「アニメは未来を描く」、スタジオ地図の齋藤優一郎氏登壇「“アニメーション”とは何か?」~新潟国際アニメーション映画祭イベントレポート
公開日: 2024/03/22
新潟国際アニメーション映画祭にて3月20日、トークイベント「“アニメーション”とは何か?」が開催されました。同イベントには本映画祭長編コンペティション部門の審査員を務めるプロデューサーの齋藤優一郎氏が登壇。本映画祭のプログラム・ディレクターであり、ジャーナリストの数土直志氏をモデレーターに迎え、アニメーション製作におけるプロデューサーの役割や表現に対するこだわり、グローバル化への持論など、同氏の経験を通じて得た知見が共有されました。今回、イベントの一部をレポートします。
左から数土直志氏、齋藤優一郎氏
プロデューサーの役割はエコシステムの構築
イベントではまず齋藤優一郎氏のプロフィールを振り返りました。同氏は海外留学経験後、アニメーション制作会社『MADHOUSE』に入社し、同社取締役社長(当時)でプロデューサーの丸山正雄氏に師事。その後、2006年に劇場公開された細田守監督の『時をかける少女』のプロデューサーを務めましたが、齋藤氏はその裏話を明かすとともに、プロデューサーの役割を語りました。
「実は、(新潟国際アニメーション)映画祭のフェスティバル・ディレクターをされている井上伸一郎さんが僕のことをプロデューサーとして指名してくださったんです。井上さんは昔ご一緒させていただいたテレビシリーズで僕の働きぶりをみて、予算管理、つまり限られた予算のなかで分配しながら、作家に寄り添いクオリティの高い作品を作れる人は齋藤くんしかいないと言ってくださったそうです」。
齋藤氏は続けて、「やっぱり、一番良い形で作品を作って、一番良い形でその作品を世界に届けて、願わくはその作品を見続けてもらいたい。そして、可能であれば、内容的な評価と経済的な評価をきちんと勝ち得て、それを作った人達に還元し、また新しい作品、新しいチャレンジに繋げていく。そういった循環というかエコシステムを作ることが、僕はプロデューサーの役割だと思っています」と説きました。
アニメーション表現は子どもたちの未来を肯定するために
齋藤氏は2011年に細田守監督とともにアニメーション製作会社「スタジオ地図」を設立。以降、細田監督作品のプロデュースに専念し、オリジナル長編アニメーション映画のみを手掛けてきました。なぜオリジナルにこだわるのか。その理由について、同社が掲げる理念とともに明かしました。
「映画は、今と少し先の未来を描くものだと僕らは思っています。そしてそれをアニメーションという表現で作りたいと思っている。また、僕ら特有かもしれませんけども、アニメーションは、子どもが見ることが前提であり、彼らの未来を肯定するために使うべき表現なんじゃないか、という風に定義付けています。そういう中で作品を作ろうとした時にマッチする原作があればいいんですけど、必ずしもそういったものが、常にあるわけではありません。そうであれば自分たちで物語を作るというところから始めていこうと」。
グローバルをマーケットとして捉え直す
続いて、昨今アニメ業界に関わらず叫ばれている“グローバル化”という言葉について、アニメーションのプロデューサーとしての視点で持論を展開。
「グローバルとか、世界って言葉って、みんな好きじゃないですか。でも、気持ちはなんとなく共有できるんだけども、具体的になにかやろうとすると、ズレてしまう。その世界って言葉をマーケットと言い直すと、もう少しこう整理されるんじゃないかって気がしています。マーケットはもしかしたらジャンルかもしれないし、チャレンジの範囲かもしれない。それぞれの世界の定義が違うなか、僕は特にプロデューサー的な視点なので、マーケットって言った方が非常に分かりやすい。どういったマーケットにどういう作品とか、どういうマーケットの人に協力してもらったら、そのマーケットの中で大きくなれるかとか。そういう風に考えると世界というものは、見えやすくなるような気がします」。
未来のアニメーション・アーティストへの願い
本映画祭ではアニメーション制作を学ぶ若い監督、スタッフ、学生たちを対象に次世代育成プログラムを実施しており、会場にも参加者が来場していました。彼らの一人から未来のアーティストへのアドバイスを求められた齋藤氏は、「作品を見せてほしいし、皆さんと一緒に作品を作ったり、もしくは自分たちを使ってもらえたりする新しい仕組みも実は作りたいと思っています。一緒に作る為には、ある種の技術力も必要だったりもします。でも、技術よりも、何を描きたいのか、ということをとことん突き詰めてほしい」と返答。
続けて、「あなたがこれから作品を通して何を描きたいと思っているのか。今の社会をアニメーションで描きながら、未来っていうものをどうしていきたいのか。それを考えることで、もしかしたら戦争とか、世界の大きな問題とかを良い方向に変えていくきっかけになると僕らは信じてるし、そういうことを信じてやっていくのがアニメーション映画の1つの役割なんじゃないかと思うんですね。なので、自分が何を描きたいのか考え抜いて、それを成し得るための技術チームを作って、いつか一緒に仕事をしましょう。一緒にこれからの未来のことをアニメーションの表現を通して考えていきましょう。作っていきましょう」と未来のアーティストを鼓舞し、トークイベントを終えました。
(取材・構成:河西隆之)
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