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FIFAワールドカップ視聴者の7割がテレビ放送、有料配信は1割だが「推し活・消費意欲」高め
公開日: 2026/08/21

2026年6月に開催された「FIFAワールドカップ2026(サッカーW杯)」は、地上波、BS、定額制動画配信など、複数の方法で放送・配信され、大きな盛り上がりを見せました。一方、3月開催の「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」は、定額制動画配信のNetflixで独占配信され、大型の国際大会であっても「有料配信で観る」という視聴スタイルで注目されました。

近年、視聴方法の多様化が進むスポーツイベント。そこで本記事では「サッカーW杯」に着目し、大型スポーツイベントのなかで、視聴者がどのようなポジションに位置するのかを分析しました。過去4年間のスポーツ関連映像リーチデータを用いて、視聴者の属性や嗜好について探っていきます。

《目次》

 

本レポートの分析には、GEM Partnersが提供する「エンタメリーチトラッカー」を用いました。このデータは、「生活者がいま接触しているエンタメブランド※1」は何かを把握し、どういったメディアで、どのくらいの人が接しているのかを明らかにします。指標の「リーチpt」は、各エンタメブランドに接触した延べ人数の大きさを表しており、消費者調査にて日次で収集し、週単位で集計しています。
※1:作品やコンテンツを、映像、マンガ・書籍、映画、ゲーム、音楽、ラジオなどメディアを横断して1つの「ブランド」として捉えたもの。対象範囲は作品だけでなく、キャラクター、タレント、選手、サービスなども含む

 

「リーチpt」からみえる2種類の視聴傾向

イベント開催のたびリーチが跳ね上がる「スパイク型」

下記は、2023年7月第1週〜2026年7月第4週におけるスポーツ関連映像全体のリーチpt週次推移です。「サッカーW杯」開催期間をみると、日本代表が決勝トーナメントに進出するまでの2026年6月第3・4週を中心に数値が伸びていることが分かります。同年では「ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック(ミラノ五輪)」開催期間中の2月第2・3週や、「WBC」開催期間の3月第2週などでリーチptが伸長しています。

一方、期間中で最もリーチptが高かった時期は「パリ2024夏季オリンピック(パリ五輪)」開催期間中の2024年8月第1・2週でした。次に高かったのは、東京で開催された「世界陸上競技選手権大会(世界陸上)」開催期間中の2025年9月第3週です。

図1-1:スポーツ関連映像 週次のリーチpt推移(2023年7月第1週〜2026年7月第4週)
図1-1:スポーツ関連映像 週次のリーチpt推移(2023年7月第1週〜2026年7月第4週)
※映像関連エンタメブランドを観たジャンル「スポーツ・格闘」で絞り込み

大型スポーツイベントである「サッカーW杯」をはじめ、「オリンピック」「世界陸上」「WBC」などの開催時には、平常時のスポーツ視聴を大きく上回るリーチを生む、「スパイク型」となることが確認できました。

スパイクの裏で、プロ野球など「定常型」がリーチを積み上げる

続いて下記は、先ほどの週次推移チャートを、週ごとに最大リーチptの高かったスポーツイベント・リーグごとに分解して積み上げたものです(上位のイベント・リーグ以外や、「サッカー」「野球」などイベント・リーグ名に該当しないリーチptは「その他」に分類)。先ほど挙げたスパイク型のイベントが目立つ一方、グラフの下部では青色で示した「プロ野球」、緑色の「メジャーリーグベースボール(MLB)」、オレンジ色の「大相撲」などが、定期的にリーチptを獲得している「定常型」イベントであることが分かります。

図1-2:スポーツ関連映像 週次リーチptの内訳(2023年7月第1週〜2026年7月第4週)
図1-2:スポーツ関連映像 週次リーチptの内訳(2023年7月第1週〜2026年7月第4週)
※上位イベント・リーグ以外は「その他」に分類

スポーツ映像市場では、「サッカーW杯」「オリンピック」「WBC」など大会開催時にリーチが跳ね上がる「スパイク型」と、「プロ野球」「MLB」「大相撲」など定期的にリーチを生む「定常型」が併存しています。では、「サッカーW杯」はこうしたイベント・リーグのなかでもどのような視聴者傾向があったのでしょうか、次章ではその性別・年代を比較します。

 

視聴者属性を「性別」「年代」「推し活・消費意欲」から掘り下げ

直近開催の「サッカーW杯」は男性比率6割超

下記の散布図は、主要スポーツイベント・リーグにおける映像視聴者の性別・年代をポジショニングしたものです。対象としたのは、調査期間中の2023年7月第1週〜2026年7月第4週で最大リーチptの高かったイベントの上位20(「オリンピック」はパリ五輪、ミラノ五輪を別イベントとして計上)に、参考として「Jリーグ」を加えた21イベントです。横軸は男性比率、縦軸は40代以下比率、バブルサイズは期間中の最大リーチptを示しており、グラフの右側に行くほど男性寄り、上に行くほど若年寄りのイベント・リーグとなります。

図2-1:主要スポーツイベント・リーグ映像視聴者の性別・年代ポジショニング(横軸・縦軸は2023年7月第1週〜2026年7月第4週累計、バブルサイズは期間中の最大リーチpt週で計上)
図2-1:主要スポーツイベント・リーグ映像視聴者の性別・年代ポジショニング
(横軸・縦軸は2023年7月第1週〜2026年7月第4週累計、バブルサイズは期間中の最大リーチpt週で計上)
※ パリ五輪は2024年7月第4週~8月第3週、ミラノ五輪は2026年2月第1週~2月第3週の大会期間中で算出

オレンジ色のバブルで示した「サッカーW杯」の男性割合は64.3%、40代以下の比率は38.9%でした。「Jリーグ」が男性若年寄りの際立ったところに位置しているのに比べると「サッカーW杯」は中央に寄った位置づけになっています。しかしそれでも「パリ五輪」、「世界陸上」や「WBC」といった規模の大きな国際スポーツ大会の中では、男性寄りの大会であったことが見て取れます。

ちなみに、他に傾向で特徴が出たのは、「バレーボール ネーションズリーグ(バレーNL)」「バレーボールワールドカップ(バレーW杯)」で女性比率高め。また、「FIBAバスケットボール・ワールドカップ(バスケW杯)」は最も若年寄りとなっています。

推し活と消費意欲の指標で「サッカーW杯」は主要イベント上位に

性別・年代に続いて、「サッカーW杯」などこれらのスポーツイベント・リーグに接触した層は「どんな価値観の人たちか」を確認しました※2。指標としたのは4つで、「『推し』コンテンツには、お金を惜しみなく使いたいと思う(推し課金)」「『推し』コンテンツがあることは幸せだと思う(推し幸せ)」「エンタメには、お金を使う方だ(エンタメ支出)」「趣味の活動を、他のことよりも優先したい(趣味優先)」です。

対象の21イベントを観た人のうち、上記の価値観を持つ人の割合が大きい順に並べたものが下記の図2-2です。

※2 いずれも調査期間中の2023年7月1週〜2026年7月4週における一般的なライフスタイル(自分の「推し」全般やエンタメ・趣味への向き合い方)に関する回答であり、そのイベント・リーグ自体への課金や熱量を測ったものではありません。

図2-2:主要スポーツイベント・リーグ映像視聴者の「推し活・消費」価値観 4指標での比較(2023年7月第1週〜2026年7月第4週累計)
図2-2:主要スポーツイベント・リーグ映像視聴者の「推し活・消費」価値観 4指標での比較
(2023年7月第1週〜2026年7月第4週累計)

オレンジ色で示している「サッカーW杯」は4指標すべてで上位に位置しています(推し課金6位、推し幸せ5位、エンタメ支出4位、趣味優先4位)。同じくサッカーの「Jリーグ」は「サッカーW杯」の順位を4項目すべてで上回っており、「サッカーW杯」に比べると「Jリーグ」鑑賞者の方が「推し活・消費への意欲」がより高いことが見て取れます。全項目で「推し活意欲」の高さが際立ったのは「バレーNL」で、「推し課金」「推し幸せ」が首位、「エンタメ支出」が2位、「趣味優先」が5位となりました。

サッカーW杯」のリーチ層にみられた「推し活・消費への意欲」について、次は視聴方法の切り口から、さらに深掘りしていきます。

 

「サッカーW杯」をテレビ放送/有料配信で視聴した層の違いとは

有料配信(SVOD)の視聴層は約1割

下図は、「サッカーW杯」に触れたユーザーの、視聴方法別の構成比です。リアルタイムのテレビ放送での視聴は73.8%、DAZNなど月額定額の動画配信(SVOD)は9.5%でした。このほか、テレビ放送の録画が9.4%、無料配信が6.9%と続きました。有料配信での視聴層は、全体の1割弱でした。

図3-1:「サッカーW杯」視聴者の視聴方法構成(2023年7月第1週〜2026年7月第4週累計)
※カーソルを合わせると割合を表示します

有料配信(SVOD)の視聴層は男性・若年寄りに位置

では、「サッカーW杯」を「テレビ放送(リアルタイム視聴)」で観た人と、「有料配信(SVOD)」で観た人にはどのような違いがあるでしょうか。それぞれの視聴者層を先ほどの図2-1「男性比率×40代以下比率」の上に重ねてマッピングしたのが図3-2です。

バブルサイズは図2-1と同じく期間中の最大リーチptで、「サッカーW杯-全体」と「テレビ放送」「有料配信」のどれも、サッカー日本代表が決勝トーナメント進出を決めた2026年6月第4週に最大となりました。

図3-2:主要スポーツイベント・リーグにおける「サッカーW杯」テレビ放送/有料配信層の性別・年代ポジショニング(横軸・縦軸は2023年7月第1週〜2026年7月第4週累計、バブルサイズは期間中の最大リーチpt週で計上)
図3-2:主要スポーツイベント・リーグにおける「サッカーW杯」テレビ放送/有料配信層の性別・年代ポジショニング
(横軸・縦軸は2023年7月第1週〜2026年7月第4週累計、バブルサイズは期間中の最大リーチpt週で計上)

サッカーW杯」の「テレビ放送」は男性61.6%、40代以下35.9%、「有料配信」は男性71.2%、40代以下は52.2%となりました。「有料配信」は「テレビ放送」に比べ、若年寄りかつ男性割合の高いゾーンにマッピングされています。同じ大会の観戦にもかかわらず、視聴方法によってその性別・年代が分かれる結果となりました。

サッカーW杯」の「有料配信」視聴者は「Jリーグ」視聴者に近い位置づけにあります。「エンタメリーチトラッカー」によると、2025年8月から2026年7月の1年間で「Jリーグ」の視聴者のうち約7割がDAZNで視聴しています。そのため「サッカーW杯」を「有料配信」(DAZN)で視聴した層の重なりが大きかったことが推察されます。ただし、期間中の最大リーチptは「サッカーW杯-有料配信」が124.6pt、「Jリーグ」が94.7ptで「サッカーW杯」の方が大きいことから、女性・年配に視聴者が広がったことが読み取れます。

サッカーW杯の有料配信層は、推し活・消費への意欲が際立つ

最後に、上述の「推し活・消費」価値観4指標で「サッカーW杯」の「テレビ放送」「有料配信」を比べてみると、両者の性格の差が際立ちます。

図3-3:「サッカーW杯」テレビ放送/有料配信層の「推し活・消費」価値観 4指標比較(2023年7月第1週〜2026年7月第4週累計)
図3-3:「サッカーW杯」テレビ放送/有料配信層の「推し活・消費」価値観 4指標比較
(2023年7月第1週〜2026年7月第4週累計)

サッカーW杯」を「有料配信」で視聴した層は、4指標すべてで「テレビ放送」で視聴した層を上回りました。すべて10pt以上の差をつけており、特に「推し幸せ」では16.6pt差と、最も開きが大きくなりました。

平常時のスポーツ視聴を大きく上回るリーチを生む、「スパイク型」である「サッカーW杯」。その視聴者は主要なスポーツイベント・リーグと比較すると若干男性寄りとなりました。そして、多様な視聴手段がとられた同大会ですが、視聴手段の73.8%で「テレビ放送」が選ばれており、DAZNなど「有料配信」での視聴は9.5%にとどまりました。しかし、この「サッカーW杯」を「有料配信」で観る層は「テレビ放送」で観る層に比べ、推し活・消費への意欲が高い可能性があるということが見えてきました。

出典:「エンタメリーチトラッカー
映像、マンガ、書籍、ゲーム、音楽、ラジオなどのエンタメ接触について、第三者の立場から共通指標を提供。メディア横断の統合リーチやメディア・サービス単位のリーチ比較・評価を可能にしました。全国に住む15〜69歳の男女に対して、日次で調査、週次で集計(毎月のべ10万人規模)。