第4回:AIによる企画や脚本分析とマーケティングの未来
公開日: 2023/09/15
米ハリウッドで4月に開催された「Variety Entertainment Marketing Summit」にて、パネルディスカッション「Truly Knowing Your Audience in Multiplatform Marketing」を実施。ユニバーサル、ワーナー、ディズニーといった大手スタジオで映画・テレビ作品の広告販売とオーディエンスデータの分析を担うリーダーと、広告出稿側でもあるシティ・ナショナル銀行およびサムスン・アドの担当者が登壇しました。
パネルではまず、動画配信やSNS、TV放送など、プラットフォームを横断して戦略的に広告を打つことが一般化しているものの、獲得した視聴率や回数、インプレッションといったオーディエンスデータを統合して計測・分析できていない状況を共有。本特集では上記を踏まえ、より正確で透明性のあるオーディエンスデータの測定方法について議論しあった模様をレポートします。
※本記事で触れられている内容は2023年4月時点の情報です
トッド・スパングラー(Todd Spangler)
バラエティ(Variety):デジタル・エディター
パネリスト
ブライアン・ムー(Bryan Mu)
ユニバーサルスタジオ・グループ(Universal Studio Group):リサーチ&インサイツ部門シニア・バイス・プレジデント
アンドレア・ザパタ(Andrea Zapata)
ワーナーブラザース・ディスカバリー(Warner Bros. Discovery):広告販売リサーチ・測定・インサイツ部門エグゼクティブ・バイス・プレジデント
ダナ・マックグロウ(Dana McGraw)
ディズニー・アドバタイジング(Disney Advertising):視聴者モデリング&データ・サイエンス部門シニア・バイス・プレジデント
リンダ・ダンコンブ(Linda Duncombe)
シティ・ナショナル銀行(City National Bank):チーフ・マーケティング・プロダクツ&デジタル・オフィサー兼エグゼクティブ・バイス・プレジデント
オーブリアナ・アルヴァレズ・ロペス(Aubriana Alvarez Lopez)
サムスン・アド(Samsung Ads):データ向けプロダクト・マーケティング部門ディレクター
より正確で透明性のあるオーディエンスデータの測定・分析方法について、米スタジオのデータ分析担当者と、広告出稿側でもあるシティ・ナショナル銀行とサムスン・アドの担当者が議論を交わしたパネルディスカッション。最終回となる第4回は、オーディエンスデータ測定分野におけるAIの存在、マルチプラットフォームに対応したオーディエンスデータ分析により、今後2~3年でマーケティングがどう進化するかについて、意見が交わされた様子をレポートします。
モデレーターから、オーディエンスデータ測定・分析におけるAIの存在について、「最先端AIによって完全な分析が行われ、それが皆さんのビジネスに真に役立つ日がくると思うか?」という質問が投げかけられ、ユニバーサル、ディズニー、サムスンの担当者が持論を繰り広げました。
AIがパイロット版や脚本の分析を行うことが可能に
ユニバーサルのムー氏は自社の調査状況を引き合いにだし、「コンテンツ分野はAIが最も成熟している分野であり、AIは5~10年以内に定性調査において大きな影響を与えることになるでしょう。私たちは今、業界全体として、誰が、何を、どのように、いつ観ているのか? ということについては、とてもよく理解できていると思います。一方、定性調査はその狭間にある、なぜ観たのか? という問いに答えてくれるものです。現在私たちは、定性調査に関して優れた手法を確立しています。それは、たくさんのフォーカス・グループを実施し、このことについてどう思うか? 感情を変化させたのは何か? この番組を選んだ理由は何か?といった的確な問いを投げかけることで成り立っています。そこには膨大な量の情報が正しい形で存在しているため、AIに学習させていけば、今後、定性調査の分野においてもインサイトを導きだせるようになると思います。具体的には、AIが、番組放送前のパイロット版やコンセプト、さらには脚本分析などにおいて、かなり大きな影響を与えるツールになっていくのではないでしょうか」と未来を見据えました。
ディズニー・アドバタイジングのマックグロウ氏は、「機械学習をAIの一つだととらえるなら、私たちはすでにセグメント・モデルの作成に利用しています。例えば、あるブランドを活性化したいにも関わらず、潜在顧客が少ない場合、ターゲットの拡張が必要なのですが、その際に機械学習を用いて類似セグメントを探しています。また、番組全体や作品の一部のシーンにおける感情分析においても、AIを使用する事例が増えていくと思います」と語りました。
サムスン・アドバタイジングのロペス氏は、AIによって効果的なキャンペーン提示が可能になる未来について語りました。「私がキャンペーンについて、広告主やパートナーに説明しようとするとき、どのような結果を導きたいのかを確認したうえで、“これを達成するなら、この観客にアピールすべき”、“この層にリーチしたいのなら、最終的な商品購入といったコンバージョン率が低くなるかもしれないが、この方法が効果的”というように、複数パターンの施策を提示します。こうしたキャンペーンの選択肢の提示や結果の予測においても、AIを活用できるようになるでしょう」。
業界全体がオープンになり、合理的な測定プロセスが誕生
最後に、「オーディエンスデータの測定・分析が可能となるマルチプラットフォームマーケティングは、今後2~3年でどのように進化するか?」との質問に対し、各社が現状の分析と今後の展望を述べました。
シティ・ナショナル銀行のダンコンブ氏は、……(以下、会員限定記事にて掲載)
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