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映画館から消えた人たちは誰なのか
公開日: 2024/09/20

特集:完全復興に向けて映画鑑賞者の現状を考える 第1回

映画興行の書き入れ時の夏が終わった今、素晴らしいヒットも多数あったものの、今年の累積興行収入は昨年を下回るペースとなっているとみられます。ハリウッドにおけるストライキの影響も薄まり洋画の供給が増える来年以降に向け、今一度、アフターコロナの映画鑑賞者層の構造はどのようになっているのかを振り返ります。また映画離れ、映画館離れの現状とともに、映画、映画館には何が求められているのか。週次(CATS)と年次(GEM映画白書)の調査データをもとに考えます。

《目次》

 

 

なかなか戻らない映画参加者人口

1年に1本以上映画館で映画を観る「映画参加者人口」の推移をみると、コロナ前の2020年1月と比べて2024年8月の調査では31%、約800万人減少しています。

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映画参加者人口の減少は、2022年1月に底を打ち、2023年6月までは順調に回復していましたが、以降はゆるやかに減少しています。前年比で好調だった2024年前半では減少が止まったものの、全体として興行収入が失速するなか、映画参加者人口も減少しています。

 

シニア映画参加者人口の減少率が大きい

映画参加者人口の推移を15歳から69歳の中で性年代別に見ると、映画参加者人口が2024年8月末時点で最多なのは男女20代です。

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コロナ前と現在の性年代別の映画参加者人口を比較すると、年代が上がるほど減少幅が大きくなっています。男女60代はコロナ前(2020年1月)比で40%を超える減少であり、最も戻りが鈍くなっています。

 

映画館から消えた人たちのボリュームゾーンは30代、40代

性年代別の映画参加者人口の変化率でいうとシニア層の戻りの鈍さが目立ちますが、全体から消えた約800万人の内訳においてもシニア層が多めになっているのかといえばそうではありません。

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映画参加者人口の減少における性年代別の絶対数では、30代、40代のミドル層(≒ファミリー層)が最も大きくなっています。「シニア層向け映画」を扱う場合はシニア層の戻りが問題ですが、オールターゲットの作品、あるいは年代ではなく、興味関心軸でターゲットを設定する場合は、そもそものボリュームゾーンであるミドル層の減少人数の大きさにも留意が必要となってきます。

 

映画館から消えた人たちは配信に流れ続けているわけではない

では、この映画館に来なくなった人々はどこへ行ったのか。コロナ禍で急伸した動画配信サービスで映画を観ているのでしょうか。一年の中で映画を観る手段として映画館を利用する割合と、定額制動画配信サービスを利用する割合の経年変化を見てみます。

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こうしてみると、コロナ前は映画鑑賞の方法として、大差で映画館を利用する人の割合が高かったですが、これがコロナ禍に入ると減少する一方、定額制動画配信サービスで観る割合が増えて、同程度となりました。コロナ禍が落ち着き、劇場公開作品も増えてきた2022年以降は、その差はコロナ前ほど大きくなく、拮抗していますが、再び映画館が定額制動画配信サービスを上回っています。

 

いま、映画を見るために、若者は映画館を選び、シニアは配信を選ぶ人の割合が高い

次にこの値の変化を性年代別に見てみます。

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動画配信サービス利用者において多めとなっている若者にとって映画を映画館で観る割合が、動画配信で見る割合を大きく上回っています。他の年代と比べても、若者の間で「映画を見るなら映画館で」という度合いが高くなっているのです。

しかし、減少した人数として大きなゾーンであるミドル層において配信で観ている度合いが高まっているのかというとそうでもなく、“映画館離れ”だけでなく、“映画離れ”まで起こっていることが懸念されます。

一方、シニア、特にシニア男性において映画を観る方法として映画館よりも、動画配信が選択されていることが分かります。シニアは映画参加者人口のところで見たように、映画館利用率の減少が著しいですが、入れ替わるように動画配信の割合が映画館に対して高めとなっています。つまり、映画鑑賞においては、シニアのほうが若者より動画配信に流れています。

しかしこれは「シニアにおいては、”映画離れ”は起きていない。したがって、映画館での鑑賞ニーズに訴求することで戻ってくる可能性がある」とも捉えることができます。例えば、「シニアは、動画配信で洋画を見ていて、好きな洋画大作の公開が増えれば、映画館にも来るだろう」という仮説も成り立ちます。事実、『トップガン マーヴェリック』の大ヒットを大きくけん引したのはこの層でした。

次回は、この“映画離れ”と“映画館離れ”について考えます。

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特集:完全復興に向けて映画鑑賞者の現状を考える