第1章 “科学“と“技術”「1:データを解釈してストーリーを描け! 不可欠な定性分析」
公開日: 2018/08/24

消費者のメディア接触の傾向が変わるなか、マーケターが最適な結果を得られる戦略にはどのようなものがあるのでしょうか。ARやインタラクティブ端末の誕生により、オーディエンスや消費者にリーチできる新たなプラットフォームが登場しましたが、どのようにリーチすればよいのでしょうか。また、動画配信やSNSといったOTTの契約者数増加によってマーケターが手にするチャンスとは一体?
”MASSIVE The Entertainment Marketing Summit”で行われたパネル・ディスカッション“Marketing to the Multiplatform Fan”では、プラットフォーム間でファンを生み出す方法について、トップクラスのマーケターとマーケティング・パートナーが議論を交わしました。
* * *
シリーズ第1章ではマーケティングにおける「科学」と「技術」に焦点を絞った議論を展開します。まず第1回は、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズがデータを解釈してストーリーを描く重要性に言及。定量分析が重視されるデジタルマーケティングですが、改めて定性分析が不可欠であることを訴え、ひいてはそれがマルチプラットフォーム戦略につながることを説きました。「科学」と「技術」の組み合わせと転換点に注目です。
※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2018年3月)時点の情報です
モデレーター:
ゲイル・フギット(Gayle Fuguitt)
フォースクエア(Foursquare) 顧客インサイト/イノベーション担当部門長
パネリスト:
レベッカ・ドハーティ(Rebecca Daugherty)
ABC/ABC スタジオ(ABC and ABC Studios) 執行副社長兼マーケティング部門長
――米ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下の放送ネットワーク/テレビ番組制作会社
アシシュ・コーディア(Ashish Chordia)
アルフォンソ(Alphonso) CEO兼共同創業者
――TVデータ会社。TV広告プラットフォームを運営し、リアルタイムで消費者インサイトの分析、提供を行う(関連記事)。
JP・リチャーズ(JP Richards)
ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ(Warner Bros. Pictures) ワールドワイドマーケティング担当執行副社長兼チーフ・データ・ストラテジスト
――映画製作・配給会社。
アダム・ロックモア(Adam Rockmore)
ファンダンゴ(Fandango)上級副社長兼マーケティング/コミュニケーション部門長
――FandangoやRotten Tomatoes、FandangoNOW、Flixsterなどのサービスを展開
ゲイル・トロバーマン(Gayle Troberman)
アイハートメディア(iHeartMedia) 最高マーケティング責任者
――米大手ラジオ局運営会社。
ロナリー・ザラテ=バヤニ(Ronalee Zarate-Bayani)
ロサンゼルス・ラムズ(Los Angeles Rams) 最高マーケティング責任者
――米ロサンゼルスに本拠地を置くNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)チーム。

ビジネスのデータ面をクリエイティブ面に活かせるかが鍵
モデレーター
先程開催されたパネル・ディスカッション「Consumers In Control: Digital Media Trends 2018」で、主導権を握っているのは消費者だという話題に触れました。動画配信やSNS、ARやインタラクティブ端末の誕生により、消費者は複数のプラットフォーム上を行き来しています。プラットフォームを超えて彼/彼女らにリーチするにはどうしたら良いのでしょうか。
そこで本日は、マルチプラットフォーム・マーケティングの第一人者の方々にお集まりいただきました。長いこと議論の的になっている話題であるだけに、興味深いディスカッションになるでしょう。これからお話を伺うみなさんは、映画製作会社、ビッグデータ解析、テレビ局、ラジオ局で活躍されています。クリエイターであり、コンテンツ分析のプロであり、さらに科学者とも言える方々です。この豪華な顔ぶれに今後の展望を紐解いていただきたいと思います。
まずはワーナー・ブラザース・ピクチャーズのJPに口火を切っていただきましょう。あなたはチーフ・データ・ストラテジストを務めていらっしゃいます。肩書きに「データ」、つまり科学がついていますが、「アート」すなわち技術の方はありません。チーフ・データ・ストラテジストとして、「科学」と「技術」というものをどのように捉えていらっしゃいますか。
JP・リチャーズ(ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ)
私は科学者(サイエンティスト)ではなく、ストラテジストです。そのため、正直申し上げて、「科学」らしきものの看板を掲げることはできません。もちろんデータはビジネス上極めて重要であって、エンタテインメント業界も例外ではありません。しかし、データがいろいろな形で注目され大量に入手できるようになっている現在、それを解釈してストーリーへと落とし込むことが重要なのです。
定量分析によるデータが多用されていますが、ストーリーへの落とし込みには定性的な分析が不可欠です。指摘いただいた「科学」と「技術」は、我々のビジネスの鍵とも言える創造力を培うものではないでしょうか。TVや映画業界では、トレイラーやスポット広告、デジタルコンテンツが重要となります。なぜなら紹介しているのが映画であれ、なんであれ、扱っている商品をストーリーに落とし込んでいるからです。しかもそのストーリーはあらゆるプラットフォームを横断して利用できるのです。
従来型の調査結果でも、SNSに関するKPIでもいいのですが、ともかく我々の責務はデータを解釈してストーリーを描くことです。その際に非常に重要なのが定性データであり、それを踏まえた情報が戦略に影響を与え、キャンペーンの組み方を決定づけるのです。サウス・バイ・サウスウエストに絡めて戦略的に大規模なことを行うにしても、自社のクリエイティブ制作にしても、定性データを基にしてメッセージや長さが決まり、それを実施するという流れになります。いかにデータと顧客インサイトとを結びつけられるかが、より洗練されたストーリー作りの鍵となるのです。
キャンペーンをベストな形で行うには、これらをフル活用してコンテンツ制作や宣伝活動、タレント起用を行う必要があります。それには、包括的、戦略的方法で、ビジネスのデータ面をクリエイティブ面に活かせるかどうかにかかっているのです。
第1章 “科学“と“技術”
「2:『精緻さ VS 規模』、米大手ラジオ局が訴える両立の難しさ」
トップマーケターが語るマルチプラットフォーム戦略
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第1章 “科学“と“技術”
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1:データを解釈してストーリーを描け! 不可欠な定性分析
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第2章 “プラットフォーム”と“消費者”
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