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スポーツの有料配信市場をけん引する競技・選手は? 大谷翔平ほかTOP50ブランドを「ファン人数規模」「支出意欲・金額」から探る
公開日: 2026/09/04

「FIFAワールドカップ2026(サッカーW杯)」や「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」など、大型スポーツイベントにおける有料配信での観戦が注目されています。本稿では、各スポーツや選手のことを推しているファン(=推しファン)の人数規模と支出意欲・金額をもとに、有料配信における拡大ポテンシャルの高いスポーツ・選手について探ります。

《目次》

 

分析には、GEM Partnersの「推しエンタメブランドスコープ」を用いました。全国に住む15〜69歳の男女約3万人への月次調査から、エンタメブランド※1ごとの「推しファン人数」「支出金額」「接触日数」を集計しています。本稿では、「スポーツ」関連エンタメブランドに絞って分析を行いました※2
※1:作品やコンテンツを、映像、マンガ・書籍、映画、ゲーム、音楽、ラジオなど各メディアを横断してひとつの「ブランド」として捉えたもの。対象範囲は作品だけでなく、キャラクター、タレント、サービスなども含む
※2:対象期間内において、推しファンが推しているエンタメブランドが複数のメディアにまたがる場合(例:スポーツとタレントなど)に、そのエンタメブランドにおいて「好きなメディア」として回答した割合で「スポーツ」が最も高かったエンタメブランドを対象として集計

 

スポーツ関連の推しファン市場が拡大、人数と1人当たり支出の双方で増加

まずは「スポーツ」関連エンタメブランド全体の動きをみていきます。下記図1は、2022年から26年(26年は1~7月)の「推しファン人数」と「支出金額」(どちらも月平均)の年次推移です。

「推しファン人数」は25年に296万人/月に達し、対22年比で45%増。26年は1~7月の集計ですが308万人/月(対22年比51%増)と伸び続けています。一方、「支出金額」は25年に165億円/月を記録し、対22年比70%増、26年1~7月は172億円/月(対22年比78%増)と、「推しファン人数」を上回るペースで伸長しています。ここで1人当たりの月平均支出金額を算出すると、22年の4,748円/月から26年1~7月には5,586円/月へと増えています。つまり、「スポーツ」関連の推しファン市場は「推しファン人数」と「1人当たり支出」の双方が拡大していることが分かります。

図1:「スポーツ」関連のエンタメブランド全体における「推しファン人数」と「支出金額」の推移 (いずれも月平均)
推しファン人数(万人/月平均、左軸)支出金額計(億円/月平均、右軸)
図1:「スポーツ」関連のエンタメブランド全体における「推しファン人数」と「支出金額」の推移
(いずれも月平均)
 

「大谷翔平」「WBC」など野球関連がスポーツ推しファン市場をけん引

拡大を続けているスポーツ関連の推しエンタメブランド市場。その中でも具体的に、どのスポーツや選手が成長をけん引しているのでしょうか。そこで、期間を過去1年間(25年8月〜26年7月)に絞り、月当たり推しファン人数の期間中最大値でランキングTOP50(図2)を作成しました。

図2:「スポーツ」関連エンタメブランドにおける 推しファン人数の期間中最大値ランキング TOP50 (2025年8月~2026年7月)
■ 野球 ■ サッカー ■ バレーボール ■ フィギュアスケート ■ 格闘技(ボクシング・プロレス等) ■ 大相撲 ■ モータースポーツ ■ ゴルフ ■ 陸上競技 ■ オリンピック ■ バスケットボール ■ ラグビー ■ テニス ■ その他 (数字はスポーツ分類内の順位。色は競技分類)
図2:「スポーツ」関連エンタメブランドにおける
推しファン人数の期間中最大値ランキング TOP50
(2025年8月~2026年7月)

上図の通り、首位の「大谷翔平」(46.6万人)を筆頭に、「WBC」「プロ野球」「阪神タイガース」「MLB(メジャーリーグベースボール)」とTOP5のすべてを野球関連が占めました。以降、6位「サッカーW杯」、7位「サッカー」とサッカー関連が続きます。TOP50のエンタメブランドを競技別に見ると、野球関連は20、サッカー関連は6つランクインしており、両競技の人気の高さがうかがえます。

野球、サッカー関連以外で唯一TOP10入りしたのは10位の「オリンピック」のみ。TOP20まで広げると、11位「バレーボール」、13位の「大相撲」、17位「世界陸上競技選手権大会(世界陸上)」、19位の「F1」が入りました。また競技別でみると、野球、サッカー以外では、「格闘技(「ボクシング」「プロレス」等)」関連が5つ、続いて「バレーボール」「バスケットボール」「フィギュアスケート」関連がそれぞれ3つランクインしています。

選手に目を向けると、1位の「大谷翔平」以降は、34位に「羽生結弦」、37位に「井上尚弥」、41位に「山本由伸」、48位に「りくりゅうペア」が入りました。

 

有料配信市場で拡大ポテンシャルが高いスポーツとは

定額制動画配信サービスで配信されるジャンルにおいて、コロナ収束後に最も伸長しているのが「スポーツ」です(関連記事)。前段では、スポーツ関連の推しエンタメブランド市場をけん引するTOP50を確認しましたが、この中で、有料配信市場における拡大のポテンシャルが、より高いスポーツは何なのでしょうか。

以下は、前述のTOP50を対象とした散布図です※3。集計期間は25年8月~26年7月。

横軸には、各エンタメブランドの推しファンの「月当たり最大許容支出金額(1人当たり平均)」をとりました。動画配信サービスに限らず、当該エンタメブランドに1カ月当たり最大いくらまで使ってよいか、という上限額です。右に行くほど(額面が上がるほど)、ファン1人当たりの支払い許容度が大きいことを表します。

縦軸には、当該エンタメブランドの推しファンのうち、有料配信に「もっとお金を使ってもよい/使いたい」と回答した「有料配信への追加支出意欲率」をとりました。上に行くほど、「動画配信サービス(Prime Video、Netflixなど)にもっとお金を使ってもよい/使いたい」と回答した人の割合が高いことを示します。本指標には、回答時に関連する支出がなくても「あるならば」と想像した場合や、すでに支出している場合も含まれています。

つまり、右上になるほど「たくさんお金を使ってもよいと考えており、かつ、動画配信もっと使いたい」という、「有料の動画配信を伸ばす」スポーツや選手が集まっています。

バブルサイズは「推しファン人数」の期間中最大値を表しています。また、シーズンを通じて継続的に試合やコンテンツの続く競技・リーグは「定常型」として青色のバブルで、特定時期のみ盛り上がるものを「スパイク型」としてオレンジ色のバブルで示しました(参考)。

※3:対象期間中のサンプル数が少ないため、「バレーボールネーションズリーグ」「バレーボールワールドカップ」は除外しています

図3:「スポーツ」関連エンタメブランドの推しファン分析マップ 「推しファン人数」期間中最大値 TOP50(※)を月当たり平均最大許容支出金額(1人当たり)×有料配信への月当たり平均追加支出意欲率でマッピング
図3:「スポーツ」関連エンタメブランドの推しファン分析マップ
「推しファン人数」期間中最大値 TOP50(※)を
月当たり平均最大許容支出金額(1人当たり)×有料配信への月当たり平均追加支出意欲率でマッピング
期間:2025年8月~2026年7月、バブルサイズ:推しファン人数の期間中最大値
※サンプル数が少ないため、「バレーボールネーションズリーグ」「バレーボールワールドカップ」は除外

縦軸の基準線(破線)は、「有料配信への追加支出意欲率」の中央値を置きました。横軸には参考として、Netflix「広告つきスタンダードプラン」の月額料金(890円)と、「DAZN Standard」の月間プラン料金(4,200円)の2つの基準線を置いています。

青色の「定常型」(シーズンを通じてコンテンツがある競技等)における野球関連のエンタメブランドでは、基準線の上側のエリアに、まず「大谷翔平」「山本由伸」「MLB」など野球の海外リーグや所属選手がマッピングされました。国内のプロ野球ブランドでは、「オリックス・バファローズ」が基準線を上回っており、推しファンの有料動画配信へのニーズが高いことが分かりました。「プロ野球」「野球」やその他の11球団は、基準値を下回りました。

また、ほかに基準線を上回る「定常型」エンタメブランドとしては、「Jリーグ」「プレミアリーグ」「浦和レッドダイヤモンズ」など国内外のサッカーリーグ・クラブに加え、「バレーボール」「F1」「ゴルフ」「バスケットボール」「プロレス」などがマッピングされました。上記で上位となった野球の海外リーグ・選手も含め、これらの競技で有料配信の拡大ポテンシャルは比較的高いといえます。

オレンジ色の「スパイク型」で基準線より上側に位置するブランドを見ると、「羽生結弦」は横軸の月当たり最大許容支出金額17,473円で、グラフの最も右側にマッピングされました。次いで、「井上尚弥」が7,861円と続きます。2026年5月に行われた「井上尚弥」のタイトルマッチでは、PPV(ペイ・パー・ビュー)は事前販売6,050円、当日7,150円で配信されており、最大許容支出金額に近い水準です。最大許容支出金額が高く、出演・出場の機会が限られている個人選手のエンタメブランドでは、有料配信でも高価格帯のPPVで受け入れられる余地がありそうです。

また「スパイク型」でも、Netflixで配信された「WBC」と、DAZNで配信された「サッカーW杯」への最大許容支出金額は、ちょうどNetflix、DAZNの基準線の間に位置しています。推しファン人数(期間中最大値)はそれぞれ44.9万人、27.6万人と多いため、適切な価格設定をすれば、今後も大きな有料配信市場を継続できると考えられます。

これまで見てきたように、スポーツ関連の推しエンタメブランド市場は、ここ数年で「推しファン人数」と「支出金額」がともに増加しています。市場をけん引する具体的なスポーツ・選手を特定し、そのなかでどれが有料配信市場をより大きく伸ばすポテンシャルがあるかを分析したところ、ポテンシャルの高いブランドは、「定常型」競技では、「大谷翔平」「山本由伸」「MLB」などアメリカのメジャーリーグ・選手や「オリックス・バファローズ」、サッカーの国内外リーグと、「バレーボール」「F1」「ゴルフ」「バスケットボール」「プロレス」となりました。特定期間に盛り上がる「スパイク型」競技では「羽生結弦」や「井上尚弥」などの個人選手、イベントでは「WBC」「サッカーW杯」であることが分かりました。

そして、エンタメブランドごとに推しファンの「最大許容支出金額」は異なっています。適切な価格設定のもと、ファンの望むコンテンツを提供できれば、これらのエンタメブランドでは有料配信市場を広げる余地が大きいと考えられます。

出典:「推しエンタメブランドスコープ
毎月約3万人、全国に住む15〜69歳の男女に対して、メディアを横断し「いま、推しているエンタメブランド」に関する大規模調査を実施。エンタメブランドの価値をメディア横断でとらえ、<推しファン人数><支出金額><接触日数>を集計しているほか、これらの値から総合指標<推しエンタメブランド価値(単位:GEM)>を算出しています。