一定の手応えを得たことの表れと読めます。

今年の参加企業には、Aniplex of America、ATLUS/SEGA、バンダイナムコ、CD PROJEKT RED、Crunchyroll、HoYoverse、Hulu、KADOKAWA、ルーカスフィルム、MAPPA、NEXON Korea、スクウェア・エニックス、VIZ Mediaなど、日米に加えて韓国・中国・欧州の企業が名を連ねました。

 

コンベンションセンターを超えて――Crypto.com Arena含むL.A. LIVE一帯、そして道路封鎖

今年最大のトピックは、会場の拡大です。Anime Expoの会場は、ロサンゼルス・コンベンションセンター単体から年々広がり続けてきました。数年前にThe Novoが加わり、昨年は7,000人規模を収容するPeacockシアターにまで拡大し、今年はついにNBAロサンゼルス・レイカーズの本拠地であるCrypto.com Arenaを会場化。複合施設L.A. LIVE一帯までもがAnime Expoの会場となりました。

さらに今年は、会場に面するフィゲロア通りが昨年よりも大規模に封鎖され、屋外の展示・エンタテイメントスペースとして活用されました。ギルバート・リンゼイ・プラザには、フードベンダーとライブエンタテイメントを集めた社交ハブ「AX Crossing」が設けられ、寿司タコスやラーメンバーガーといったローカライズされたフードも来場者の目を引きました。そのほか、L.A. LIVEのイベントデッキに新設された約42,000平方フィート(バスケットボールコート約9面分)の専用スペース「Entertainment Arena」では、アーケードゲームやレトロゲーム、テーブルゲームが体験できるエリアを用意するなど、ブロック・街区画単位でイベント会場が設計されるようになっています。

さらに会場外への拡張もありました。講談社が7月2日から12日までリトルトーキョーで開いた体験型ポップアップ「KODANSHA HOUSE 2026」です。Anime Expoと公式パートナーシップを結び、会期を7日上回る11日間の開催。ロサンゼルス・コンベンションセンターからライドシェアで約10分という距離に、『ブルーロック』や『とんがり帽子のアトリエ』の体験ブースを構えました。

 

供給が増えても需要が上回る――日本アニメ以外も引き続き活発

初日のプログラム「Welcome Ceremony」では、ゲスト・オブ・オナーとして招かれた天野喜孝氏がだるまに目を入れる開幕の儀を担当。会期中、同氏が3年前のAnime Expoで自ら企画を語ったアニメ『斬 -ZAN-(ザン)』のパイロットフィルムを今年披露するという、イベントとクリエイターの縁の深まりを感じさせる場面もありました。

コンテンツの広がりも「アニメ」の枠にとどまりません。昨年Anime Expoで世界戦を開催したアメリカ発の日本人女子によるプロレスリーグ「SUKEBAN」は、今年もチケット制の公式イベントとして継続し、7月3日(金)夜にThe Novoで世界戦を行いました。日本のプロレスとファッション・ポップカルチャーを融合させた「SUKEBAN」のようなコンテンツがAnime Expoの公式プログラムに定着しつつあることは、「アニメの祭典」が日本のポップ・カルチャー全体へ拡張していることの表れです。

一方で、拡張しても各イベントは軒並み満席で、人気イベントには1時間待ちレベルの長蛇の列が発生。供給がどれだけ増えても需要がそれを上回るという状態が今年も続いており、Anime Expoの集客力の強さを改めて示しました。

目当てのパネル会場に入場を待つ長蛇の列  

メイドカフェからNASAまで――“全部盛り”の公式プログラム

1,400時間超のプログラムの中身は、企業パネルや上映会だけではなく、体験型・参加型の公式イベントも多数含まれています。

音楽では、初日夜にCrypto.com Arenaで開催されたチケット制のコンサート「J-POP SOUND CAPSULE」に、ALI、Roselia、SPYAIR、菅野よう子、高橋洋子という世代を超えたラインナップが集結。The Novoでは、kz(livetune)ら人気ボカロPが出演する無料のVOCALOID DJイベントも行われました。そのほか、土曜夜の名物企画「AX Masquerade」(コスプレの舞台パフォーマンス競技)、世界各地のアイドルが共演する「Idol Summer Escape」、日本のファッション文化に根ざしたブランド5組が参加したファッションショーなど、チケット制・予約制の企画が催されました。

体験型の定番であるメイドカフェは、テーマ性のある給仕やダンスパフォーマンスに加え、今年は猫・うさぎをモチーフにした新作パフェも登場しました。一方で知的プログラムも充実しており、学術誌“Journal of Anime and Manga Studies(JAMS)”と共催のシンポジウム「JAMS@AX Academic Symposium」には世界各国から集まった研究者が9セッションで登壇、NASAの科学者3人が「アニメの物理学」を語るセッションまで組まれました。さらに、ロサンゼルス・名古屋姉妹都市協会(LANSCA)を支援するチャリティオークション、コスプレ修理サービスや経験豊富なコスプレイヤーによる技術ワークショップ、リラックスして休憩できる「クワイエットラウンジ」や8,000冊以上のマンガを備えた「マンガラウンジ」、21歳以上限定の「Lounge 21」まで――1,400時間を超えるプログラムと400を超える出展者が揃いました。一言で総括することが不可能なこの多様性が、延べ42万人という来場者の裾野の広さを映しています。

取材・文:梅津 文

特集:Anime Expo 2026