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『ちいかわ』映画大ヒットで推しファン倍増 「かわいい」だけでない「奥の深さ」が推し活支出意欲アップ
公開日: 2026/09/11

『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が7月24日(金)に公開されました。その公開後、『ちいかわ』の推しファン人数は大きく増えています。推しファンの性年代構成や支出、『ちいかわ』に抱くイメージを詳細に分析すると、かわいさにとどまらない魅力が支持され、ファンの支出意欲が広がった様子が見えてきました。

《目次》
 

映画公開で推しファンがほぼ倍増

2026年7月24日(金)に公開された『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』は初週3日間の興行収入で22億円を達成、公開7週目(9月4日~6日)の週末には138億円を超え、動員ランキングで再度1位を獲得。勢いは衰えず、現時点で2026年公開作品の国内興行収入ナンバー1のヒット作となっており、大きな話題を呼んでいます。

そこで、本コラムでは「エンタメブランド※1」の「推しファン(=推しているファン)」の分析ができる「推しエンタメブランドスコープ」のデータを用いて、映画公開が『ちいかわ』に与えたインパクトについて深掘り分析を行います。

※1:作品やコンテンツを、映像、マンガ・書籍、映画、ゲーム、音楽、ラジオなど各メディアを横断してひとつの「ブランド」として捉えたもの。対象範囲は作品だけでなく、キャラクター、タレント、サービスなども含む

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『ちいかわ』の推しファン人数は、ここ数年継続的に増加していました。ただし、直近では増加ペースが鈍って横ばい傾向にあったことが見て取れます。映画公開直前の2026年7月(7月18日調査)の推しファン人数は110万人、公開前1年間(2025年8月~2026年7月)の月平均で見ると99万人でした。しかし、公開直後となる2026年8月(8月15日調査)の推しファン人数は、公開前に比べてほぼ2倍の199万人に跳ね上がりました。映画公開が推しファンの獲得に非常に大きな効果があったといえます。

 

映画でファン層を若年側へ揺り戻し

推しファン人数の性年代構成比を見ると、公開前1年間の月平均に比べ、公開後(2026年8月)は女性15~19歳・20代の構成比が特に高まりました。実は、アニメの放送・配信開始前である2022年1~3月の構成比では、女性15~19歳・20代は合計34.6%と大きかったのですが、その後テレビ放送開始に伴い、女性40代以上の構成比が高まりこれらのセグメントの構成比が縮小してきたという経緯がありました。それに対し、映画によりファン層の若年側への揺り戻し効果があったことが分かりました。

さらに、男性の構成比も公開前の20.3%から公開後の21.8%へと高まっています。2022年1~3月では男性の構成比は16.7%でしたので、性別をまたいだファンの多様化が起きていることが見て取れます。

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ただし、ここで見たのはあくまで構成比のバランスのため、推しファン人数の絶対数で見ると、また違った示唆が得られます。構成比では女性30代以上の割合は減っていましたが、人数ではすべての性年代で推しファンが増加していることが分かります。つまり『ちいかわ』の映画公開は、アニメ放送・配信以降のボリュームゾーンである女性30代、40代の推しファン人数を伸ばし、さらに女性若年層への揺り戻しを起こしつつ、全体としてさらに拡大したといえます。

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人数が倍増しても、ファンの支出意欲は「薄まらなかった」

次に、映画公開が推しファンの支出にどのような影響を与えたかを見ていきます。

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公開前後で1人当たりの支出金額と最大許容支出金額(使っても良いと思う最大金額)を比べると、いずれも公開後に高まっています。推しファンが急拡大する局面では、新規ファンの流入によってファン全体が“薄まり”、1人当たり支出が下がることも珍しくありませんが、『ちいかわ』ではその逆の現象が起きていました。

また実際に、『ちいかわ』を「人生の一部/信者」と感じる特に濃い推しファンの割合は、公開前の9.8%に対して公開後は9.0%と、ほとんど変わっていませんでした。ファンの濃さを維持したまま人数を倍に増やしたことが、『ちいかわ』の特徴です。

では『ちいかわ』の推しファンは、何にお金を使いたいと感じているのでしょうか。公開前後で、推しファンが『ちいかわ』にもっとお金を使いたい支出意欲のあるカテゴリを比べたものが下記のチャートです。

公開前後ともに「おもちゃ」「雑貨」「文房具」といった身の回りのグッズへの支出意欲が高いことが分かります。しかし、映画公開後では、これらへの支出意欲の割合が低下し、代わって「音楽」(+2.5pt)、「テーマパーク」(+2.2pt)、「DVD購入」(+2.1pt)、「動画配信」(+1.5pt)、「マンガ」(+1.4pt)が上昇しています。すなわち、映画公開後には、作品を鑑賞したり、その世界に触れたりする楽しみへの支出意欲が広がっています。映画というコンテンツを起点にファンが増えたことから、これは自然な広がりと考えられます。

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ただし、これをもって「グッズ離れ」しているとは断定できません。ファン全体の規模が大きく変わっているため、支出意欲を持つ人の人数も確認する必要があります。

下図の通り、支出意欲のある推しファンを人数ベースでみると、公開前後で「おもちゃ」が39万人増、「雑貨」が31万人増、「文房具」が15万人増と、グッズ系はいずれも人数では大きく伸びています。つまり『ちいかわ』は、もともとの強みであるグッズへの支出意欲の総量をしっかり伸ばしながら、その上にコンテンツ自体への支出意欲を積み増したといえます。

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イメージでは「かわいい」の上に「奥が深い」が重なった

映画では、かわいいだけではない“想定外”のストーリーも話題を呼びました。映画公開の前後で『ちいかわ』のイメージはどのように変わったのでしょうか。

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公開前1年間・公開後ともに、イメージのトップは「かわいい」「癒される」となっています。公開後は映画の大ヒットに伴い「話題になっている」が大きく伸びていますが、注目すべきは、トップイメージである「かわいい」「癒される」がいずれも減少し、代わって「奥が深い」「新しい視点・知識が得られる」が高まったことです。

ネタバレになるため詳細は控えますが、『ちいかわ』を単にかわいくて癒されるキャラクターにとどめず、表層的ではないストーリー性とキャラクターの肉付けによって作品のイメージを広げたことが、データからも確認できました。

推しファンを「かわいい」と「奥が深い」と感じるか否かの組み合わせで4つに分けると、この変化はより鮮明になります。「かわいい」かつ「奥が深い」と感じる人は24.3%から31.7%へ増え、人数では24万人から63万人(約2.6倍)に膨らみました。一方で、「かわいい」のみを感じる人は、54.9%から41.9%へ減少しました。作品に対する「かわいい」というイメージは公開前後とも最多であるものの、公開後はあわせて「奥が深い」と感じる層の存在感が増しており、ファンの間で「かわいい」に「奥が深い」が重なる評価が広がっていることが見て取れます。

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「奥が深い」が支出の天井を押し上げる

では、こうしたイメージの違いは、支出意欲とどのように結びついているでしょうか。

「かわいい」「奥が深い」というイメージをそれぞれ持っているか否かで、最大許容支出金額の違いを見たのが下図です。

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「かわいい」と感じるか否かでは、最大許容支出金額はほとんど変わりません(「奥が深い」と感じない層の中では4,583円と4,333円、「奥が深い」と感じる層の中では6,667円と6,879円)。一方、「奥が深い」と感じるか否かでは、許容額が大きく変わります(「かわいい」と感じない層の中では4,583円から6,667円へ、「かわいい」と感じる層の中では4,333円から6,879円へ)。つまり、推しファンに「奥が深い」と感じてもらうことで、支出の天井を押し上げる効果があることが分かります。

最後に、『ちいかわ』を「かわいい」と感じている人の中で、「奥が深い」と感じるか否かによってカテゴリ別に支出意欲がどう違うかを見ていきます。「映画館」(+19.9pt)、「おもちゃ」(+17.2pt)、「マンガ」(+16.1pt)、「文房具」(+12.9pt)、「食品・飲料」(+12.7pt)、「テーマパーク」(+8.7pt)など、ほぼすべてのカテゴリで「奥が深い」と感じる層の支出意欲が高くなっています。コンテンツ系だけでなくグッズへの意欲も「奥が深い」によって底上げされており、「奥が深い」と感じることは、支出額の天井だけでなく消費の幅も広げていることが分かります。

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映画公開後の『ちいかわ』では、若い女性の構成比が高まると同時に、すべての性年代区分で推しファン人数が増加しました。1人当たりの支出金額も伸び、グッズへの支出意欲を持つ人数が増えるとともに、コンテンツや体験への関心にも広がりがみられました。

この変化を読み解くうえで鍵となるのが、推しファンが抱く『ちいかわ』へのイメージの変化です。映画公開によって、キャラクターや作品に対して「かわいさ」に重なる「奥の深さ」で厚みを持たせました。そして、「奥の深さ」を感じる層は、最大許容支出金額が高く、多様なカテゴリへの支出意欲も高くなっていることが分かりました。

『ちいかわ』においては、かわいさを入口に、物語の奥行きを感じてもらうことが、より多くの商品や体験を通じてコンテンツを楽しみたいという意欲につながったと考えられます。そのため『ちいかわ』の成長を考えるうえでは、推しファンの人数だけでなく、推しファンがどのような魅力を感じているかの見極めも重要な鍵となります。

出典:「推しエンタメブランドスコープ
毎月約3万人、全国に住む15~69歳の男女に対して、メディアを横断し「いま、推しているエンタメブランド」に関する大規模調査を実施。エンタメブランドの価値をメディア横断でとらえ、<推しファン人数><支出金額><接触日数>を集計しているほか、これらの値から総合指標<推しエンタメブランド価値(単位:GEM)>を算出しています