パリス・ヒルトンが見据えるこれからのコンテンツ戦略「ブランドをポップカルチャーに昇華させるには?」
公開日: 2024/07/17
米ロサンゼルスで行われた「Variety Entertainment Marketing Summit 2024」(開催日:4月24日)にて、グローバルコンテンツメディア会社、11:11 MediaのCEOを務めるパリス・ヒルトン氏と、同社社長/最高執行責任者のブルース・ガーシュ氏が、ブランドをポップカルチャーに浸透させる術について語りました。
※本記事で触れられている内容は2024年4月時点の情報です。
アンドリュー・ウォーレンスタイン(Andrew Wallenstein)
Variety/Varietyインテリジェンス・プラットフォーム代表・チーフメディアアナリスト
スピーカー
パリス・ヒルトン(Paris Hilton)
11:11 Media:CEO
ブルース・ガーシュ(Bruce Gersh)
11:11 Media:社長・最高執行責任者
「世界での知名度は80%と、通常のセレブリティの3倍。セレブであると同時に、慈善家、そして40億ドル規模のコンテンツを動かす実業家」との紹介を受けて登壇した、グローバルコンテンツメディア会社11:11 Mediaの創始者/CEOであるパリス・ヒルトン氏。会場から大きな拍手が沸くなか、同社社長のブルース・ガーシュ氏とともに、パーソナル・ブランディングの極意、独自の先見性によるコンテンツ戦略について語りました。
- カルチャー&コマース&コンテンツ&コミュニティを核に
- 大手量販店ウォルマートと提携した理由
- 隠れオタク&勝負師として常に新しいことに挑戦
- 母ならではのアイデアで新テック体験を創出
- 若者たちに名声より大事なことがあると伝えたい
カルチャー&コマース&コンテンツ&コミュニティを核に
まずガーシュ氏が、11:11 Mediaを「カルチャー、コマース、コンテンツ、コミュニティを核としたメディア会社」と紹介。起業から3年半を迎え、2024年の第1四半期だけで、2,000万ドル以上のブランド・スポンサーシップを獲得したことを明かし、ヒルトン氏が、「会社の心臓部として、すべてのクリエイティブやプロダクション・プロセスに関わっている」ことを強調しました。
ヒルトン氏は、リアリティ・スターの先駆けとして若い頃からスポットライトを浴び、メディアにイメージ操作されてきた経験をもとに、「他の誰でもなく、自分で自分のストーリーを語ることの大切さを身をもって知っている」と語りました。「小さい頃から、パーソナルなブランドを築くことのパワーも理解していました。それは、祖父から学んだことでもありますが、同時に、“ヒルトン・ホテル一族のご令嬢”としてではなく、“パリス”として存在したかったのです」。
ブランド・ビジネスの極意については、「オーセンティシティ」と強調。「自分が本当に好きだと思ったものにしか、自分の冠をつけず、PRもしない。洋服も香水も靴もバッグも眼鏡も、すべて自分で使いたいものを作り、実際にすべて自分で使っています」と話しました。
左から、ブルース・ガーシュ氏、パリス・ヒルトン氏、アンドリュー・ウォーレンスタイン氏大手量販店ウォルマートと提携した理由
ヒルトン氏のブランドを掲げた代表商品として、全世界で20年以上展開されている香水は、膨大な売上に貢献。2023年10月には、米大手量販店ウォルマートと提携し、リーズナブルな価格のキッチン用具コレクション“Be an Icon by Paris Hilton”を発売しました。2003年に話題となった自身とニコール・リッチーのリアリティ番組「シンプル・ライフ」のあるエピソードでは、「ウォルマートって何? ウォール(壁)を売っているところ?」とお騒がせ発言をしたことが有名ですが、今回、その量販店とのコラボレーションを選んだ理由について、「私の人生の一部を皆に共有してもらえるよう、お手頃価格で提供したかった。コレクション名には、“誰だって象徴(icon)になれる”というメッセージを込めました」と思い入れを明かしました。
隠れオタク&勝負師として常に新しいことに挑戦
「テレビからオーディオ、デジタルからコマース、ソーシャルからメタバースまで、幅広いジャンルで事業展開している」と語るヒルトン氏。モデレーターが、来たるトレンドをどのように見極めるのかと問うと、「私は2060年代からやってきたので、未来が読めるんです」といわゆる“パリス・キャラ”のリップサービスで会場を沸かせつつ、真顔でこう語りました。「昔から“隠れオタク”で、テクノロジーや新しいものを見つけることに夢中でした。常に新しいアイデアを考え、常にリサーチし、さまざまなプラットフォームでたくさんの実験をする勝負師でもある。それが私の強みだと思っています」。
特にテクノロジーへの興味に言及。「(2021年には)人々がバーチャルに社交できる”Paris World”という空間をRoblox(制作・交流型のバーチャル空間プラットフォーム)内に開発。また『スリビングランド』というバーチャルワールドも作り、何百万人もの人が訪れました。仮想通貨投資も早くに利用していました」。現在もテクノロジーへの投資を惜しまず、AIや音声技術、ホログラムなどのテック会社にも多数出資していると語りました。
母ならではのアイデアで新テック体験を創出
二児の母となったからこそ生み出せる体験もあると言うヒルトン氏。「以前は頻繁に旅行をしていましたが、今は、生後5カ月と18カ月の子どもがいるため、もう、以前のように飛行機には乗りたくありません。だからこそ、デジタル空間内で世界中を旅行したり、コンサートを開催したりできる技術を持った会社に投資したいのです。私は赤ちゃんと家にいながら、皆は私のホログラムで楽しんでくれる、そんな体験も生み出してみたいです」。
若者たちに名声より大事なことがあると伝えたい
コンテンツ分野では、自身と同じように公の場で物議を醸す人生を歩んできた女性たちの本”Toxic”のオプション権を獲得し、ドキュメンタリーシリーズ化に着手。「特定の女性をターゲットにした悪質な誹謗中傷や、自分の声を奪われ、知らない人に物語を作り上げられるケースを多く見てきました。この企画は、メディアの捏造ではなく、自分の言葉で自分のストーリーを語る女性たちの企画なのです」。
人気アーティストのシーアとコラボレーションしたシングル曲のタイトル『Fame Won’t Love You (feat. Paris Hilton)※直訳:名声はあなたを愛してくれない』について、「今は、多くの若者たちが、ソーシャルメディアでフォロワーを増やし、名声を築くことにエネルギーと自尊心を注いでいるように感じます。世界には、名声よりもっとたくさんの大事なことがあるのだと伝えたいのです」と語りました。
- 第1回:「従来型の宣伝は恐竜時代のものに感じる」Amazon MGMスタジオのマーケターが語る極意
- 第2回:パリス・ヒルトンが見据えるこれからのコンテンツ戦略「ブランドをポップカルチャーに昇華させるには?」
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