第1回:消費者行動の変化を踏まえたヒットの条件~特集:アジア映画市場発展の条件
公開日: 2024/01/27
タイのバンコクで開催されたアジアの映画興行・配給事業者向けコンベンション「CineAsia(シネアジア)」(開催期間:2023年12月4日~7日)より、APAC(アジア太平洋)地域の現状と今後の課題について、配給、興行業界のベテランが議論を交わした座談会「Executive Roundtable」の模様をレポート。第1回は、2022年から2023年にかけての映画興行における変化について語られました。
※本記事で触れられている内容は2023年12月時点の情報です
ランス・パウ(Rance Pow)
アーティザン・ゲートウェイ(Artisan Gateway):創業者兼CEO
スピーカー
■配給側
カート・リーダー(Kurt Rieder)
ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ(Warner Bros. Pictures):APAC劇場配給部門シニアバイスプレジデント
ブレット・ホッグ(Brett Hogg)
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(Sony Pictures Entertainment):国際配給部門エグゼクティブバイスプレジデント
■興行側
グエン・ティ・マイ・ホア(Nguyen Thi Mai Hoa)
ギャラクシー・スタジオ(Galaxy Studios):CEO
ハビエル・ソトマイヨール(Javier Sotomayor)
シネポリス(Cinépolis):アジア&中東地域管轄ディレクター
- ヒット作とそうでない作品の差が拡大
- 消費者の行動様式や映画選択方法が変化
- 映画館の競争相手は“エンタメ全般”
- テイラー・スウィフトのライブ映画が証明したこと
- 劇場鑑賞と家庭視聴の価格ギャップは縮小傾向に
ヒット作とそうでない作品の差が拡大
まずはモデレーターが、2022年から2023年にかけての映画興行における変化について質問すると、シネポリスのハビエル・ソトマイヨール氏は、「2023年は物事が落ち着いた年」と位置づけました。「パンデミックからの学びも活かされ、ローカル作品を中心に良いコンテンツも多かったです。問題は、ヒット作品とそうでない作品のパフォーマンスの差が大きくなってきたこと。ブロックバスター作品やアワードを受賞するような映画は、マーケティング・キャンペーンによって期待値を高めて劇場動員できますが、認知度やマーケティング力の強くない中小規模作品では、人はわざわざ出かけるべきか、少し待って家で観るかを吟味するようになっています。また、2024年はコンテンツ供給の少ない閑散期の落ち込みが激しいため、そこをどう乗り切るかも課題です」。
一方で、国によってはサプライズ的な成功もあると語るソトマイヨール氏。「特にインドでは、とてもいいコンテンツが生まれており、製作費やマーケティング・広告予算にかかわらず、いい結果をもたらすケースも出てきています。観客の目は肥えているので、いいコンテンツであればうまくいくのです」。
消費者の行動様式や映画選択方法が変化
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントのブレット・ホッグ氏は、「2022年は再生の年。パンデミックにより、業界全体が過去最悪の状況に陥り、人々が自由に映画館に行ける状態に飢えていた後だったのでうまくいった」と振り返りつつ、同年と2023年の違いが「消費者の行動様式や映画選択方法の変化」にあると分析しました。
「パンデミックの影響に加え、家でのコンテンツへのアクセスが圧倒的に便利になったことで、定額制動画配信(SVOD)の普及が5~10年ほど加速したと思われます。そのため、中小規模の映画では、観客に『同レベルのコンテンツを自宅の快適な環境で観られるけれど、あえてソファから立ちあがって劇場に行かなくては』と思わせる、本当に説得力のある動機付けが必要になってきたのです。そのため、私たちは、家で視聴するのとは全く異なる体験を演出するため、常に最先端を走り続けなければなりません」。
ギャラクシー・スタジオのグエン・ティ・マイ・ホア氏も先の二人に同調。「パンデミック後の消費者の行動様式はかなり変わりました。以前は映画館に飛び込んで、そこで気に入った映画を選べばよかったのですが、今は映画館に行く前に作品レビューを読んで判断するようになりました。今の映画興行における最高のマーケティングは、“公開初週末に映画を観た人々の口コミ”です」。
映画館の競争相手は“エンタメ全般”
消費者の選択肢という点で、モデレーターが、「外出が決まっている場合、映画館に行くのか、その他の娯楽場所に行くのか? いい映画がある場合、それを劇場で観るのか、家で観るのか? など、今の消費者には選択肢がたくさんあるなか、映画館の競合とは何なのか?」と問いました。
シネポリスのハビエル・ソトマイヨール氏は、……(以下、会員限定記事にて掲載)
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